2011年  12月定例議会 質問  

 1回目)
  日本共産党の池田国昭です。
  今議会では、松本市の今後の経済政策が大きなテーマとなっています。
  そこで、どうやって地域経済を立て直し、活性化を図るか。その際の留意点、課題は何かということで、以下質問いたします。

  1つ目は、TPP問題です。  
  TPPは、関税撤廃をあくまで柱とするFTAと違って、例外品目を認めない原則関税ゼロが本質の経済協定です。  
  市長は、提案説明の中で、 「松本地域に及ぼす影響を、十分見極め、今後の議論の内容を含め、国の動向をこれまで以上に注視します。」とだけ述べましたが、お聞きしたいのは、今年2月の議会答弁と変わらない、「注視していく」だけでいいのですか、それで松本市の農業と農家、そして地域経済は守れますかということです。  
  「関税がゼロ」となった場合、松本地域の農業への影響をどのように試算、考えていますか。
  食料自給率への影響も含めて。
  また、今後の情報収集と検討はどのようにやるのですか、お聞きします。

  2つ目は、かなり現実性を帯びてきた「プラチナ・イノベーション」「ヘルスバレー構想」についてです。
  今回何人もの議員から、来春の市長選挙に絡めてのこのテーマに関する質問が出され、答弁が行われるたびに、今回の話のスケールの大きさが伝わり、市長は、「経済の好循環を期待できる」とまで述べていますが、 一年前市長は、この構想に対しては、「私は慎重です。」との態度をとっていたものでしたが、ここへきてこの実行に向けいわば不退転の決意が伝わってきます。  
  そこでお聞きします。
  1つは、改めて、「健康寿命延伸都市・松本」の創造とは、何を目指すのか。
  そして、「プラチナ・イノベーション」「ヘルスバレー構想」の経済政策としての位置づけも含めてお聞きします。  
  次に、「健康寿命延伸新需要創造事業」については、いつまでに何をどのようにやっていくのか、またそれに向けた予算規模は、どのくらいになるのか、すでに庁内での取り組みが行われているが、今後人的には、どのような体制で臨み、進めていくのか。
  また、すでに「環境未来都市構想」については、申請を行ったということですが、「総合特区」制度への申請は、今後どのような準備で、いつまでを目指して申請するのか。
  さらに、この構想と新工業団地建設がある時点から強いかかわりを持って来ましたが、当初の知識集約型企業誘致の関係での現在までの進出希望企業数、希望面積は、どのようになっているのか。
  また、「ヘルスバレー構想」関連で、アイデアを提出している企業で、工業団地への進出を表明している企業はいるのか。
  マスコミでは、「企業進出の動き活発」とまで報道されているが、実際のところはどうなっているのかお聞きします。
    以上で、一回目の質問とします。

 2回目)
  TPPの影響については、要は、「わからない。」とのことですが、実に不可解です。
  実は、日米FTAのことが問題になった、平成21年9月議会、 「反対すべきだ」と求めた質問に、市長は「国政レベルの問題であり、かつ、現時点では不透明である部分が多いことから、この場で論ずることは控えさせていただき、当面は、国の動向を継続的かつ詳細にチェックしてまいりたい。」とだけ答弁しました。
  それに代わり、当時の農林部長は、次のような実に大事な答弁をしています。
  「日本の農業は国境措置によって保護されています。」
  「その国境措置は、引き続き継続されるべきものだと私は考えています。」
  市長答弁がなかったので、3回目に私が、重ねて質問をしたことに対する「私としましては」との断りがありましたが、農林部長としての答弁でした。
  実に大事な点だと思っています。
  「国境措置」は、言うまでもなく関税のことですが、TPPは、この関税が完全に撤廃されるわけです。
  FTAはたとえば、コメは除外されるかもしれない、というものでしたが、TPPには例外はありません。
  市内のJA関係者が言っていました。
  今、年間、20万俵を出荷、取り扱っている。関税がゼロになれば、それはわずか2万俵になるでしょう。
  自家用米は残っても、コメを作って売りに出す農家はいずれなくなる。そうなれば、後継者、「担い手」策など何の意味もなさない。と
  「注視していく」という理由に、本当に関税がゼロになるかどうかは、野田首相のアメリカでの発言ということもあり、わからないということがその背景にあるのでしょうか。
  ならばお聞きしますが、農業分野で、「関税ゼロ」ということが分かった時点では、反対を表明するということなのでしょうか。
  それとも、それでもまだ別な態度をとるつもりなのでしょうか。 別な態度ということでしたら、その理由を明確にした答弁を求めます。
 
