日本には資格制度がないのに、なぜ開業できるのか?



皆さんの中には、日本ではカイロプラクティックや整体、オステオパシー、リラクゼーションなどには国家(公的)資格が無いのに、どうして開業したり、施術が出来るのか?と疑問に思われる方も多いと思います。

日本の医療類似行為には、法的な資格制度のあるものとそうでないものがあります。前者には「あん摩・指圧・マッサージ」、「針灸」、「柔道整復(整骨院)」があり、業務を行うには、それぞれに国家資格が必要です。

後者には整体、リラクゼーション、カイロプラクティック(日本の場合)、オステオパシー(日本の場合)などがあり、国家(公的)資格というものはありません。

では、どうして国家資格が存在しないのに開業が出来るのかというと、1960年(昭和35年)の「療術行為に係わる最高裁判所の判決」があるためです。

最高裁は憲法22条の職業選択の自由を優先させ、「有害のおそれがなければ、禁忌処罰の対象にならない」とし、人体に有害なおそれのないものでなければ、それを業として行っても罰せられないという法律上の判断を下しました。

この判決によって(良くも悪くも)日本では整体、カイロプラクティック、リラクゼーション、エステ、○○療法など、実に様々な民間療法が行われているという訳なのです。(但し、あくまでも有害でなければの話ですが・・・)

また日本では、整骨院、マッサージ院などの医療類似行為系の国家資格者が、資格や本来の業務とは関係がない整体やカイロプラクティックを称した施術を取り入れているケースも見受けられますが、その理由も上記の最高裁判決があるためです。

現在のところ、日本では過去の最高裁判決により厚生労働省からも容認されている状況ですが、これら医療類似行為による健康危害が増加している現実を見ると、近い将来、過去の判決が覆される可能性も十分に考えられます。(実際には有害の恐れがある訳ですから)

一方、欧米先進国の多くで、カイロプラクティックは医療専門職として法制化されており、それぞれの国で業として行うには、大学での専門課程(4.200時間以上)を履修し、カイロプラクティック学位を取得した上で、国や州の開業免許の取得、または一定期間の研修を経て行政機関への登録が必要です。

尚、カイロプラクティックに関する、過去の日本政府の主な見解は以下の通りです。

「カイロプラクティック療法は、脊椎を調整する点において、あん摩マッサージ指圧とは異なるものと解する」(昭和45年、宮城県知事からの質問に対する厚生省医局長の回答)

「カイロプラクティック療法は、脊椎を調整することにより、神経の回復を図ることを目的とする療法とされており、この点において、あん摩マッサージ指圧と区別されるものと考える」 (平成4年、国会での内閣総理大臣、宮澤喜一氏の答弁)

また、2010年の衆議院行政監視委員会では、厚生労働大臣政務官より(日本では今後の研究が必要との姿勢をとりながらも)「アメリカなどではカイロプラクティックの有効性が認められ、WHOもそれに基づいて教育のガイドラインを出したことは承知している」と、日本の国会で初めてカイロの有効性についての言及がありました。

2014年からは日本カイロプラクティック登録機構(JCR)によるWHO基準カイロプラクターの登録制度が始まり、登録者名簿が厚生労働省医政局医事課に提出、受理されています。外部リンク

 

参考資料:治療(南山堂)より

 

医学専門誌「治療」(南山堂)2010年2月号に「無資格の施術(整体、カイロプラクティックなど)レビュー」が掲載されました。

執筆を担当した医師(医学博士)は、「現在の日本において、脊椎徒手療法(背骨や骨盤などの矯正=スラスト)を行なう施術者が、治療上の安全の確保と危険性の回避に関して信頼できるか否かの判断基準は、WHO基準の教育を修めているか否かに尽きる」と指摘しています。

 

参考資料:サンデー毎日(毎日新聞社)2012.12.14号より


国民生活センターの被害相談825件のうち、112件が「整骨院での施術」によるものだった。「日本臨床整形外科学会」の09~11年の会員調査でも被害を訴えた来院者の多くが整骨院で施術を受けていたとされる・・。


整骨院とは国家資格を持つ柔道整復師(柔整師)しか開業できず、骨折、脱臼、捻挫、打撲などの施術(治療)を専門に行う。


整骨院などでの事故に詳しい整形外科医は「柔整師は免許を取ればすぐに開業できるので、未熟なまま開業してしまうケースが増えています。乱立状態になり、生き残りのため(専門外である)整体、カイロプラクティックなどを取り入れて無理な施術をしてしまうおそれがある」と分析する・・。


柔整師約5万人のうち2万人近くが会員の「日本柔道整復師会」の副会長に聞いた・・「会員には整骨院で整体やカイロを行わないよう指導し、多くは厳しい倫理網領も守っている。そうした院には会の認定証を与えています。

ただ、指導を厳しくするほど会を抜ける柔整師が増え、金儲けに走る者も中にはいる。指導や調査が非会員まで及ばない現実もあり、悩ましい」 ー 。

 



補:WHOガイドラインの要旨

補:WHO基準(国際基準)とは