改装工事(その1 -店舗内部編)

 浦安市にあるギャラリーの改装工事の記録です。

 作業前におおまかな完成予想図は自分の”あたまの中”に作りますが、具体的な図面はなく、壊しすぎないように注意しつつ壊し、その場その場でどうするかを決めて作ってゆきます。

 自分でできない電気工事、水道工事は、作業の進行状況をみながら現地調達?です。

 できるだけ共同作業がモットーで人遣いの荒い工務店(?!)ゆえ、依頼主はじめご家族の方々、僕の友達にも多いに作業に参加してもらいました。

 感謝、感謝です。


引っ越し、解体作業  

 改装前の状態です。

 天井があり、床はコンクリートの打ちっ放し。見えているドアは、使っていない水洗トイレです。

 そのトイレの天井板をはずし(壊し)、そこから天井裏を覗いた事前調査で、とりあえず天井をはずせば広い空間になりそう。あとは、やりながらどうするか考えよう!という製作方針。

 なにはともあれ、中にある家具や什器の引っ越し。燃える解体部材は、近くの銭湯「末広の湯」で薪にしてもらいました。

天井撤去開始

 以前、ここを借りるときに白くペンキを塗った石膏ボードの天井板をはがすと、更にその上にもう一枚、古くなった石膏ボードの天井板が現れました。

 ここは貸店舗ゆえ、借り主が変わるごとに改装したのでしょう。

 今回の改装は、ここでの何回目の改装だったのでしょうか?

 いつものことながら、改装工事の最初に何かを壊すときはちょっぴり勇気が要ります。

 子どもの時の目覚まし時計をばらす時の気分と似て、もう後戻りできず最後までやらなければならない(果たして、うまくできるだろうか?←大抵は、組み立て始めるとなぜかネジがあまり、そして、やはり動かない!)という一抹の不安。

 また、予想外のことが度々起こるのが改装工事の常ゆえ、それらいくつかのハードルを乗り越え、依頼主の期待を裏切らない片桐風な空間を、しかも4週間後の納期までに造り終えなければならないというプレッシャー抱えつつも、「さあ、これからやるぞ!」という気合いを入れ武者震いした瞬間でもありました。

天井撤去途中

 古い石膏ボードをはがすと、石膏ボードの上はベニヤ。さらにその上には角材と、作った逆の順序で取り外してゆきます。

 天井をはずすと、思いがけず丸太を太鼓挽きした(丸太の2面を切り落とした)梁が見えてきました。

 梁は、木の皮の部分は虫が入り(虫はいませんが)、長年の年月で埃や木からでる”あく”で、さすがにそのままでは汚く見えました。

 この梁をどう見せるか?はやくも、難問の出現です。

 

 今回、幾度となくタオル鉢巻きした今回の現場総監督(?!)があらわれ、叱咤激励、助っ人してもらいました。

 まずは、釘だらけの解体部材を危なくないよう釘抜きです。

 

天井撤去終了

 天井板を撤去するだけで随分広い空間になり、これでようやく部屋の全体が見えてきました。

 改装の工事では、まずは解体撤去という、マイナスの所からのスタートです。解体部材は、思ったよりもかさばり置き場に困り、その都度の整理整頓が大事です(「末広の湯」さんには大助かりでした)。

 梁や柱はまだ汚いまま。

 これをどうやってきれいにするか?

 表面を削るとすればカンナで削るか、ヤスリで削るか、それとも他にうまい方法があるか?などなど、実際に作業しつつ、次の作業の段取り、作業手順をどうするかで常にあたまの中はいっぱいだったのです。

 それゆえ、昼、どんなに暑かろうが、大汗かいて仕事のあとのビールはさぞうまいかろうと思っても、ガマンガマン。仕事のあとの銭湯こそ、何にもましてのごちそうでした。

 夜は、全体の構想、今後のタイムスケジュール、次の日の作業の段取り、、、等を考える、最も頭を使う貴重な時間なのです。


コンクリートのはつり(削り)

