2008年11月28日  

  松本市長  菅谷 昭  殿


2009年度 松本市政に対する政策・予算要求


松本市への政策・予算要求を発表するにあたって
― 持続可能な今後の松本市政のあり方をふまえて ―

 日頃より市民のくらし福祉向上のため、数多くの制約や困難の中、市政運営に献身されておられますことに、まず最初に心からの敬意を表します。
 菅谷市政二期目の船出、命を大切にし、健康・福祉の更なる充実、暮らしを守る新たな公約実現に向け、「健康寿命延伸都市・松本の創造」を新しい政策目標に掲げ、「健康に直接かかわる分野だけではなく、経済・環境・教育など、各分野において、健康寿命を考えた総合的な取組みを市民総ぐるみで展開し」「経済の活力と、環境の良さ、暮らしの安心を伴った、バランスの良い、持続可能な松本のまちづくり」(予算編成方針)の推進に向けての奮闘に期待します。

 生活苦、格差と貧困の拡大は、昨年と比較しても、さらに深刻の度合いを強めています。  
 加えて、後期高齢者医療制度の導入、年金からの容赦ない天引きで、「これでは生活ができない。」「おでんの煮汁を何度も使っている。」など、の声が寄せられています。
 中小業者の皆さんからは、「お金を借りても、結局返せない。何よりも国保税などの社会保障費など直接の負担の軽減を」の声に代表されるように、改めての負担軽減が急務です。
 加えて、「100年に一度」といわれるアメリカ発の金融危機の日本経済への影響は、予想以上に深刻、そして松本市も例外でありません。
 市内大手の企業の「260人」のリストラ計画をはじめ、すでに人員整理を行った企業も現れ、さらに年内にリストラ計画を明らかにしているところがあります。
  年の瀬を前に、失業を強いられたり、このままでは年が越せない中小業者が出るのは必至、融資枠の拡大にとどまらず、中小業者への直接支援策が必要です。  
  「生きにくくなっている。」状況は、さらに進行しているのが実態です。  

 そうした経過を踏まえるならば、松本市でも、これまで求められた負担軽減策に加えて、新たな経済危機から、市民のくらしと営業を守り、「外需だのみから内需主導へ」経済の体質改善を、本格的に歩み始めることが求められます。
  「内需主導」ということになれば、経済政策の抜本的な転換が必要です。
  内需をささえているのは、GDPの55%の規模をもつ個人消費と、その需要に応えるための生産です。
  雇用を守り、家計を暖め、国民のくらしをささえる経済政策こそ、内需主導で日本経済の体質を変え、強化するという、いま緊急に求められている景気対策です。

 この間、新自由主義路線、「民間感覚」の地方自治体への持ち込みの結果、指定管理制度の導入による民営化の進行、規制緩和による官公需の低価格、低落札、正規職員の削減と嘱託・臨時職員の増大、合併の推進などなどは、結果として「内需拡大」地域経済の活性化と逆行とも言える事態が進みました。  
  それらを見直し、@安心できる社会保障、A農林業の振興、B中小企業の応援そして地域経済の再生、又C地方自治体としても安定した雇用の保障が必要です。  
 例えば、社会保障の拡充は、直接市民のくらしをささえ家計を温める、将来不安を解消する、そして、医療、介護、福祉などの各分野で新たな雇用を生み出し地域経済を活性化させるという、「一石三鳥」の経済効果もあり、景気対策としても大きな力になります。  
  AからCの他の施策も同様です。

 以上のように、「持続可能なまちづくりのための行財政基盤の強化」のためにも今こそ、松本市においては、医療福祉、農林業、環境、雇用での内需拡大策への根本的転換、見直し、充実が求められます。
  思い切ったこれまでからの施策の転換、今までの延長線上でない予算の編成が必要です。  

 以下に掲げる、政策・予算要求を来年度の予算編成に盛り込まれることを切に要望します。

日本共産党・しがの風          
会派代表  池田国昭     
倉橋芳和     
両角友成     
南山国彦     
犬飼明美     
澤田佐久子     

 


