議会最終日 本会議で述べた意見
日本共産党・しがの風を代表して意見を申し上げます。
主に議案第43号「平成21年度松本市一般会計予算」、議案第56号 「松本市新松本工業団地事業特別会計」について、関連する条例にも触れながら、意見を申し上げます。
今2月議会は、世界的に100年に一度の経済危機の中で、来年度予算を審議する重要な予算議会となりました。
国会のみならず、どこの地方自治体でも、いわゆる地域経済の活性化といわれる課題、そして景気回復策がどうあるべきか議論がされた議会でした。
その際重要なのは、従来型の景気対策ではなく、地方自治体においては雇用を守ることおよび、社会保障の充実、そして内需拡大、住民のふところを暖めて景気回復をするこのことが非常に重要な課題となっています。
さらに、景気の悪化と回復という点で言えば、それは企業だけの問題でなく、国民市民の暮らしぶりの悪化とその回復及び負担軽減との関係で見るべきものです。
仮に企業の景気が回復しても、それは 昨年までのいわば新自由主義的な景気の回復を、市民が望むものではありません。
そうした点から平成21年度予算案を見ると、まずこれまでにないいくつかの前進面を上げることができます。
1つは、市長2期目の公約である健康寿命延伸都市、及び3Kプラン、その中でも妊婦検診14回については、地方交付税措置がありながら、全額公費負担をしない自治体がある中での14回の公費負担などは、子育て支援策として評価点としてあげることができます。
また、社会福祉協議会を窓口とした新しい貸付制度、その中でも生活保護関連の、上限15万円の融資は、全国に発信できる中身と確信します。
足元事業費の拡大と最低落札価格に関連しての入札制度の見直しも評価点です。
介護保険料は、50円ですけれども、この引き下げも貴重な中身として紹介しておきたいと思います。
そのほかにも、いくつかありますが、しかし、本格的な雇用破壊が来年度、この3月末から4月にかけて予想される中での対策については、残念ながら思い切った対策が見られないということも指摘しなければなりません。
その1つは、労働相談にかかわって、松本市が独自に設置している労政課の予算関連では、残念ながら昨年と比べての予算増が見られません。
また、今、生活保護申請者が増えている中で、そうした対策への人員体制強化の点では、ケースワーカーの1人員増という話が伝わってきていますが、仮に国の基準をクリアーしているにしても、十分とはいえません。
さらに、昨年12月議会で指摘した「官製ワーキングプア」として問題となっている、保育分野での嘱託職員問題をはじめとしたこれらの問題の解消に向けた取り組みの具体化は見られません。
そのほかにもこの予算案については、評価点も、問題点もいくつかありますが、 今回は、その中で特に目立つものとして、松本市新工業団地建設事業(以下「新工業団地」と略しますが)について述べたいと思います。
新工業団地事業は、振り返れば、H17年ごろからこの議会本会議で議員からの提案という形で話題となってきました。
「工場を誘致しようにも工場団地がない。」
「それどころか、松本市から、工場が逃げていってしまう。景気の回復が見られる中、団地建設は急務」
ということで、話題となってきたものでした。
その後何度かの議会議論を経て、この新工業団地の建設構想が語られ、いよいよ来年21年度から、その実行に向けた本格的な取り組みをする段階として、今回 特別会計の設置条例と、そして特別会計予算が出されてきたものでした。
そして、この計画がいよいよ具体化の段階に入る中で、ご承知の通りの経済状況となったわけです。
言われるとおりの「100年に一度の経済危機」ということです。
「100年に一度」ということは、今ここにいる私も含めて誰も経験したことのない、そういう意味での経済危機ということです。
まさに、どうゆう展開になるか先が読めない。
でも、はっきりしているのは、世界の各国がその国なりに経済対策を行っている中で、 日本だけは、いまだに無策といえる状況です。
これまでの外需頼み、輸出関連企業の売り上げに依存した景気回復策では、国民、市民の暮らしぶりはよくなるどころか、逆に貧困層を拡大し、「市民を犠牲にしての景気回復」と、以前菅谷市長がいみじくも述べたように、こうしたやり方が破綻したのが今回の事態です。
(そして、)今回の経済危機は、単なるこれまでの過剰生産、設備投資からの循環型の景気悪化ではなく、すなわち、これまでのように、一定の時間が経過し、在庫整理が終われば、また自然に景気が上向くというほど単純なものではないというのが、専門家の見方であり、私もそう思います。