 今回は2軒長屋?の店舗を一つの店にするため、店舗の境界にあった建物基礎のコンクリートの一部を撤去しました。

 最初は、鉛筆の太さの釘のような「釘締め」という金属の細い棒でコンクリートを壊していましたが、はかどらず、疲れるばかり。

 今回、改装工事での資材調達先のホームセンターで、そのためのの道具を発見しました。

 後日、トイレの撤去に来てもらった専門業者の方は、電動はつり機という”文明の利器”を持参し、ガガガッと、瞬く間にしかも楽そうにコンクリートを壊したのでした。


解体撤去の終了

 ともあれ、なんとか天井も床もきれいにし、ようやく、改装工事のスタートラインです。

 まさに解体現場の風景。

 隣の店舗の床も一部はぎ取り、奥に見えているのは残りの既存の床。

片づけば、どんなところでもやはり気持ちがいいもの。

ようやっと、スタートラインです。


既存トイレの撤去

 これまで使っていたトイレの撤去は、新しく作るトイレの水廻り(給水、排水関係)のこともあり、トイレを設置してもらう水道業者(設備屋というそうですが)の方にお願いしました。

二人組で来られ、さすがに手慣れた感じで解体してゆき、専用の袋に詰めてゆきました。「水道工事だけでなく、解体もするのですか」と聞くと、「設備屋は、何でもします」とのこと。解体と同時に、新しいトイレの給排水のパイプ設置もしてもらいました。

 古いトイレの床下は、湿気で水道管はサビサビ(サビで水漏れが止まっているとのこと)、床板を支える根太も一部はボロボロに腐っていました。


梁磨き

 梁や柱の数が多く磨く面積が広いこともあり、効率よく、楽ちんに(←これが大事!)、かつ、きれいに見える削り方は?

 ない知恵絞り出た結論は、ワイヤーブラシをつけたディスクサンダーで磨くことでした。

 左で、屋根の垂木(たるき)を受ける角材(「もや」と呼ぶそうです)の左側茶色い部分は磨く前。右側の白っぽく見えているところがディスクサンダーで磨いた(削り落とした)ところです。

 カンナで削ったようにきれいとはいきませんが、まあ、見て気にならない程度にはなったと思います。

ディスクグラインダー


断熱工事と壁作り

 天井は、屋根の垂木の間に断熱材(スタイロフォーム)を挟み込んでゆきます。

 その上から、12ミリの針葉樹の構造用合板(ラーチ)を木ネジで止めます。

 真夏日が続き、記録的な暑さの中、これで屋根の裏面からの輻射熱がだいぶ減り、作業も楽になりました。

 

 壁は、既存の壁の上に野縁(のぶち)とよばれる断面30ミリ×40ミリの角材を、ビスで止めてゆきます。

 野縁と野縁の間に、天井と同じくスタイロフォームを挟み込み、その上からラーチを張ってゆきます、その上から石膏ボードを張りビスで止めます。

 この間に電気の配線工事をしてもらいました。

 コンセントや照明の位置や数も、一つ一つ、自分たちで決めてゆかねばなりません。些細なところでも、依頼主といっしょに考え、悩んだところです。

電気工事屋さん


ようやくラーチを張り、その上から石膏ボードを張り、珪藻土塗りの準備ができました。


珪藻土塗り

 珪藻土は、太古の昔、珪藻という植物プランクトンが化石化した土。七輪の材料でもあるそうです。

 使っているのは、日本ケイソウド建材のもの。袋入りの粉末で下塗り用と上塗り用の2種類。

 水の中に少しずつ入れ、電動ミキサーで充分練ります。

 この時の練りの固さが、鏝(こて)で塗るときの最も大事なポイントです。

ちょっぴりへっぴり腰


トイレの壁作り

 

 壁に珪藻土(下塗り)を塗ったところで、それまでどうするか未定だったトイレのプランがまとまり(思いつき)、壁塗りはひとまずお休みし、トイレの壁を作りました。

 

 トイレ部分の柱は、当初見えないように隠し白い壁と思っていました。

 ここで寝泊まりし暮らす(?)うちに、柱は隠すのでなく、天井部分に見えている梁やもやとのバランスからも、外に見えていた方がいいと思うようになりました。

 結果としてこの部分の柱が、ここの空間に適度な緊張感を与えたと思っています。


壁塗り終了                                                          

 ようやく珪藻土塗りが終了し、誰の目にもどんな空間になるか見えてきました。 

 あたまの中だけだったプランがようやくカタチになり、肉体的には限界に近くヘロヘロでしたが、精神的にはだいぶ楽になってきました。

 古い民家のリフォームなどでは、梁をいかにもという感じで黒っぽく塗っていますが、ここでは木の色だけにとどめました。

 店ということで、商品があくまでも主役。

 それを見せるための装置(舞台)としての店であると思うので、梁などは出きるだけ目立たないようにするためにも梁を黒くする必要はないと考えました。

 