  次に「ヘルスバレー構想」についてです。
  市民の健康寿命の延伸を目指すことについて異論をはさむものではありません。  
  それは、市長が目指してきた1期目の公約「安心してくらせ、安心して病み、安心して老い、生涯を終える」ことができるまちづくり、という原点そのものです。  
  しかし、検討すべきことの1番目は、展開しようとしているこの「ビッグプロジェクト」。
  ベースとなっている三菱総研の資料では「50兆円市場」ともいわれる「ビッグビジネス」。
  これと地方自治体としてのかかわり方です。  
  新産業の創出といえば聞こえはいいですが、いわば大手の企業が市場拡大のアイディアを持ちより、一緒になってやっていくことと、今の経済危機の中で、財力に乏しく、日々のくらしと営業に苦慮している市内の中小零細企業への経済支援策とは、行政の仕事としては性格の異なるものです。
  仮に、こうした大手の企業とのコラボレーションで、「ヘルスバレー」ができたとして、はたして地域の経済の活性化にどれほどの貢献ができるというのでしょうか。どれだけの地域の雇用が見込めるのでしょうか。
  新工業団地に集積するかどうか、それすら、先ほどの新工業団地に関係する答弁からも、実に心配があるわけです。  
  今回の「プラチナイノベーション」構想は、もともと民主党の「新成長戦略」に端を発するもので、「総合特区制度」を使って、大企業の国際競争力強化と称し、法人税減税、規制緩和と地方での優遇策など、大企業の要求から、大企業応援が中心の、経団連の主導の「未来都市モデルプロジェクト」と軌を一にするものです。  
  今議会初日の市長の「提案説明」、明日から始まる「健康首都会議」のパンフレットでの市長のあいさつと、三菱総研の小宮山氏の2009年8月の時点でのあいさつが、瓜二つとなっているところにも、そうしたことが見え隠れし、不安を抱かざるを得ません。
  結果として、大企業の応援に松本市が利用されるようなことになりはしないか。この点が一番の懸念材料です。
 リーマンショック以降、世界経済危機が長期化し、東日本大震災、円高が重なる今の経済情勢の下、これまでのように「国際競争力の強化」を口実に、雇用環境や国内需要を犠牲にして、外需依存の経済政策を続けていては、日本経済の前途はいよいよ閉ざされてしまいます。  
  今必要なことは、国内需要を喚起させる経済政策、とりわけ大きく減少した国民の所得の回復、家計を直接応援する政策への抜本的転換、きめ細やかな中小零細企業への支援、TPPから農業と農家を守る施策です。    
  市長は以前、「今回の事業の目指すところは、内需型産業ということで、松本を実証実験に使ってもらい、健康産業、福祉産業をきちんとし、まず日本の中で使ってもらい、いいものは外国へ売っていく。」「内需型です。ご心配なく。」という主旨のことを言っていっておられましたが、外需依存、内需主導経済という意味は、企業が輸出型であるかないかということだけにとどまらず、国内での消費がちゃんと伸びる経済となっているかがことの本質です。
  市民が、買うこと、利用することができるだけのお金があるかということです。  
  ますます深刻化する格差と貧困問題を放置し、国保税などの市民負担を増し、結果として市民の購買力、地域での需要を冷やしたままで、「経済振興」策だけを図ろうとしても、今の経済情勢の中では、閉塞は打破できない。この松本市だけは特別にということも望めないのではないでしょうか。  
  市長は、この点どのようにお考えでしょうか。ぜひお聞かせください。
  また、2番目に検討すべきことは、これだけの事業を進める体制が今の松本市役所にあるのかということです。
  正規職員がこれだけ削減され、そうでなくても、地方自治体本来の福祉の増進のために奮闘する現場職員が多忙になっている中、さらにここで新たな事業展開にどれだけの力をつぎ込む余力があるのでしょうか。
  事業予算との関係からも、実に気がかりです。
  市民生活が「悲鳴」を上げ、困窮している市民の現状の解決のための施策がしっかりしてこそ初めて、「健康寿命延伸」の目標が達成できると思います。
  職員が減らされ、多忙ゆえに、心の病で休む職員が増えていることが昨日問題となりました。
  こうした問題の根底には職員体制の弱体化があります。
  「住民福祉の機関」としての地方自治体本来の役割が十分に発揮できない状況の中で、生活保護受給者が増える、2年連続の国保税の引き上げなど一連の問題、ほかにも解決を求められる課題が山積している中、新たな職員への負担増は、結局どちらもうまくいかないという結果を招かないか実に心配です。
  どのように考えているのかお聞きしたいと思います。   

  3回目)
  今回、TPPの問題とヘルスバレー構想の問題を同時に取り上げたのは、決して偶然ではありません。
  菅谷市長2期目を終えるにあたって、これまでの8年間の到達点の上に立って、これからの松本市の進むべき方向性について、議論を求めたつもりです。
  私の不十分な準備故、そして時間が短いこともあり、十分な議論とならなかったかもしれませんが、少なくとも問題提起はできたものと確信します。
  地方自治体の在り方、仕事については、国政と無関係ではありません。
  それどころか、直接影響を受け、これまでの取組みが台無しになりかねません。  
  今回のTPP、そして消費税を引き上げ、社会保障は削るという最悪の悪政の「税と社会保障の一体改革」などは、その典型です。  
  地方自治体が独自の施策を進めようとしても、国の政治から制約を受けるばかりか、悪政の下請け機関にならざるを得ない情勢です。  
  (自民、民主の「2大政党」の下、)4年前、市長初当選の8年前を比べれば、明らかに市民生活の状態悪化は深刻です。
  そんな中、職員の皆さんが「福祉の心」を十分に発揮できるためには、現在の職員体制では、これだけのビッグプロジェクトを推し進めるだけのゆとりはないと思います。  
  また、松本市の経済政策的に見ても、他の施策との関係から見ても、進めるには無理があります。  
  今地方自治体に求められものは、国の悪政から市民の暮らしを守る防波堤としての役割です。
  それでも推し進めるというのであれば、他の施策と、職員へのしわ寄せなく、進められますか。
  しわ寄せはあってはならないと思いますが、そのことについての答弁を求めて質問のすべてを終わります。
  ご清聴、ご協力ありがとうございました。  
                                                   以上