第19回
松本市平和祈念式典 市長式辞
幾多の尊い犠牲を重ね、数限りない深き悲しみの中で迎えたあの暑い夏から、69回目の夏が再び巡ってまいりました。
本日ここに、多くの市民の皆様のご参列、並びに、ご来賓各位のご臨席のもと、第19回松本市平和祈念式典を挙行するにあたり、あの苛烈を極めた戦いの中で、ひたすら祖国を思い、最愛の家族を案じつつ戦場に赴き、遠い異郷の地で亡くなられた多くの方々、さらには空襲による戦火の中で、また、原子爆弾による核の炎の中で、お亡くなりになられた多くの方々の御霊に対し、謹んで哀悼の誠を捧げます。
戦後、我が国は、国を愛するあまたの先人の皆様のたゆまぬご努力により、戦争による悲惨な廃墟の中から、そして深き悲嘆と絶望の淵から、産業・経済の飛躍的な再生・復興など、めざましい発展を遂げるとともに、国際社会においても、平和を希求する国家として、世界恒久平和の実現に向け訴え続けてまいりました。
しかしながら今なお、国際社会においては、民族並びに宗教問題や、経済格差に伴う貧困問題などにより、絶えることのない民族紛争や繰り返されるテロ行為、やむことのない人権抑圧など、極めて深刻で憂慮すべき事態が頻発しております。
また、核兵器の開発やテロリストによる核の脅威も現実的な課題となってきており、残念ながら未だ核廃絶に向けた明るい展望は依然として見えておりません。
このような中で、世界で唯一の被爆国であり、加えて福島第一原子力発電所の大規模核災害により、様々な形で国民の生活が脅かされ、今もなお、多くの皆様が昏迷と不安と失意の中での生活を余儀なくされている我が国が、核兵器の廃絶や、核の平和利用のあり方、戦争のない平和な社会の実現について、世界各国に向け訴えていくとともに、一人でも多くの方々に、今まさに起こっている事実を伝え続けて行くことが、私たちに課せられた責務であり使命であると確信するところでございます。
我が国は、日本国憲法の崇高な平和主義のもと、世界において確固たる地位を築いてきたわけでありますが、昨今の国内ならびに国外の政治状況などに鑑みますと、かつての「いつか来た道」への不安と懸念を、国民の心の中に思い抱かせる現状に、私自身、市民の平和な生活を守るための市政を担う者として、無視することのできない危惧を覚えるところでございます。
さて、このような時代背景の中で、我が松本市も、戦後の苦難を乗り越え、北アルプスの山並みと松本城に象徴される歴史と伝統に培われたまちとして、発展を遂げてまいりました。
これも偏に、苦節、幾星霜を歩まれた、故郷松本を愛する先人の皆様方のご努力の賜物であり、ここに改めて深く感謝を申しあげる次第でございます。
私は、先人の残した、この素晴らしいまちを、いかに次世代に引き継いでいくかを考える中で、特に、一貫して次代を担う子どもたちに対し、「平和の大切さ」や「命の尊さ」について、折に触れ忘れることなく考えて欲しいとの想いから、平和推進事業を積極的に行ってまいりました。
本日の平和祈念式典をはじめ、市内全中学校の代表者が参加する広島平和記念式典参加事業、小中学生平和ポスター展や市内に残る戦争遺跡等の紹介パンフレットの配布など、多くの子ども達が参加し、直に触れることにより、平和について常に関心を持ち、家族や友人を思いやるなど、身近で出来ることを行動に移すきっかけとなればと考えております。
これら多彩な取組みを行う中で、平成23年に松本市において開催されました「国連軍縮会議」をきっかけとして、多くの市民の間に芽生えた平和意識を連鎖反応的に、さらに高め、強めていくことが不可欠であると考えておりました。
まさにこの様なとき、これまで被爆地である広島市と長崎市において交互に開催されてきました、「平和首長会議国内加盟都市会議」の第4回目となる会議が、本年11月10日から二日間にわたり、地方都市松本市において初めて開催されることとなりました。
平和首長会議には、世界160か国や地域の6206都市が加盟しており、このうち、日本国内では1491都市が加盟し、核兵器の廃絶と世界恒久平和の実現に向けた取組みを行ってきております。
この国内加盟都市会議が松本市において開催されることにより、これからの松本市を担う多くの若者たちが、平和への想いやその取組みを発表する機会を得て、世界の全ての人々がお互いを信頼し、尊重し合う平和な未来の実現に向け、より深く、あわせて、より広く考える場となることを強く願う次第であります。
また、松本市の平和への取組みを恒常的に展示し、学ぶことが出来る場所が必要との思いから、これまで中央図書館に平和資料コーナーを設けてまいりましたが、これに加え、9月に新たにオープンする新文書館にも、平和資料コーナーを設けることとしております。
私は、このような平和への様々な取組みを継続的かつ積極的に行うことにより、市民の皆様が平和への想いを持ち続け、絶えることのない平和の連鎖への意識が強まり、次の世代へと繋いでいくことが出来るものと確信しております。
本日の式典では、例年同様に小中学生の皆さんを始め、ご遺族の方々まで、年代を超え、多くの市民の皆様が、永久なる平和への想いを込め、一羽一羽、丹念に折られた折鶴を、広島から贈られた「被爆アオギリ」が見守る中、平和祈念碑に献呈されます。
その折鶴と平和祈念碑を前に、私たち松本市民は、戦争の惨禍を後世への教訓として語り継ぎ、風化させることがあってはならないと、決意を新たにするとともに、今、市民一人ひとりが平和のために行動を起こすこと。また、平和の道を歩み続けることを、ここに改めてお誓い申しあげる次第でございます。
結びに、本式典の運営にあたられました実行委員会の皆様方に心から感謝を申しあげ、式辞といたします。
平成26年8月15日
松本市長 菅 谷 昭
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