カイロプラクティックと哲学



ユニバーサル・インテリジェンス(宇宙の叡智)

カイロプラクティック(整体ではありません)には哲学があります(米国の大学院にはカイロ哲学の博士課程もあります)。

カイロプラクティック哲学では、宇宙には全てのものを創造した知性(ユニバーサル・インテリジェンス)があるという大前提があります。

カイロプラクティックが扱う「ユニバーサル・インテリジェンス」には、宗教の神仏のような「人格」というものはありません。善と悪の区別も、慈悲と無慈悲の行いもありません。

ユニバーサル・インテリジェンスには秩序立った、不変的な宇宙(自然)の法則があるのみです。

その姿形を見ることはできませんが、私たち人間もユニバーサル・インテリジェンスによって(今こうして)存在している...という訳なのです。


イネイト・インテリジェンス(内なる叡智)

そしてカイロプラクティック哲学では、このユニバーサル・インテリジェンスの一部分であり、私達の内側に存在している先天的な知性のことを「イネイト・インテリジェンス」(以下イネイト)と呼んでいます。

イネイトはユニバーサル・インテリジェンスが創った物質を寄せ集め、ある知性を使ってそれらの物質を組み合わせ、生命という現象を起こし、それを維持し、そして終わらせたりもしています。

イネイトは(人間が生きている間は)生命活動を維持するために、主に脳を司令塔にした神経系を使い、24時間休み無く、常に身体を監視し、制御し、統合しています。

そして(人間の体のことを誰よりもよく知っている)イネイトが、常に100パーセントの状態で働くことが出来れば、人間(生命)は100パーセントの能力(自己治癒力や身体的パフォーマンスなどの能力)を発揮することが可能になります。

一方、もしもイネイトが100パーセントの状態で働くことが出来なければ、その人間(生命)は、本来備わっている能力を100パーセントの状態で発揮することは不可能です。仮にイネイトの働きが20パーセント低下しているとすれば、80パーセントまでが、その人間が発揮することの出来る最大能力、限界点になります。

では、イネイトが100パーセントの状態で働くことが出来ない状態があるとしたら、それにはどのようなケースが考えられるでしょうか ?

1つは、イネイトの力を超える様な物理的な力や化学物質、放射線などによって神経細胞(または正しい遺伝子情報)そのものが破壊されてしまう様なケース。 そしてもう1つは、神経のスムーズな流れ(はたらき)が何かによって妨害されてしまっている様なケースです。


イネイトの持つパワーを最大限に引き出すには

解剖学的に見て、イネイトの働きを妨げる可能性のある、神経の流れ(はたらき)の滞りが最も起こり易い部位としては、脊髄が収まり、末梢神経の多くが出入りをしている脊柱(背骨および骨盤)とその周辺が挙げられます。

それ故、カイロプラクティックでは神経の流れ(はたらき)が妨害されている状態を取り除くことにより、イネイトの働きを最大限に引き出す(100パーセントの状態に近づける)様に促している...という訳なのです。(これが古典的なカイロプラクティックの唱える「自然治癒力を高める」ということ)

近年、遺伝子分野での研究が進み、私達の未来に大きな希望を与えてくれています。しかし、人間(生命)というのは機械式時計の様に、分解しても組み立て直せば再び動き出すという訳には行きません。実験室で人間の細胞を構成している物質を寄せ集めても、生きた細胞(生命)そのものは創れません。

また量子物理学の分野では「物質(素粒子)の究極は物質にあらず」ということが分かって来ています。いったい何が生命を創り出すのか?おそらく私達人間には永遠の謎でしょう。

しかし、たとえそれが永遠の謎だとしても、私達は「ユニバーサル・インテリジェンス」や「イネイト・インテリジェンス」の存在を感じたり、その叡智を活用することが出来ます。

PS:今日では少数派ですが、カイロプラクターの中には、こうした古典的、哲学的な要素(生気論とも言います)を主張する原理主義的な人たち(ストレート)もいます。

今日の大多数のカイロプラクターは、医学(科学)をベースとした見方(診方)をする「ミクスチャー」と呼ばれ、アジャスト(調整)を主体に様々な科学的手法を組み合わせたアプローチを行っています。

筆者も「ミクスチャー」として大学専門教育を受けていますので、医学・科学的なアプローチを行っていますが、カイロプラクティックの効果を最大限に発揮する上で、 時には哲学的な観点からの捉え方も重要だろうと考えています。