― 地方自治体の役割にふさわしいまちづくりのための9つの施策 ―

地方自治体で、求められる内需拡大・地域経済活性化のための施策


 1、生存権は政治の原点 、憲法を生かし平和を守る市政
 
 市民生活は3年連続の負担増、7年から比べ国民全体で年間13兆円の負担増、累積では合計50兆円に及びます。 市民税・所得税の負担増はもちろん、それ以上に国民健康保険税や介護保険料の負担増が深刻な事態になっています。一般会計や基金からの繰り入れで国保税・介護保険料を引き下げる。 低所得者、弱者対策への減免対策の充実をさらにはかる。
 生活保護基準以下のくらしを強いられる高齢者・若者が増えています。市の責任で実態調査を行い具体的な対策をとる。
  昨年に続いて「福祉灯油」を実施する。
  憲法を遵守し、市政に生かす。 憲法9条の改定に反対し、日本を「戦争する国」にしない。 過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する「靖国史観」を許さない。 日本の侵略戦争の事実を正確に教える小中学校での平和教育をはじめ、あらためて平和行政を市政に位置付ける。戦争の歴史や戦跡の保存を松本市として積極的におこない、歴史の事実を風化させない。    
  国民保護計画にそった訓練の実施はおこなわない。  


 2、安心できる社会保障を築き、市民のくらしを支え、市民の健康・福祉を守るまちづくり
 
  「安心して生き、老いる」ことができるように、必要なサービスを受けられるよう施策の充実をはかる。
 後期高齢者医療制度の廃止を求める。広域連合に「補助金」などを投入して保険料の軽減や減免制度の拡充をはかる。 福祉医療制度を受けている高齢者については、不利益が生じないようにする。
  介護保険については、保険料区分のさらなる細分化の実施。基金を取り崩して負担の軽減をはかる。施設不足の解消、介護職場の待遇改善(賃金助成など)をすすめる。要介護認定者が障害者控除を受けられるように、制度の周知をはかる。  
  同居家族のいる場合の訪問介護サービスの生活援助の提供については、これまでどうり「必要な」サービスの提供が受けられるようにする。特にケアマネジャーが自信と誇りを持って仕事ができるように行政としてサポートする。
 受益者負担を原則とした障害者「自立」支援法については、実態調査に基づき、介護保険同様独自補助を充実するとともに、報酬支払い方式を日割り制から月額制にもどすなど、国に向かって法の抜本的見直しを強く求める。
 利用料軽減策の実施、自治体からの仕事をふやすなど仕事を確保し、松本市独自の施策をさらに充実させる。
 国民健康保険証はまさに「命綱」です。引き続き、お金が払えないことを理由とした保険証の取り上げ、資格証明書・短期保険証の発行はやめ、安心して医者にかかれる環境をつくる。
  未交付のなかに発行すべき対象者がいないか調べる。郵送の方法もふくめて全世帯に発行する。
  特に18歳未満の子どもの世帯には、正規の保険証を発行する。 国保税の引き下げをおこなう。  
  生活保護申請時、車の保有、預貯金などの取扱は生活保護法の精神に則り、かつ実施要領にそって保護が受けられるよう誠実な対応をすること。 そのための職員研修を充実させる。申請書は窓口に置き、申請意思のある人には無条件で申請書を渡す。相談者の人権・プライバシーをまもる相談スペースの確保。通院移送費は6月10日の厚生労働大臣の「見解」に沿った実施をする。  
  火災の場合のみならず、緊急避難的に入居できる「福祉住宅」など優先入所のための施策を充実する。


  3、命を大切にし、子どもと教育を守り、子育てを支援する市政

  「教育は、子どもたちと父母・国民に、直接に責任をおっておこなわれるべきものである。」この教育の条理を、教育政策の基本にすえる。
  「つめこみと競争」をさらに助長する全国学力テストは、実施しない。
  いじめの松本市の独自の調査基準に沿って、いじめの事態を掌握するとともに、国の「競争」をあおる教育政策の根本的転換とともに、教育現場での実践や教育学の成果を踏まえた取り組みをすすめる。      
  子どもの基礎的学力を保障し、人間形成を助ける学校づくりをすすめる。
  不登校児童対策をきめ細やかにおこなう。  
  中学校までの「30人学級」の早期実現。  
 義務教育における父母負担の軽減。 学校給食センターの民間委託はおこなわない。  
  灯油の値上がりによって、子どもたちが寒さを我慢することがないよう予算付けをおこなう。    
  家計がいっそう苦しくなる中、授業料などの負担増や滞納問題が深刻化しています。そのため、厳しい経営を迫られている私立学校に対して、私学助成をさらに拡充する。
  障害児のライフステージを通じた一貫した療育が受けられるように療育システムを構築していく。就学、就労などの相談支援事業の充実のために総合相談窓口となる療育センター機能をもった拠点を設置する。 OT(PT)・心理・保育士・教員等の専門スタッフを配置、早期療育と5歳児健診の実施、発達障害児の集団療育の実施などをとおして松本市の障害児療育の充実を図る。
  特に発達障害の子どもの療育は緊急の課題となっており、保育所、学校現場との連携も図りながら、療育を進める。 また、長野県が進める発達障害者支援センターとの連携が進むように働きを強める。
  児童扶養手当の充実を国に求める。軽度発達障害児教育に関する教職員の研修の機会を増やす。 貧困と社会的格差の広がりから子どもをまもる取り組みを強める。 安心し,ゆとりを持って子どもを生み育てるための「子育て支援」策を引き続き進める。      
  乳幼児医療費など、福祉医療の所得制限なしの窓口無料化の早期実現と対象年齢を中学校卒業まで引き上げる。公費負担による妊婦検診の回数を14回にふやす。深刻な産科医師不足対策を強める。 出産育児一時金の増額をおこなう。未満時保育、障害児保育など松本市のよき保育行政の歴史と伝統を守り、独自の配置基準に見合った人員配置と施設整備をすすめる。  
 保育園での正規職員を増員し、当面嘱託職員の採用期間の延長をはかる。
 放課後児童クラブ事業は「安心して働け、子どもの成長を支える」子育て支援策にふさわしい位置付けを明確にし、運営基準のさらなる充実。 指定管理者制度に移行しても「公設公営」の今までの松本市での実績、経験を後退させる事なく、関係者との協働で、より質の高い発展したものに作り上げていく。
 学童クラブ(放課後児童育成クラブ)への補助を増額する。
 放課後子どもプランの推進にあたっては、放課後児童クラブ事業と放課後子ども教室の違いと役割を明確にして各々の充実をはかる。  


