多くの痛みの原因とは



痛みとは何か?

痛みは辛いものですから、なるべくなら消し去りたいものです。

しかし、痛みを感じなければ、怪我をしていても気づかずに放置してしまい、命に関わる深刻な状態を招くかもしれません。ですから、痛みは危害や異常を知らせ、迫り来る危険から逃げるために必要不可欠な警告信号(アラーム)であると言えます。

 

そもそも、痛みとは、人間に備わった重要な防衛本能(セキュリティ・システム)なのです。


痛みはどの様にして起こるのか?

痛みは「神経因性疼痛」と「侵害受容器性疼痛」の2つに分けられます。

神経因性疼痛というのは、神経自体が傷つくことで発生する痛み(帯状疱疹後の疼痛、糖尿病による疼痛など)です。

一方、皆さんが日常的に感じる、首や肩、腰、関節などの筋肉骨格系の痛みの多くは、侵害受容器性疼痛です。

ここでは、侵害受容器性疼痛について扱って行きます。

痛みは、先ず皮膚や関節などの神経の終末にある侵害受容器(痛みセンサー)が、機械的な刺激や化学的な刺激をキャッチし、それらを電気的な刺激に変換し、神経伝達物質を介して脳に情報を伝えます。そして、脳は情報を分析し、どこが痛いのか?どの様な痛みなのか?を認識します。これが簡単な痛みのメカニズムです。

指にトゲが刺さったり、何かにぶつけたり、足首を捻ったり、首を寝違えたり、熱湯に手を入れたり(45℃以上だと痛みとして感じます)..などで感じる痛みというのは、こうした仕組みによって起こります。

ここで1つ重要な点は、痛みとして認識しているのは、手足や腰や肩や首の組織では無く、あくまでも脳であるということです。


神経の働きのアンバランスは痛みを起こす。

筋肉の張力は神経によりコントロールされています。そのため、神経のアンバランスな状態は筋肉の緊張を変化させます。筋肉の張力が低下すると、関節に大きな負担が掛かり、関節痛や関節炎が起こります(機械的刺激による痛み)。

また、低下した筋肉の反対側の筋肉(拮抗筋)の過緊張を招くため、末梢神経を締め付けたり、血流障害による酸素不足から炎症物質(ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニンなど)が発生するなどし、痛みが発生します(化学的刺激による痛み)。

内蔵や内分泌などをコントロールしている自律神経には、交感神経(活動系)と副交感神経(リラックス系)があり、状況に応じて、どちらかの神経が優位となることにより、健康状態を維持しています。

しかし、疲労の蓄積や心的なストレスなどで常に交感神経が優位になると、自律神経はアンバランスとなり、血流障害による痛みが起こり易くます。また常に副交感神経が優位になると、分泌排泄機能が活発化し過ぎることで、神経過敏性、カタル性の痛みなどが起こり易くなります。


神経のアンバランス状態を来す要因

神経の働きのアンバランス状態を来す要因として、機械的なストレス、化学的なストレス、心理的なストレスの3つの要因が挙げられます。特に慢性的な痛みの場合では、これらの要因が絡み合うことで難治化しているものと考えられます。


①機械的なストレス:同一姿勢、反復作業、過剰な運動、外傷など

②化学的なストレス:栄養不足、栄養過多、アレルギー、有害物質

③心理的なストレス:感情の滞り、自己暗示、トラウマなど

 

また、これらの要因は、近年の慢性的な痛みの原因として注目されている「生物心理社会的な要因」とも合致するものです。

神経のバランスが正常な状態では、痛みを伝える細い神経線維の働きは、脳に届くまでの間(脊髄と脳直下)で、太い神経線維の働きによってブロックされるのですが、上記の要因は神経のアンバランスを生み、太い神経線維の働きを抑えてしまうために、細い神経線維からの痛みの情報がダイレクトに脳に伝わることで(通常では感じないものでさえも)脳は痛みとして認識してしまいます。

さらに、太い神経線維の働きが低下すると、大脳の働きが低下して、交感神経が優位となるために、血流障害による低酸素状態を招き、痛みを誘発します。

また、そうした状態が続くと、脳の痛み中枢が過敏となり、画像診断などの検査では、組織に何も異常がないのに、慢性的に痛みを感じる様になることがあります。(中枢感作)

当院のカイロプラクティック(神経学的アプローチ)では、関節や周囲組織にある神経の感覚センサー(固有受容器)を利用して、適切な情報を中枢である脳・脊髄に入力することで、神経系の働きが正常化するように促しています。

尚、ここでは痛みについて扱っていますが、神経系(脳代謝)のアンバランス状態は、凝りやシビレなどの不快な症状はもちろん、内臓機能の低下や免疫機能の低下、また肉体的パフォーマンスの低下などを引き起こす原因にもなります。

詳しくは、カイロプラクティックの原理&最新理論をご覧下さい。