いわばそうした先行きが見えないこの経済危機の中で、これまでのように優遇策で工場を誘致し、雇用を拡大、税収を増やすというこのやり方が、また工業ビジョンで検討された松本市の経済構造を作れるものなのかという点から見ても こうしたやり方が通用するのか。あらためて慎重な対応が必要なのは、ごくごく自然なことです。
以下、先日13日におこなわれた経済環境委員会の審査で、今回の新工業団地計画に関して明らかになったことも紹介しながら、意見を続けたいと思います。
1つは今の時点で、進出を予定希望している企業は12社。内訳は、2社が市外で、残り10社は市内ということです。 また、12をさらに内訳すれば、5社はすぐにでも出たいというが、残り7社は、景気と誘致条件次第ということで、必ずしもすぐに出てくるわけではないということがあきらかになりました。
また、どれだけの雇用が確保できるか。 その見通しは、これまでの例から、面積あたりの計算によれば、600人。
今私が紹介しているのは、経済環境委員会での議論の紹介ですので、今しばらく容赦願います。
「市内が10社」と聞いて、雇用が本当に増えるのかどうかという疑問が出ています。
3番目、今回の企業誘致は、「新臨空」のように、造成後、最初から2、3年で売り切るのではなく、長期に視て 始めは全部売れなくても、いわばストックとして残しておくという中身も含まれていました。
そして、何よりも本会議で明らかになったように、景気はまさに直下のごとく悪くなっている中でも、「だからこそ計画通りにすすめる。」と、実に不安要素を含む中身です。
明らかにこの経済状況との関係では、踏みとどまっての再検討が必要ではないでしょうか。
ここで私は、 平成13年11月13日付けの 松本市商工業振興審議会の「松本市の工業基盤充実策について」という答申書をご紹介したいと思います。
この平成13年11月13日付けの「松本市の工業基盤充実策について」という答申は、 ご承知の通り、「新臨空」が、当初45ha、3箇所の予定が、1箇所しかできないという中で、今後どうするかということについて、当時の市長が諮問し、それに対しての答申が出たものです。
簡潔に紹介しますと、「新臨空」が終わった後の「将来の企業誘致と産業団地のあり方」に関しては、 この当時でさえ、バブルが崩壊した当時ですが、長期化する経済不況の中で、企業が新たな投資を行うには、きわめて条件が悪い状況であり、今後の産業団地の建設は、経済動向を見守りながら慎重に対応すべきだ。
こうゆう答申が出ています。
また、開発の手法についても、従来の行政による団地造成の方法だけではなくて、民間主導を基本とした方法も検討すべきだ。 と書かれていますが、今回出された案が、必ずしもこの答申を十分に踏まえた上での中身になっていない事を指摘せざるを得ません。
それは、この「答申書」を求めたときに、(商工課の手元にはなく、)倉庫に行って見つけてきた。いわば、棚上げ状態で、倉庫にしまわれていたということからも、言えるのではないかと思います。
最後になりましたが、新臨空産業特別会計では、現在もまだ残っています。
残り1社のリース区画部分1つを残して、やっと「完売」することができましたが、平成3年から計画されたこの新臨空の計画、H15年には完売予定が、さらに6年を越えていまだにこうした状況。
こうした事情等を考えれば、これだけの経験したことない経済情勢の中では、紹介したように、議会への報告にも書かれていますが、文字通りの指摘されている慎重さが必要です。
民間の場合は、すでにいくつかの企業が、自治体の土地を買っても、建設は先送りする。
県内の大手の企業も下方修正しているのは皆さんご承知の通りです。
あまりにリスクが大きすぎるこの事業は、あらためて立ち止まって考える必要があります。
そうした教訓は、市長は、(先日の議会本会議で、)工業ビジョンの策定の経過からも、PACDサイクルが必要といいましたが、すでに「新臨空産業団地」の関係からも、その教訓は明白ではないでしょうか。
このまま立ち止まることなく特別会計が始まることを一旦は止めるということで、私たち会派は、この予算には、反対の態度を表明したいと思います。
今求められているのは、健康寿命延伸の都市づくり 、3Kプランによるまちづくりです。
そして、社会保障の充実と負担軽減です。
国保税の問題では、先送りとなりましたが、 重ねて 市民負担増となるようなことがないように、それは、貧困層の拡大、市民生活を困難にし、 なによりも 健康、国民皆保険をも崩壊させる道でもあります。
このことを最後に強調して、意見のすべてといたします。
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