 4、市民の生命・財産を守るまちづくり

  「地域福祉力」は「防災力」の位置づけで、地域でのつながりを生かした地域自主防災組織の確立・充実をはかる。防災マップの周知と充実を徹底する。  
  防災拠点としての出張所の位置づけを高め、学校など公的施設との連絡・通信網の整備、拡充をする。
  人的消防力の強化など、広域連合に、消防体制の強化を申し入れる。
  消防の広域化は、やめる。
  消防団員、消防署員の自身の安全確保対策を図るとともに、引き続き消防団と団員の待遇改善をすすめるとともに、団員のさらなる確保につとめる。  
  開発や土地利用の変更にあたっては、災害にどのような影響があるかを事前にチェックする 「防災アセス」を導入する。  
  免震構造を持つ新たな防災センターの設置を速める。  
  まつもと市民芸術館内の防災関連施設は、音楽練習室など市民の利用に供する検討を始める。


 5、地域で、誰もが安心してくらせるまちづくり
 
 生活者の目線に立った安心できる「まちづくり」をめざし、市民との協働をすすめる。
  交通弱者の交通手段の確保を中心に据え、環境問題を考慮し、新公共交通システムを住民の意向を踏まえて構築を急ぐ。 細かな地域での懇談会を開催し、多様な意見を聞く。
  松電バスと市独自の乗り入れバスの組み合わせ、デマンド交通の導入、それが出来ない場合の高齢者へのタクシー利用補助などの対策を考える。
  パーク・アンド・ライドをさらに推進する。
  まちづくりそのものを、開発優先から、防災を重視した住民参加型、子どもの意見も取り入れてすすめる。
 指定管理者による徴収率アップに名を借りた水道料金の強制的な取立てはしない。 県の水道料金減免に沿った割引の適用。  
 高齢者・低所得者や子育て世代・若者が市営住宅並家賃で暮らせるよう、民間住宅入居の際の家賃補助制度を新設するなど、「住まいは福祉・住まいは人権」の観点で住宅行政を充実させる。
  多重債務やサラ金問題など消費者問題に係わる総合的な「くらし相談窓口」を設置する。


  6、農・林業を再生し、地域経済活性化策として本格的に位置づける市政
 
  「食料主権」「食糧自給率の引き上げ」「地産地消」「農産物の価格保障と農家の所得保障」対策を内需拡大として本格的に位置づけ、市独自の対策を強化する。
  遊休農地に対する実効ある対策の強化。 大規模農家、家族農業を支え、新規就農者育成支援と後継者支援施策を拡充する。 安心・安全な食糧確保の観点からも地元農産物の給食材への供給など地産地消をすすめ、松本市の農業を守り、発展させる。  
  地域資源の活用と市民の健康を守る地産地消、食育の推進、食の安全、環境保全を基本にした仮称「松本市食と農のまちづくり条例」を制定する。
  有害鳥獣対策は県とも連携し広域的な対策をすすめると同時に、里山整備をすすめ、動植物の生態系保護に努める。  
  適切な森林整備と国産材の供給体制を確立し、地元産の木材を使った公共施設や住宅の建設などの林業・木材産業の再建をはかる。  
 木質バイオマスや森林セラピーの推進など山村地域での新たな事業を促進する。林業労働者の確保と林業技術の継承を重視し、持続的な経営管理にとりくむ。 間伐作業など森林整備のため必要な林道(作業道)の開設・改修をおこなう。


