赤羽正弘議員の3回目の質問の中での、TPPに関する部分

  TPPに関してはまだ事前協議が始まったばかりであり、何がどのように変わり影響が出るのかは解りかねるわけですが、この国の未来にかかわる事柄でありますので、交渉の進展により知り得た情報を国民に開示し、国民の合意の中で進めていくべき事柄であると思います。
  また、仮に批准された場合でも関税撤廃により工業製品の輸出が増えるといったプラスの保証は何もない中で、マイナスの影響だけは確実視されると思います。
  松本の経済に悪影響が出ないよう細心の注意をもって対処するように要望いたします。
 
  議会としても勉強してきたわけですが、 TPPの意見を見ると学者や政治家、マスコミなどが農業について発言しているが、が農業をよくお分かりになっていないように思います。
  農業の生産性を上げて田畑を大きくし、規模拡大をすれば外国に対抗できるように言っていますが、まあ無理でしょう。 田畑は二段にするわけにもいきませんし、夜作るわけにもいきません。大部分は1年に1回しか取れませんし、規模拡大にしても私の周りでは農業を縮小する人はあっても拡大しようなどという人は皆無です。
  試みに何人かに聞いてみました。 波田の水田農家、梓川の果樹農家、笹賀の野菜農家、皆さん今でも手一杯で、これ以上あってもやりようがないと言っていました。
  私もそう思います。
  よく中小企業が、日本人の類まれな感性と向上心、創意工夫などにより日本の物づくりの原点と言われていますが、農産物も同じことであります。品質で日本の農産物に勝る農産物を作る国などありません。
  例を挙げるならば、リンゴひとつとっても、葉摘みをし、球回しをして一つ一つ手をかけて、日を当てるようにする。 また、ブドウでも、粒抜きをして、粒がはしけ無いように、房を整える、傘をかける等をして、品質の良いものを作っている。スイカでもそうです。一つ一つみんな座布団を敷いて土にあたらないように、まんべんなく青くなるように、ということをして作っているわけですが、こんなことをする国は日本以外にありません。
 
  私たちの作る農地というのは一朝一夕でできたものではありません。田畑の石を拾い出しくろにみんな積み上げ、湿田は暗梁排水をしたり、砂を入れたりして作り易くし、なにより堆肥など有機質をたくさん入れて土を肥沃にして何世代にも渡って作り上げてきたものであります。 規模拡大すれば解決するようなものではないのです。

  今度のTPPの議論に関しては農業が大きく取り上げられて、農業農家が困るだけの問題のように言われていますが、実は農家は何も困らないという風に思っております。
  農家は自分で食べる物を自分で作ればいいわけですし、先ほどの答弁にありますように大部分は兼業農家になっています。 むしろ消費者に皆さんが自分達の生きていくための食料をどこからどのようにして確保しようとするのかが問われている事柄だと思います。

  私達はいろいろ感じ、知っているわけですが、日本の置かれた立場、グローバルな世界の動きや今日までの歩みなどから、現在の豊かな生活があるわけですが、それは貿易の自由化でありますとか、いろいろの仕組みの中でつくられたものであることも、よく知っております。
  ですがそれよりもっと大事なものがあることを長い歴史と伝統、自然、文化に育まれた日本らしさこそ守るべきものと思います。
  だからこそ農業の6次産業化については積極的に取り組んでいただきたいと思います。

  日本の国を一軒の農家と例えるならば、江戸時代は自給自足の専業農家でありましたが、明治に入り殖産興業の名の下、兼業農家となり、今では国民総生産の1.5%しか第一次産業のしめる割合はありません。要するに収入の98.5%は兼業収入なのです。今回TPPでそれをもう少し減らそうとしていますが、国が兼業農家なのですから、内なる農業も兼業化できる人はサラリーマンになったり、事業を起こしたり、経営の多角化を図り、より多くの人が兼業農家になり、兼業の収入により農業を支えながら農地を維持していくことが必要と思います。その意味で、兼業農家の育成も市の仕事の重要な一つでもある感じるところであります。