床張り   

 

 床は、巾75ミリ 厚さ15ミリのナラ材のフローリングです。

 木が硬いので、釘穴をあらかじめ開けてから、床張り作業をします。

 打ちっ放しのコンクリートの上に野縁を並べ、野縁同士を木ネジで止めます。

 根太の間には、天井や壁と同様スタイロフォームをいれ、その上から構造合板を木ネジで止め、床下地の完成です。

 その上から、ナラに板を張ってゆきます。


床張り終了

 プライベートな空間でしたら、床は着色せずオイルを塗るか、多少、汚れてはきますが何も塗らず(←素足に最も気持ちがいい!)そのままで使うという選択肢もあります。

 今回は、天井の梁とのバランスで床はどっしりとした感じが欲しいのと、土足で上がるので汚れが目立たないようにということで、床のナラ材を茶系に着色塗装しました。


トイレ工事  

トイレ内部は、店の表舞台の工事が終わってから行いました。

見えている黒い細い棒は、給水管(水道管)。

灰色のパイプは、配水管。ここをウンチが流れてゆくわけです。

地面が露出しているので、ここからの湿気対策で、防水シート、スタイロフォームを敷いた上からコンクリートを打ちました。

コンクリートを作るのははじめて。

砂とセメントをよく混ぜ、そこに砂利を入れまたまぜ、そこに分量の水を入れよく混ぜる、という、ホームセンターの「コンクリートの作り方」の張り紙にしたがって見よう見まねで作りました。

混ぜる四角い入れ物(舟というそうですが)は、拾ってきたもので、我が家の仕事場のストーブの受け皿に使っていたモノ。

 翌日、床に流したコンクリートが固まっているかドキドキしながら触ってみました。しっかり固まっており、ホッとしました。


床を張りボードを張り壁を塗り、便器を取り付け


トイレのドア(タモ材、三角窓にはステンド用色ガラス)、窓(タモ材、既存のサッシの内側に)、和紙とブラックウオルナットの木で作った照明の笠(←これらの製作が本来の本業?)、それらをとりつけトイレの完成です。

 照明の笠は、昔、つれあいが松本でやっていたクラフトの店「きぎ」で使っていたものです。

 

 

 あるものをそのまま使えたらいいのですが、手前の既製品の流しは、サイズの関係で10センチほど短く切断加工しました。

 これで、捨てることもなく、また、無理してそれにあわせた不便さを我慢する必要もなくなりました。


最後に「トイレ考」 立つか?座るか?

 今回、トイレの床をどうするか、その素材が問題となりました。

 よくあるのはタイルとかですが、バリヤーフリーで店の床とひとつながりにしたいということもあり、ナラのフローリングがそのままトイレの床へ繋がっています。

 一番心配だったのは、トイレの汚れです。

 ズバリ具体的に言えば、男性の「小」の時です。

 僕は、洋便器の場合、小でも大でも(特大でも)座って用を足しています(激しく小にまみれた(汚れた)トイレは別ですが)。

 立ったまま、約60〜70センチ離れた便器に向け、100パーセント便器を汚さずに「小」を足す自信がないのです。

 かなり注意はしていても、どうしてもなにがしかの飛沫が便器や床に着くことになるわけで、トイレを汚すことになります。

 男で、絶対の自信アリの方なんて、いるのでしょうか?

 また、汚したらその都度すぐきれいに掃除しているのでしょうか?

 掃除ズボラ人間ゆえ、汚さない方法があれば(掃除の回数が少なくてすみますし)その方がいいに決まっています。

 それで、小でも(もちろん大でも)腰掛けて用を足しているのです(食事と同じく座った方がゆっくりできますし、せめて、トイレの時くらいゆっくりしましょうや)。

 店のお客さんは女性の方が多いですし(←こちらは問題なし)、男性の方も、気持ちよくきれいなトイレで「どうぞごゆっくり!」ということで、使ってもらえたらいいのではと思っています。

 *)今回、トイレのカタログを見ていたら、便器廻りの床に飛び散ったアンモニア水(?)をきれいにするというトイレマットが載っていました。

わざわざマットを使う位でしたら、男も座って”小用”を足すという習慣にした方が、清潔ですし、掃除の手間もかからず、はるかに合理的に思えるのですが、そんな風に思うのは僕だけでしょうか。

 世の男性諸氏はいかがお考えでしょうか?