 7、内需主導の産業政策を確立し、地元業者の経営、雇用と労働条件を守る
 
  足元工事を増やし、地元業者の仕事確保をすすめる。
  また、最低落札価格制度の見直しで工事の質と業者の経営を守る。
  企業誘致にたよらず、今ある産業の維持発展のため「中小企業振興条例」を制定し、すべての市内の中小企業の実態調査を市の責任で行い、中小零細企業、小売店の融資・人材・技術・市場の各分野にわたって直接支援できる体制を整備する。
  ものづくり技術の継承、産・官・学連携のものづくり・技術開発は地場産業との連携を図り、新製品の販路・流通までの支援をおこなう。  
  豊かな観光資源を生かし、地域の特性を生かし、活性化につなげる。  
 市内の雇用労働の実態調査を行い、非正規雇用や請負労働者の実態を把握して「安定した雇用」と「人間らしく働ける労働条件」の確立をはかる。  
  ワーキングプアや失業者のために、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの生活支援を強める。  
  また、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設する。   
  ニートとよばれる若者に対して、より人間らしく成長し働けるよう、相談、教育、社会体験や職業体験、就労などの支援を「継続」して行なう。  
  臨時職員・非正規職員の賃上げ、労働条件の改善をはかる。


 8、地球環境を保全し、持続可能な循環型環境都市をめざして

 環境基本計画と一般廃棄物計画をリンクさせ、本格的な「ゼロウエイスト」自治体を目指す。
  ごみ「焼却中心主義」から、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進、特に「発生抑制(リデュース)」に努め、プラスチック類の再資源化など限られた資源の有効活用をさらにすすめる。  
  「ごみ有料化」はしない。 買い物袋持参運動を進める。  
  廃棄物の不適正処理や保管、不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけ、違法行為の「やり得」 を許さないために、違反者への「厳格な指導と監督」を県にもとめる。  
  「県廃棄物条例」にたいして、廃棄物の発生抑制と県民参加につながる条例となるよう県に求める。  
  「脱焼却・脱埋立て」の具体化をめざし、市としても条例制定など市の独自施策の道を確立する。  
  温室効果ガス(CO2)削減など地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、「松本市地球温暖化防止条例」を制定する。  
  市として、地球温暖化抑止策を検討・実施するための「地球温暖化抑止対策室」を設置し、事業展開を積極的に推進する。  
  BDF(バイオディーゼル燃料)化のさらなる拡大や太陽光発電、バイオマス、雨水利用、小規模 地域水力発電所など自然エネルギーの開発を促進し、ペレット燃料の生産やペレットストーブの公共施設への設置などについては市としての財政的支援を強化し、具体化をさらにすすめる。  
  市内のすべての小中学校に「ソーラーパネル」を設置し、子どもたちの環境教育をすすめる。


 9、「市民が主人公」「納得と合意」で市民と行政が協働してつくるまちづくり
 
  波田町との合併問題や大型公共事業などは、十分な市民意向確認をへて結論を出す。
  松本城のお堀復元・道路拡幅事業はいま必要かも含め、全市民対象の意向確認調査を行い、市民の納得と合意を重視する。  
  まつもと市民芸術館の運営については、市の財政状況と市民生活の実態を考慮しながら、自主事業の縮小、芸術監督制度の見直しなどを何よりも全市民のくらしを守る観点をすえることを原則に見直しを進める。  
  市民のだれもが、芸術文化を享受でき、明日へ生きる希望がわいてくるような、文化芸術行政が求められます。
  各種審議会へ女性の登用率を高めるなど男女共同参画をすすめる。  
  合併4地区については、新市建設計画に沿い、地域の伝統・文化を守るまちづくりを進める。
  地域協議会・地域審議会での十分な協議を重ね、その地域が取り残されることがないように、またこれまでよりサービス低下がおきない配慮を持って進める。  
  予算編成過程の公開・意見集約は、市民と行政との協働の画期的な成果として今後も実施し、パブリックコメント等の活用で、市民みんなでまちづくりを進める観点からの予算編成を行う。  
  引き続き市の財政状況をはじめとした行政情報の公開を積極的に進め、「参画」「納得」「協働」の市政運営で、「市民が主人公」のまちづくりをおこなう。
 保健・医療・福祉、社会教育、文化・芸術、環境保全などの分野でのNPO活動を支援し、協働をすすめる。

以上