メロス楽譜 M2019 第1刷
ふるさとの夜に寄す
作曲者のことば
多田 武彦
 東京大学工学部建築学科を卒業後、一流設計事務所に勤務された立原先生
は、学生時代から親しんでおられた詩作にも、非凡の才能を発揮され、十四行
詩(ソネット)を主体とする多くの詩を書き残された。不幸にも24歳の若さ
でこの世を去られたが、建築家らしい堅確な構築力を持ちながら、日本の四季
のきめ細かい詩情や若者らしい喜怒哀楽の滲み出た作風は、今に至るまで読者
の心を捉らえ続けている
 この組曲に選んだ六篇の詩の向こうからは、立原先生の「高原の季節のよう
に変化する詩情」が漂い、建築学科出身の詩人が描いたパステルカラー調の外
観パースペクティヴ(透視図)を見るように、淡い端麗さをもって、私に語り
続けていた。
 こうした詩の魅力に惹かれて、私はこれまで立原先生の詩による男声合唱組
曲『優しき歌』『ソネット集』『ソネット集・第二』『南国の空青けれど』と
今回の『ふるさとの夜に寄す』を作曲して来た。
 永年わたり「奇を衛わない、正統的な演奏」によって聴衆に賞賛され続け
て来た白門グリークラブに、2011年5月、名演奏による初演をおこなって
頂いた。
 終わりに、この組曲の出版にご尽力くださったメロス楽譜西野一雄氏に、厚
く御礼を申し上げる。
1997年11月(?)