背骨の曲がりや歪みは結果に過ぎません。



 

姿勢を制御しているのは神経系です。

カイロプラクティックの施術で、背骨や骨盤などの曲がりや歪みなど、姿勢が改善することはよくあります。但し、こうした曲がりや歪みの殆どは、痛みなどを起こす原因ではありません。

姿勢のゆがみの多くは、神経(脳)がコントロールしている筋肉の緊張状態のアンバランスによって発生しています。つまり、原因というよりも結果なのです。

近年の脳科学の知見から、カイロプラクティックで姿勢のゆがみが改善するのは、 関節に発生した関節機能障害(動きの異常)を修正することで、脳(神経系)の働きが正常化され、脳によるコントロールを受けている筋肉の緊張バランスが整うことによる結果だと言えます。

仮に、「背骨」をキャンプ用の三角型テントの支柱に、そして「筋肉」をテントの支柱を安定させるために地面に張るロープとして考えて見ましょう。

 

ロープ(筋肉)の張りが均等で無ければ、支柱(背骨)は不安定となり、テントにたわみが出たり傾いてしまいます。これが身体がゆがんでいる状態です。 そして、ロープ(筋肉)の張り具合が均等になる様に調節(コントロール)をしているのが、脳を司令塔とする神経系のネットワーク・システムです。


参考:身体のゆがみの発生過程の例

 

神経系の働きの乱れやアンバランス


前後・左右の筋肉の緊張にアンバランスが発生

背骨や骨盤のゆがみ、姿勢のゆがみが発生する

 

つまり、ゆがみやズレが直った→痛みなどの症状が改善したのではなく、神経の働きが正常化した→痛みなどの症状が改善したり、見た目のゆがみが改善するのです。

 

ゆがみ、ずれ ≠関節機能障害(動きの異常)

もちろん、カイロプラクティックでは姿勢や身体のゆがみを重視しています。何故なら、それらは神経の状態を探る手掛、指標となるからです。

先にも述べた様に、身体のゆがみの原因というのは、筋肉の緊張状態のアンバランスによる結果であることが多い訳ですから、神経(脳)のコントロールを受けている筋肉の状態から、神経の状態や異常な箇所を把握したり、施術による効果(前後での変化)を知ることが出来るわけです。

但し、身体にゆがみがあることと、関節機能障害(動きの異常)があることはイコールではありません。(重要なポイントです!)

 


見た目には身体がゆがんでいたり曲がっていても、背骨や骨盤の関節ならびに関節周囲組織の固有受容器(感覚センサー)の機能に異常が無く、神経系の働きが正常であれば、健康的には問題ありません。

しかし、見た目にはゆがみが無くても、関節内部の動きが悪く、関節などの固有受容器が作動不良となり、神経系の働きに異常が発生していれば、痛みをはじめ、健康上の問題を引き起こす原因になります。

皆さんの周りには、背骨が曲がっていても健康に過 ごされている高齢者は大勢いますし、見た目にはゆがみの無い人(レントゲン写真では異常の見られない人)でも、関節機能障害が原因となり、腰痛などの症状を訴えている人が、臨床の現場では大勢います。

また身体のゆがみには、生まれつきの骨の形状や筋肉の長さの違い、過去の骨折などが原因となっているものもあります。

しかし、これらに起因した「身体のゆがみや曲り」というのは、脳による適応反応(補正作用)によるものが殆ど(例:骨粗鬆症の圧迫骨折の治癒後に背中が円くなる)ですから、その人にとって全体としてバランスがとれ、神経系のはたらきに異常がなければ、健康を損なう要因にはなりません。

この様な場合、脳はあえて身体をゆがませる事で、その人にとって最も快適に活動ができる状態を作っているのだとも言えるでしょう。

ですから、見た目に身体のゆがみや曲りがあるか無いかということだけで、健康か否かの安易な判定・判断はすべきではありません。

また、そうした事が考慮されずに行われている容姿・美容目的などでの無理やりな骨格矯正というのは、脳の適応反応(補正作用)を崩壊させたり、新たに関節機能障害を発生させるなどし、その人の全体的な健康バランスを崩してしまう危険性さえあります。

健康の回復や維持にとって重要なのは機能性(動き方、働き方)です。

神経系のはたらきが健全であれば、背骨や骨盤などのゆがみなども、その人(個人)の健康にとって、最もバランスのとれた場所に落ち着くものなのです。