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2020.10.24. | |
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まいどこんにちは。昨日まで3日間の休暇でした。毎年ぶどうシーズンが終わると泊まりでふらりとどこかへ出かけることが恒例となっています。今年の行き先は戸隠。目的はずばり3つ。北信5岳のうち2つに登ること、そして宿坊で寝泊まりすること、そしてその宿坊で心静かに「島崎藤村短編集第2巻」を読むこと。 |
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(左) 高速を使って長野まで1時間。さらに1時間で戸隠。駐車場にクルマを停めて徒歩20分で戸隠神社奥社入口の随神門。 (中) 樹齢400年を超えるという杉の並木。パワースポットとして有名なところです。 (右) 戸隠神社奥社。古事記の昔、天照大神が隠れた天岩戸をよっこらしょ..!!とこじ開けた大力の天手力雄命(アメノタヂカラオノミコト)というカミサマを祭っているところだそうです。そしてその投げ飛ばした岩戸が高千穂からはるかここまで飛んできて現在の戸隠山となっているとのことです。うーむ神話の世界はハチャメチャで楽しいですね。 で、ここまでは幾度か来たことがあります。真冬に来たこともあったっけ....。そのたびに思ったことが2つ。あのギザギザの山稜の戸隠山に登りたい!。由緒ある宿坊と呼ばれる宿に泊まりたい!。ということで登ってきました戸隠山。 |
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(左) 奥社から先は岩場クサリ場の連続。高度感はなかなかのもの。 (中) この日の同じ時間帯の登山者は若者~オジサンのワタクシ含めてそれぞれ単独行のオトコ5名と女子会登山部の若女子が3名。その8名が抜きつ抜かれつでヨロヨロと登攀。歩いてでなく四つん這いでないと前進できない最大の難所と言われる蟻の塔渡り、剣の刃渡りでは順番待ちができました。無事通過したところでは「お疲れ様でしたぁ」「落ちずに済みましたぁ」「写真撮ってくれますかぁ!」とみなヤレヤレ..。うひゃあ怖かった..もうここには来たくない..。一度でいい....。 (右) 奥社から2時間ほどで戸隠山頂に到着。ヤレヤレ..。真北には高妻山。秀麗な姿形にほれぼれ。「高妻」といえばピオーネではないか...。登攀意欲を掻き立てられます。いつ行くべか......。 |
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(左) 北東には黒姫山。元関脇の力士の名前なのでなんとなくずっと気になっていました。実はこの翌日に登る予定にしていたのですが、雨で今回は断念.....。 (中) 山を下りてなだらかな戸隠牧場。ここまで来れば気分はもう宿坊.....。 (右) 今回のオトコの隠れ家に選んだのは戸隠宝光社門前にある、230年の由緒があるという老舗宿坊のひとつ武井旅館。 |
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戸隠の宿坊群は、もともと神仏習合の修験道の聖地にあって、江戸時代になると参詣者のための宿泊施設(=宿坊)が整備されるようになってそれが地域全体として往時の状態をそれなりにとどめてあるということで、文化財保護法による“伝統的建造物群保存地区”なるものに指定されているところだそうです。茅葺きの屋根がえもいわれぬ郷愁を誘ってこういう古き良きものワタクシ大好きです。こうした建物群が法の保護によって後世に遺されていくことはとっても良いことだと思います。ただ、実際にそこに住んでる人にとっては良いことよりも大変なこと厄介なことの方が多いようで、そのへんのことをオカミさんがいろいろ話してくれました。①茅葺き屋根には金がかかる。②職人がいないし材料も少ないので建て替えも順番待ち。③そのくせ案外と長もちしない。せいぜい40年だそうです。④法律によって火が使えないことになっている。 ⑤建物の基礎とか柱とか床がいよいよポンコツになってくると修理に恐ろしく手間と時間とお金がかかる。⑥建物だけでなく庭も同様。⑦家を継ぐ人がいなければもう荒れるにまかすしか他ない。⑧祀ってある不動明王像、幼い頃は怖くてたまらなかったけれど今では抱いて寝れます。その他諸々....。茅葺きの葺き替えは1軒あたり1,600万円~もするそうです。ただその9割は補助金が出るとのこと。そのかわり法律に縛られることになって、その一例が火を使ってはならぬということ。つまり囲炉裏なんかは使えないということです。昔は囲炉裏からの煙で茅がいぶされてそれが屋根の長もちのヒミツだったそうですが火が使えない今はかえって屋根の寿命が短くなっているんだそうです。ふーん....。