ごみ減量に係る提言書(素案)
松本市議会経済環境委員会
1 はじめに
私たちは、便利さや物質的な豊かさを追い求め、大量生産、大量消費、大量廃棄という、貴重な資源と大切な環境を軽視した社会経済システムをつくりだしました。
これにより、莫大な廃棄物処理コストが必要になるとともに、有害物質の排出、温室効果ガスや不法投棄の増加など様々な問題を抱えています。
このような状況に対応するため、国では、持続可能な社会の実現へ向けて、3R(廃棄物の発生抑制・再使用・再利用)の取組みの一層の浸透を図り、低炭素社会及び自然共生社会に向けた取組みと合わせ、廃棄物・リサイクル対策を推進しています。
本市においても、地球温暖化防止のための二酸化炭素の削減や、限りある資源の有効活用を進め、環境への負荷をできる限り抑制し低減していくことを最優先の課題として「松本市一般廃棄物処理計画」を策定し、目標を持って廃棄物対策を進めています。
昨年末には「松本市ごみ有料化検討委員会」が設置され、同委員会から本年4月、「ごみ有料化が、それ単独では一般廃棄物減少の決定的な施策とはならないことを前提としつつも、排出量に応じた負担を求めることにより、市民が松本市の直面するごみ問題に関心を寄せ、今後の市民生活を確保するために、分別及び減量に向けた市民及び行政の努力を誘発する、ひとつの契機となると判断した。」と市長に報告がされたことから、庁内において、ごみ減量方策の一つとして「ごみ有料化」が検討されています。
この提言書は、これらの状況に鑑み、ごみ有料化を含めた廃棄物処理の問題について、松本市議会経済環境委員会が研究し、検討した結果を基に議会として提言するものです。
2 松本市のごみ処理の現状と課題
(1)ごみ処理の現状
本市は、昭和三十年代から分別を開始し、以後、減量やリサイクルの推進に取り組んできました。そして、数次にわたって分別区分の見直しを行い、現在は5分別22区分の実施に至っています。
また、並行して、指定ごみ袋制度の導入、資源物分別の再分化、有価資源物リサイクル助成事業、堆肥化処理機の購入費補助等自家処理の推進、買い物袋持参運動の推進など、数多くの事業を展開し、市民はもちろんのこと環境衛生協議会をはじめとする関係団体とも協働しながら取組みを重ねてきました。その結果、現時点での本市のごみ排出量目標値はほぼ達成している状況になっています。
しかし、残念ながら全国や県内他市の排出量と比較するといまだ十分な減量とは言い難い状況にあり、本市の廃棄物処理の指針でも、廃棄物処理計画の基本方針において、再使用、再生利用等と併せて、できる限りの廃棄物の発生抑制が求められています。
(2)ごみ処理の課題
本市の廃棄物の特徴として、事業系ごみが多いこととリサイクル率が低いことが挙げられます。
ア 事業系ごみの削減
事業系のごみについては、平成19年度から事業所における紙類の資源化に取り組むなど一定の効果をあげていますが、ごみの絶対量そのものは未だ多い状況です。
また、家庭系のごみも、業者収集と直接持ち込みは事業系にカウントされる仕組みとなっています。特に3万戸ともいわれる共同住宅のごみは、かなりの割合で事業系ごみの扱いとなっている実態にあります。加えて、これらのごみは、分別がされていない可能性が極めて高く、この対策が急務となっています。
イ リサイクル率の向上
本市のリサイクル率は、直近の国のデータである平成20年度の比較において、全国平均20.3%、長野県の平均24.6%に対して17.5%と低い状況にあります。ピン類やペットボトル、容器包装プラスチックなどの分別や、生ごみの堆肥化など対策が講じられていますが、これらの取組みの一層の推進が求められています。
3 提言 - これからのごみ処理に向けて
本市では全市を挙げてごみ処理に取り組んできた結果、前述のごとく、年度ごとの目標値は概ね達成しています。しかし、全国と比較するとまだごみの排出量が多い現状にあります。最終処分場も残余年数が16年の見込みであることから、より一層のごみ減量が求められています。発生抑制については、現状の産業構造等を考慮すると、レジ袋や包装紙をつくっている業種などに大きな影響を及ぼす懸念があることなどから、一定の時間をかけた取組みが必要ですので、分別の徹底による事業系も含めたごみの減量やリサイクル率の向上が喫緊の取組事項であると考えます。
また、資源物がごみの総量に入っていることに市民は違和感を抱いています。 まずは、1人1日当たりの排出目標を「ごみ排出総量」から「資源物を除いた家庭系、事業系の排出量」に絞り、その目標期間も2〜3年といった、市民が達成しやすく取り組みやすい期間に設定にすることなども肝要と考えます。
排出量の抑制、再(生)利用の推進、ごみの資源化に対する意識改革といった観点からこの問題の検討を進め、ここに提言します。
[提言事項]
(1) 市民が最も「ごみ」と感じている可燃ごみに混入している雑紙などの紙類や、容器包装プラスチックなど分別を徹底されたい。
(2) 事業系ごみについては、集合住宅のごみ排出の現状を早急に調査するとともに、速やかな分別の徹底を図られたい。
(3) 生ごみの再生利用についても、家庭での堆肥化の取組みに加え、食品取扱業者等事業者への分別を指導により、残渣を堆肥化し農家が利用するなどの循環システムを検討するなど、市民が取り組みやすい事業を検討されたい。
(4) リターナル瓶などに代表されるリユースを推進されたい。ただし、現在、一般に広く普及している缶、ペットボトル、紙パックなどの製造業者に一定の配慮をしながら、松本から全国に発信できるような運動・制度づくりを検討されたい。
4 結び
理事者におかれては、本提言をしっかりと受け止めていただき、引き続き、廃棄物問題について、現状分析及び研究を進め、ごみ減量を推進していただきたい。
また、現在理事者が検討を進めている家庭ごみの有料化については、長野県では19市中14市をはじめ、7割以上の自治体が既に導入し、近隣では安曇野市、塩尻市及び上田市において実施され、多量排出者の関係での公平性の問題、過剰包装などごみとなる無駄なものを購入しないといった発生抑制のインセンティブとなる効果など、確かに有料化による減量があることは事実ですが、リバウンド、不法投棄など、いくつかの懸念があります。
有料化の実施に当たっては、適切な手数料の設定、その使途の検討、生活弱者に対する配慮など十分に検討を重ねること、また、その実施時期については、本市のごみ量の状況、現在の社会経済状況下での市民負担増の影響などを総合的に勘案し、慎重に見極めることが不可欠であり、何よりも市民の合意を大前提に進めるべきであると考えます。
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