2月議会最終日に述べた意見
日本共産党を代表して、 議案第42号、46号、48号、54号、56号に関して 以下、論点を絞って意見を申し上げます。
今や日本は、国内総生産(GDP)も、国民所得も、20年前の水準に落ち込み、勤労者世帯の年収は、ピーク時から平均で70万円も減っています。
国民の所得が減り続け、経済成長も止まる、こんな国は、先進国の中でも日本だけです。
そんな中、地方自治体に求められる施策は、市民のくらし、命と健康を守り、子どもたちの健全な成長と未来の保障、そして地域経済の立て直しと活性化です。
そのために必要なことは、社会保障費などの市民負担を軽減し、市民の所得を増やす、家計を応援し、内需を活発にする施策に本格的に踏み出すことです。
今日、地方自治体にとっても、デフレ不況の打開、地域経済の立て直しは、国任せではない重要な課題。内需を活発にしてこそ経済が活性化する、こうした経済法則に適った施策の充実、実施が必要です。
そうした観点から来年度予算案を見ると 子どもの医療費無料化の年齢拡大、住宅リフォーム助成制度の延長など、こうした施策は、市民の健康を増進し、経済の健康という点からも実に重要であり評価できるものです。
もちろんそのほかにも、多々評価できる点があることは改めて申し上げませんが、 しかし一方で、国保会計を見ると、来年度は税率の改定こそないものの、この間の一連の税率と上限額の引き上げによる負担増は改善されず、その結果、国保加入者の所得に占める割合は、ますます高まっています。
以前にも指摘しましたが、長期に続く不況の中では、まさに江戸時代の「凶作時のより重い年貢の取り立て」と言えるような事態が、今後も進行することが予想される予算案です。
介護保険料についていえば、これも何度かの値上げにより、現在松本市は、県下19市中のトップです。
こうした医療、介護の分野での負担の重さは、暮らしを脅かすだけでなく、お金がなくて医療が受けられない、治療を中断せざるを得ないという事態をさらに深刻化させるものです。
いずれも、一般会計からの繰り入れで、負担の軽減を図ることこそが、健康寿命延伸にとって不可欠です。
次に新工業団地の建設にかかわる点です。
新松本工業団地の分譲が本格化しましたが、今後市としてのこの予算と人員への投資が今の経済情勢の中でどれだけ地域経済の発展に寄与するか、またこの団地の分譲が予定通り進むのか、将来でのお荷物にないはしないかの懸念も実に不安を覚えるものです。
企業が来れば、雇用と税収が増えることは確かですが、一方で、市内企業での「100人」を超えるリストラ問題が生まれました。
新しい雇用、そして企業の誘致と新しい産業の育成の必要性は完全否定するものではありませんが、市内の企業の実に98.7%を占める既存の中小零細企業への実態調査を含めたきめ細やかな対応、また、市内労働者の働かされ方の実態の調査、最低賃金の保障、公契約条例の制定などこそ必要です。
また、そうした施策へシフトする体制の強化が重要です。
私たちはこの間、20世紀型の「企業呼び込み型」施策は既に破綻をした手法で、地域経済の活性化には、十分つながらない、このことは全国からの経験からも明らかだと指摘をしてまいりました。
仮にその誘致企業が成功したとしても、決して市民の暮らしぶり、所得の向上にストレートにつながらない、このことは平成22年度の決算特別委員会での議論、企業収益は上がっても、働く労働者の所得の増に必ずしもつながらないという議論の中でも明らかになり、非常に大事なことが見えてきたというふうに思います。
またそれと関連しますが、健康寿命延伸新需要創造事業は、「アベノミクス」の「3本目の矢」「新産業成長戦略」とも、まさに重なる内容となってきましたが、今だにその実態が明確でない上に、全庁上げて取り組むことで、今の職員体制で他の施策へのしわ寄せが出ないのか、また結果的に大企業のもうけのために利用される結果となりはしないか懸念は払しょくされません。
次に「松本城南・西外堀復元、内環状北線整備一体事業」について申し上げます。
一般会計と松本城特別会計に関連する事業です。
先日、市長は初めて地元説明会に参加して、この事業についての思いを語りました。
でも、わたくしには、「健康寿命延伸都市・松本」の創造と第一番目のリーディングプロジェクトとしての南・西外堀の復元の必要性がどうしても素直に結びつきませんでした。
説明に無理があるということと、市民への周知と市民合意が不十分であることも指摘します。
加えて、そもそもこの事業を進めるに当たっては、「外堀の復元に当たりましては、史跡指定が大前提。そのためには、対象地域内の皆様の100%同意が必要です。」との議会での答弁、そして市民への約束という点でも、いわば「反対者が一人でもいればできない。」との明言から、事実上「反対者がいてもできる事業」とすり替える、この間の言明、住民への説明と異なる、当初の公の場での約束に反し、違うといわれても仕方のない内容で進められ、そして、今回の予算では、いよいよ土地の取得に入るという中身です。
いよいよ引き返すことができない事業。
それは、事業に反対を表明している人を顕在化させ、孤立化させ、事実上の事業への賛否の選択権と表明権を奪うものです。
このように今回の土地の取得は、これまでの矛盾を激化させ、加えて新たな事態をも引き起こす、質的な違いが生まれるのです。 本格的な着手前に住民の完全合意と市民の納得を得ることなく進めた結果です。
この「納得と合意に元づく市政運営」こそ、市長が初当選した時の重要なテーマであり、 H20年2月本会議で、市長自ら「基本姿勢としましては、強引に進めることなくじっくり時間をかけ、そしてまずは地元の市民の皆さんとお話し合いをしながら進めていく所存」と述べていた点ではなかったでしょうか。
最後に、「健康寿命の延伸」を図ることは、市民誰もが望み、自らの課題としても支持できることです。
しかし、その際の留意点は、行政の役割、すなわち「公助」の役割を十分に発揮することです。
それこそが、憲法で定められた地方自治体の本旨であり、地方自治法第1条2項「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ
総合的に実施する役割を広く担うものとする。」の中身です。 決して、「自助」「共助」のみを強調する「自己責任論」に陥ることがあってはなりません。
行政は、「福祉の心」をもって、最大限の努力する。職員の皆さんも人員が減らされる中困難が伴いますが、こうした仕事に誇りをもって、進めていただきたいそのことをお願いし、議案に対する意見といたします。
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