提言は経営者必読
日本商工連盟大阪地区代表世話人 小池俊二
今回の共産党の「提言」について、私は懇談会の前から熟読し、赤線を引いて勉強をしておりました。
消費税増税に反対する根拠が非常にわかりやすくまとまっている。経営者は必読する必要があると思っています。
構成で一目瞭然
いまの民主党政権はどうなっているのか。
国の基本方針をとりまとめる「国家戦略会議」の構成をみれば一目瞭然です。
議長の野田佳彦総理以下閣僚が並びますが、民間から入っているのは、まず連合の古賀伸明会長です。そして日本経団連の米倉弘昌会長、経済同友会の長谷川閑史代表幹事。連合は大企業組合が中心だということからみれば、すべて大企業の代表といっても過言ではありません。
日本商工会議所など日本の雇用の7割を占める中小企業の代表は入っておりません。
政権交代が起こったのは、「小泉改革」やリーマンショックで市場原理主義の失敗が明らかになった後でした。
ですから、私も民主党は中小企業や生活者のための政策を進める政党ではないかと期待していたのですが、ふたを開けてみると大企業と大組合の連合体を土台とした政権でした。
その政権で、いったいどんな中小企業政策をやったのか。
よかったのは支払い猶予制度の延長ぐらいです。
基本的に中小企業と従業員のための政策を進める政権ではないということは、はっきり申し上げたい。
歴史の先祖返り
いまの政治には危ういものを感じます。
例えば、大阪には19の小選挙区があります。
前々回の総選挙で民主党で勝ったのは2人だけでした。それが前回の総選挙では自民党で勝ったのは1人だけ。風が吹けばガラッと変わってしまうのです。
総理大臣も安倍(晋三)さんから野田さんまでこの6年間で6人も代わりました。
ぞうした中で昨年、東日本大震災が起きました。
考えてみますと、88年前の1923年も甚大な犠牲者を出した関東大震災が起こりました。その年から昭和恐慌の31年までの9年間に総理大臣が9回も代わっています。
いま歴史の先祖返りというか、当時の状況と非常に似ていると感じています。
いま、政治は危険な状態 共産党は「王道」歩んで
当時でいえば、国民が大変な窮乏に陥っているのに、政友会と民政党が足をひっぱりあっていました。政党政治が汚辱にまみれて国民の信頼を一挙に失っていきました。
そのとき、共産党は地下にたたき込まれていました。
軍国主義台頭
そこで台頭してきたのが、軍国主義であり、ファシズムです。
そして1932年の5・15事件以降、政党内閣制は終止符を打ちます。それから、軍人内閣が続き、戦争の道に走っていったのです。
いま、自民党がこの体たらく、民主党がこんな状況という中で、いったいどうしたらいいかと国民が非常に迷っています。
場合によったら、国民の中に「独裁者」に対する期待が生まれてくる可能性だってないわけではありません。
ですから、私はいま、極めて政治的に危険な状態にあると思います。
この1月、大阪の公明党の新春年賀会であいさつしたさい、私は出席した松井一郎知事や橋下徹市長らの前で、そうした趣旨のことを訴え、続けてこう申し上げました。
柔道の父・.嘉納治五郎が、政治というたたかいには「王道」と「覇道」という二つの道があるといっています。
「王道」はおごれるものの風を嫌って天下のためにたたかう。「覇道」は仁義の名をかりてたたかいを好み、己のためにたたかう。ぜひ「王道」を走ってもらいたい、と。
いまのところ、つまらない駆け引きや己のためのたたかいをせず、「王道」を走っているのは共産党だけではないでしょうか。
共産党には堂々と「王道」を歩んでもらいたいと思います。
私が消費税の増税に反対しているのは、第一に民主党が総選挙でこれを掲げていなかったからです。
菅さんになって突如自民党と同じ10%にと言い出し、野田さんになってもう必死になっています。
選挙では、政治家がきちんとした公約を掲げ、国民はそのことに信託を与えるのであって、勝者に白紙委任を与えるものではありません。
最近、橋下さんも「選挙では国民に大きな方向性を示して訴える。ある種の白紙委任」と述べたそうですが、そこははき違えないでいただきたい。
そして、消費税が増税されると、「提言」にも分析されているようにハ大変な需要の減退を招き、景気も税収もぐっと落ち込むでしょう。中企業は価格に転嫁できませから、中小企業政策が何もない現状で消費税の増税までやられたら日本経済の姿が根底から変わってしまいす。
震災復興こそ
私は、今回の共産党の「提言」を、「社会保障と税の一体改革」に対する一つのアチテーゼと位置づけたらいいと思います。
民主党のマニェストには、何の裏づけもありませんでしたが、「提言」には、感情論ではなく根拠と数字が示されているからです。
本来、いまの政権にとっては震災復興こそ大間題です。遅れに遅れているガレキ処理という喫緊の課題と、原子力から自然エネルギーへの転換という大問題をそっちのけで、消費税、消費税と騒いでいる場合ではないはずです。
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