臨時議会23年度決算への意見


  日本共産党を代表して、継続審査中の議案第9号 平成23年度 松本市歳入歳出決算の認定について 意見を申し上げます。

  2011年3月11日に発生した東日本大震災は、巨大地震と津波による甚大な被害のうえに、東京電力福島第1原発事故による被害がくわわり、わが国の歴史でも未曽有の大災害となりました。
  そして、この大震災と原発事故は、これまでの日本の政治のあり方の根本を問うものとなっています。
  そうした中、平成23年度の予算執行行われましたが、これが今までにない最大の特徴の年でした。
  そして、6月30日には、過去の記憶の中では経験したことのない揺れと「震災」が松本で起こりました。

  「国家の使命とは、国民の命を守り、国を守ることであります。確かに、産業経済の振興が大事であることは当然でありますが、国民の命があってこそ、その上に初めて産業経済があるものと、このように私は考えております。」

  これは、昨年6月議会での菅谷市長の発言ですが、まさに「政治と日本社会のあり方」が根本から問われ、地方自治体のあり方も問われた中での平成23年度でした。  
  いわば、命か経済か どちらが優先かが問われたのです。

  そんな中、チュエルノブイリでの経験を持つ菅谷市長ならではの優れた卓見ととりわけ子どもたちを放射線と内部被ばくから守るための一連の施策と行動は、国の対応の遅れの中で、地方自治体の長としてのまさに異彩を放ったといえるものです。
  極々一部の、心無い「手厚すぎる」などという論については、先の9月議会で述べてあるので改めて詳細は触れませんが、人類の未来にもかかわるこの問題への認識と危機意識の欠如と言わざるを得ません。
  給食材料への対応も全国の先陣を切るものでした。
  引き続き、松本市として、被災者、避難者への支援、とりわけ子どもたちの健康と未来を守る立場からもこの分野での積極施策を望むものです。

  また、H23年10月3日から実施された「住宅リフォーム助成制度」は、地域経済の立て直しに貢献するうえでも、加えて事実上、地震で被災した個人住宅への助成制度として、全国にも発信できるこの対応は、実に地方自治体のあり方に係る事業として評価できるものです。
 
  そのほかにも、詳細は割愛しますが、H23年度の施策の中で、いくつかの前進と評価点を確認することができます。

 さて、市民生活の事態に目をやると、引き続きその状態は悪化の一方でした。  
  市民の所得は、引き続き下降の中、一方で、市民の負担は、重くなる。  
  健康福祉分野での一定の負担軽減策があるものの、国民健康保険制度にかかわる分野では、H22年度からの2年連続の保険税の引き上げの2年目、加えて限度額も引き上げられるなど、まさに、「凶作時のより重い年貢の取り立て」といえる事態が進行していたのが、このH23年度と言えます。
  国保会計の「健全化」のための一連の取り組みによって収納率が2年連続で上向いていますが、国保会計を守るための施策の結果として、市民の健康が害されるようなことがあってはなりません。健康保険制度に照らせば、まさに本末転倒と言わなければなりません。  
  国保は、社会保障制度です。
  「相互扶助」の立場に立つ限り、(今の経済情勢の中では、)さらに負担が増える悪循環です。  
  今こそこの立場を見直し、一般会計からの繰り入れを増やし、負担の軽減を求めるものです。  

  地域経済の活性化に関連して、住宅リフォーム制度について申し上げました。  
  地域経済の立て直しには、市域内での内需の拡大が基本です。  
  社会保障分野をはじめ、行政にかかわる市民負担の軽減は、そうした面からも重要ですが、何よりも松本市の経済を支える既存の市内の中小零細業者へのきめ細やかな対応が重要です。  
  20世紀の企業呼び込み型の地域経済の活性化策は、いわば時代遅れの策です。
  H23年度は新松本工業団地建設が本格化しましたが、市としての予算と人員の投資がどれだけ、今の経済情勢の中で、地域経済の発展に寄与するか。また造成した土地が売れるのかどうか実に不安を覚えるものです。
  消費税が、2014年に8%、2015年に、10%にあげられようとしています。
  「今は何とかやっているが、今でも、消費税を払うために借金をしている。これが8なり、10になったら、もう店を閉めるしかない。」
  これが、市内業者のみなさんの実態です。
  こうした市内の業者のリアルな実態を把握すること、そしてその対策を具体化することこそが地域経済を守るために必要です。
  予算と人員を既存の市内の業者に寄り添ったきめ細やかな施策にあて、中小企業振興条例を策定し、改めて松本市の経済ビジョンの見直しが必要です。

  このことに関連して、ヘルスバレー構想について申し上げます。
  これについては、繰り返し申し上げてきました。
  健康寿命延伸は、誰もが望むものであり、これに関する施策は大いに進めるべきです。  
  しかし、これに絡めての、新需要創造と称してのヘルスバレー構想は、別物です。  
  実際にこの事業の実現性にも疑問がありますし、そもそもここに予算と職員をシフトするだけの余裕と体制が松本市にあるのでしょうか。  
  結果的に大企業の儲けのために利用されるということになりはしないか、実に懸念されます。

  南・西外堀復元と内環北線の拡幅工事についてです。
  事実上、「1人でも反対者がいればやらない」といったこの一体工事は、文化庁の方針転換を契機に、反対者がいても実行するに変わってしまいました。
  こうしたやり方が一番の問題点です。
  確かに松本城を中心としたまちづくりは、市民の願いでもあるし、重要な施策です。
  しかし、今のこの市民生活の実態との関係で、今行わなければならない事業なのか。財政的には大丈夫なのか。
  また先ほど市長の提案説明にもあった 歩いて賑わうまちづくりとの関係でも、見直す必要がないのかどうか、住民、市民の合意をふまえての展開が求められます。

  以上、抜きん出たものを含めて評価点は多々あるものの、懸念材料と問題点をそのままにしての平成23年度予算執行でした。

 そうした意味で、予算案審議の際に申し上げた議論も含めて、今回のこの議案、H23年度決算には賛成できないことを申し上げたいと思います。
  尚、指摘した問題点や懸念材料に関して議論が決算特別委員会で行われなかったことは、まことに残念に思うものです。

 冒頭にも申し上げましたが、H23年度は、国政だけでなく地方政治のあり方も根本からの見直しが求められました。
 住民の暮らしの日々の安心と安定があってこそ初めての福祉と健康です。健康寿命延伸です。
 住民の福祉の向上が地方自治体に課せられた任務。 そのためには、国の政治に対しても、はっきりとものをいう政治姿勢がこれからは求められます。またこれなくして、市民の命と暮らしは守れません。
  改めて、この立場からの施策を求めて、議案に対する意見とします。

                                                  以上です。