建物の基礎にしても、柱が石の上に乗っているだけの簡素な造りなので、通風性は良いものの、長い年月の間には基礎の石が微妙に沈んでしまいそのため大黒柱がくの字に曲がってしまってその修理が大変だったとオカミが言ってました。それから門の横の松の手入れを専門の樹木医に依頼したら6万円もかかったと笑ってました。なるほど建物や門、庭のあちこちの細部をよく観察すると、補修や修理の跡がいっぱい....。維持することだけですごく大変だってことがなんとなくわかりました。でもワタクシはそうした大変さとはとりあえず無縁の無責任なただの旅人。勝手に木造家屋の温もりを味わってきました。廊下のミシミシ感がまたよかった。廊下の向こうの丸窓がたまらない。そもそもこのほの暗さがなんともいい雰囲気。しかしこんなガラス窓では冬の寒さをどうする?、こんな広い屋敷に掃除機かけるの何時間かかる??、オカミひとりでできる??、門から玄関の間の敷石雨や雪で転んだりしない??、近所に1件だけあるという食料品店がなくなったら近所の人どうする??、宅急便の時間指定この地域では絶対ムリやろな、コンビニあるところに住んでた人がここに住むのは無理やろな、こういうところに進んでお嫁にくる人なんておるか??、 なるほど道理で部屋に活けてある生け花が萎れているのはそういうわけか、などといろんな妄想で遊んでいるワタクシひとりのみがこの2日間の宿泊者でありました。 |
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2日目は雨。黒姫山は断念。所要時間がより短くてすむ飯綱山も断念。なので朝と昼にちょっと外を散歩しただけであとはずっと部屋に籠って本読んでました。正座したり足を崩したり時には寝転んで。実はこれがしたかったとも言える。ピポパと101を押して熱いお湯の入ったポットをオカミに持ってきてもらいました。秘密兵器として来るときにコンビニで買ってきたポテチが自分的に大正解。炬燵おつくりしておけばよかったですねとオカミが言ってくれましたが別に寒くないし構いませんよ、というような会話がまた楽しい。たまに開ける窓からの庭の眺め。雨の庭もなかなか味わいがあります。お風呂も24時間入り放題。7回も入ったぞ。でもいつ掃除してんだろ??。 2泊した甲斐もあって、ご馳走に大満足。今思い出しただけでもすごい。イワナの刺し身に塩焼き、ヤマメの粕漬け、鯉の煮つけ、信州サーモン、リンゴで育てた牛肉、鳥そぼろ、ホンモノの手打ち蕎麦、蕎麦粥、蕎麦茶碗蒸し、キノコ汁、キノコご飯、イチジクの漬物、種ありピーマンの漬物、いろんな地物野菜の煮物とかいろいろ..。自家製梅酒も。ワタクシ信州サーモンの実力を今まで侮っていたようです。今まで食べたのはなんか味が抜けているというかボケているというかボケたリンゴと同じというかそんなイメージでしたが、ん....!、なんだこのプリプリの食感は..!、色が鮮やかだし肉も締まっているし味も濃い。お醤油不要。そのままいける。蕎麦も然り。以前戸隠に来た時に中国産そば粉を原料にした戸隠産そばを購入してしまった苦い記憶があるので少々警戒していましたがそれは杞憂に終わりました。今、戸隠ではそばの生産は増えているそうです。担い手のいなくなった田畑を戸隠の2つのそば会社がどんどん借り受けてそばをどんどん作っているそうです。むしろ最後には余ってしまうくらいだそうです。それとそばは8月の夏そばと10月の秋そばの年2作があると初めて知りました。ヤマメの粕漬けも独特の風味。長野市のプロの魚屋さんがいろいろホンモノ料理に挑戦していてなにかと提案してくるので私はただ焼くだけってオカミは笑ってました。鯉もまったり濃厚。泥臭くなかったし。骨まで無くなりました。鯉を本気で骨まで食べたのは人生史上初めでした。燗にしてもらった酒はナントカ(忘れた。)という地酒。サラッとした軽めの酒でなく、ドーンとくる重ための酒がけっこう腸にしみる。うーむなんという満ち足りた時間。人生還暦に近くなると、なんというかお金への執着心があんまりなくなって、執着するものの対象が例えば楽しい会話であったり時間であったりとか、どんなものでも取ってつけたような出来合いのものでなく手間ひまかけてつくったホンモノに少しでも近づきたいとか、そういう方へワタクシの趣向がシフトしていっている気がします。後悔しない納得できる時間を過ごしたい、無為無意味な時間は人生の損である、最近はそんなこと思ってます。こんなこと思うのはただ年をとっただけか??。今回はまぁちょっと贅沢すぎましたがたまにはこれでいいのだ。 |
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(左) 戸隠中社本殿。 (中) 3日目はジャバジャバの雨。これはもう帰るしかない....、ってことで鬼無里のいろは堂へ。信州名物“おやき”の老舗です。GoToトラベルのクーポン券をもらったのでいっぺんに全部使いました。 (右) 帰りは大町経由。国宝・仁科神明社にちょい寄り。この神明造りという独特の意匠が好きです。 |
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