10月5日(金)
地下水保全問題
地下水の保全問題が、改めて話題となっている。
ことのきっかけは、お隣の安曇野市で、エア・ウオーター株式会社が、既存のゴールド・パックを買収し、大規模な地下水おくみ上げと「水」の販売を行うということで、地下水保全条例の制定に向け動き出し、周辺の市町村に呼びかけ、自治体の協議会を設置したことによる。
松本市での地下水のことが話題なったのは、初めてではない。
私が、平成3年、2期目の市議会議員選挙に臨むにあたって、県下17市(当時)で一番高い水道料金と地下水の保全を統一して「水」の問題として、政策を発表、6月の議会でさっそく提案したことによる。
その時の、チラシは、探せば出てくると思うのだが、概略以下の内容だ。
松本市には、豊富な地下水資源がある。
一方で、松本市は地下水に代えて、水道水の水源を県営ダムに頼り、高い水を買い入れる結果、松本市の水道料金は県下一高くなっていた。
(地下水だけでは今後の産業都市構造を考えると足りなくなるとの当時の判断が正しいものだったか検証がいる。現在は県から買い入れている松塩用水=約63000?/日を優先的にまず使い、不足分=約10000?/日を自己水源の井戸からくみ上げ使っている。松本市には、6つの自己水源があるが、そのくみ上げの能力は、約59000?/日。
よって使っているのは、その約1/6に過ぎない。)
その結果、大量の水道を使う企業、ホテルなどの大口利用者は水道を使わずに自前の井戸を掘り、水道の使用量を減らし、結果として残った利用者、主に市民がその負担を分け合う形で、値上げされた水道料金を負担するという事態を生んでいた。
地下水の利用を見ると、昭和57年以降、工業用が日量2万 2,000t、ホテルが同じく日量1万 6,000t、冷暖房用 1,500tなどとふえ続け、届け出くみ上げ量は平成2年で日量28万tを超えました。
このくみ上げ量は昭和46年、通産省が松本市の安全くみ上げ量として、安全用水量として示した日量の14万 5,000tのほぼ2倍にも達しようとしていました。
当時の「松本市環境をよくする条例」の第6条にはすでに、「地下水が市民共有の財産であり」と書かれ、この共有財産としての地下水を保全し、全市民に役立つようにすることと、高い水道料金の値下げの課題、これを同じ「水をめぐる問題」としてとらえ、解決することが求められ、この「県下一高い水道料金」問題との関係で、松本市と議会に「松本市の地下水源を守り、水道料を引き下げるための提言」を行なったのだ。
その質問を契機に、それまでの調査に加えて、松本盆地での地下水のくみ上げ状況や地下水位の調査が広範囲に定期的に行われ今日に至っている。
平成3年の「提言」には、当時すでに地下水くみ上げ業者から、くみ上げ量に応じての地下水保全(涵養)事業のための「協力金」を徴収する制度を実施している都市、(たとえば埼玉県秦野市)の例を取り上げ、松本市でも「協力金」制度の導入の提案がされたが、当時はそこまでに至らなかった。
いま、安曇野市では、この「協力金」(事実上の地下水利用料金)についての検討が行われ、関係市町村の協議会にも提案されているという。 松本市の所有する観測井の地下水位の調査によれば、安曇野市とは違って、経年でそれほどの「低下傾向」は見られないとの報告だが、松本市でも改めて、地下水保全対策を考える時期を迎えているといえる。
去る8月8日に、私たち経済環境委員会は、 市民の水道水源の100%を地下水で賄っている日本一の地下水都市・熊本市を視察してきた。
人口73万人を擁する都市で、水道用水の全てを地下水で賄っているところは全国でも例がない。 (視察の中では、実際は近年合併した一部地域では、地下水でない水道水を使っている。)
しかし、都市圏の拡大とともに生活水準の向上や産業経済の進展に伴い、地下水涵養量の減少による地下水の水位低下や、硝酸性窒素などによる水質の悪化がみられることから水環境への影響が今後心配されてきた。
そんな中、昭和51年3月に「地下水保全都市宣言」、昭和52年には「熊本市地下水保全条例」を制定し、それ以来、地下水保全対策事業、市民とともに節水市民運動、広域的ない保全対策にも取り組み、現在に至っている。
熊本市では、「協力金」の制度はないが、補助金を設けて、地下水涵養事業を展開している。
詳細は、いずれ、レポートを公開します。
神奈川県秦野市では、地下水は「公水」として、協力金は事実上の使用料金ということで、水道水とのバランスをとるために、発足当初は、5円/?(昭和50年4月)だったものが、現在では、20円/?に値上げされている。
改めて、松本市としても地下水問題を再度考える時期が、約20年かかって巡ってきた。
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