〔ドイツ発ゴール〕    サッカーとはいえない 

 これはもうサッカーではなかった。
  最初はポルトガルのロナルドにたいする、ひどいファウルだった。
  足の太ももをスパイクでけりつける行為。その後もまた足を狙われ、彼は痛みで前半30分を過ぎて、ベンチに退くしかなかった。
  後半は、さらにひどくなる。両チームともファウルが連続し、足を狙うタックル、ひじ打ちといった危険な行為が続く。相手のファウルを誘うような場面もあった。 何回ももみ合いとなり、カードも次々と出された。どんどん選手が少なくなっていき、結局、退場者が2人ずつ、警告は合わせて16枚という、不名誉な記録までつくった。
  オランダのファンバステン監督は「後半はほとんどサッカーになっていない。
  1分に1回はファウルがあった。本当に情けないことだ」と嘆いた。
  勝利にだけ目を奪われ、闘争心をはきちがえ、理性を見失う。これではサッカーもスポーツも成り立たない。
  スポーツが社会に貢献できるのは、たたかいのなかにも、人間としての理性の発揮があるから。それを通じて、互いにより理解し、友情をはぐくむ力があるからだ。
  選手はフェアにプレーする責任がある。
  それは社会にたいして、そして自分たちのために。
  ロナルドがけがでゲームを退いたとき、悔しさからベンチで涙を流していた。
  こんなことを続けていたら、自分たちの首を絞めることにもなる。
                                    (ニュルンベルク=和泉民郎)