「微力だけれど 無力じゃない」

長崎市長          
  田上富久   

  おはようございます。長崎市長の田上富久です。
  ここ松本市で開催される第23回国連軍縮会議の開催にあたり、ご挨拶を申し上げる機会をいただきましたことを大変光栄に存じます。
  松本市は1986年に平和都市宣言を行い今年で25年になるとお伺いいたしております。 菅谷昭市長が日ごろ大変大事に考えておられる  ことも存じております。
  今日は平和への思いを共有する仲間として、この場にいることをたいへんうれしく思っています。
  今年3月11日東日本大震災が発生しました。 それに続く原子力発電所の事故は、「ノーモア ヒバクシャ」を訴え続けてきた長崎の市民にも大きな衝撃を与えました。
  被爆国日本でなぜ放射線によって苦しむ人々を再び生むことになってしまったのか。 私自身も今自問自答を繰り返しています。
  もし、日本の原子力発電所は安全であるという神話があり、それが多くの日本人を思考停止にさせていたとすれば、核兵器についても抑止力という脅しは有効であるという神話、核兵器は使われることはないという神話があり、それが世界の多くの人々を思考停止にさせてるのではないか。
  しかし、福島の原発と同じように 取り返しのつかない悲劇が起きてから神話であることに気がついたのでは、おそい。
  原発事故により、放射能のもたらす恐怖について、理解がすすんだ今こそ核兵器の危険性についても、しっかり伝えなければならない。
  そして、次の世代に核兵器のない世界を渡そうとする市民のネットワークを広げていかなければならないと思っています。
  私は、市民社会の力を信じます。
  社会を動かす力の根源は、一人の人間であり、そこから広がる市民社会だと思います。
  それが、都市や地域を動かし、国を動かし、世界を動かすのだと思います。
  長崎では高校生たちが、核兵器廃絶のための1万人署名活動をしています。そして、集まった署名を毎年、平和大使として国連欧州本部に届けています。
  彼らの中で生まれ、定着した合言葉があります。 それは、「微力だけれど無力じゃない。」と言う言葉です。
  「微力だけれど無力じゃない」
  世界から見れば小さな動きかもしれないけれど、その力はゼロではない、小さくても、少しだけ世界を変えることが出来る。 そして、集まれば、10にも100にも 1億にさえなれるという希望のことばでもあります。
  いま世界151国・地域のおよそ4803都市が加盟する平和首長会議でも、市民の側から世論を盛り上げようと唯一の被爆国である日本や各国政府が核兵器禁止条約締結に向けた多国間交渉を早期に開始するよう署名活動を行っております。
  地球上から核兵器をなくすためのつぎの一歩に向けて皆様のご協力をお願いしたいと思います。
  今回の国連軍縮会議は、核兵器のない世界に向けた緊急の協同行動がテーマになっています。  
  昨年のNPT再検討会議の合意文書に盛り込まれている核軍縮に向けた共同計画の早期執行、そして核兵器禁止条約の締結に向けた多国間交渉の早期開始は、まさに差し迫った国際社会の課題です。 
  この会議を契機に前向きで有意義な議論が展開され、核兵器のない世界の実現に向けた動きが加速することを心から願っています。  
  会議の最終日には 高校生による軍縮トークが予定されていると伺っております。  
  先ほど紹介しましたように長崎では、小中学生や若者が平和活動に参加をしており、それが高齢化したヒバクシャを元気づけることにつながっています。  
  被爆者の数が年々少なくなる中で、被爆体験の無い人たちのあたらしい活動が生まれてきています。
  核兵器のない世界に向かう市民社会の力を発揮していくためには、戦争を知らない世代の平和への思いや行動が不可欠です。
  今回の会議が若い世代のあいだで軍縮への関心を持ってもらう契機になることを心から期待しています。  
  最後になりましたが、ご挨拶の機会をいただきました国際連合アジア太平洋平和軍縮センターの木村所長、及び実行委員会の菅谷会長、感謝申し上げますとともに、第23回国連軍縮会議in松本のご成功と松本市のご発展、そして ご活躍を心からお祈りし、ご挨拶といたします。ありがとうございました。

  (題字は、池田)