「要介護認定制度の見直し」に関する質問

2009年2月12日   池田国昭  

 この4月から、要介護認定制度を見直し、新たな認定方式に全面的に移行することが計画されています。
  今回の見直しは、一連の認定作業のすべてにわたるものとなっています。
  この間、関係者からは、現行の認定制度の最大の問題として、利用者(申請者)の実際の状況と認定結果との大きな乖離が指摘され、今回の見直しは、そうした認定をめぐる様々な問題を前に改定を迫られた側面もありますが、実際は改善するどころか、いっそう矛盾を拡大させるものとなっています。
  当広域連合では、いわゆる「二次判定」に関わる事務だけではありますが、調査、一次判定に関することも含めながら、この改定に対する見解と今後の対応についてお聞きします。

 今回の見直しの概要は、
@ 認定調査項目と調査内容の変更
A 一次判定コンピュータプログラムの変更
B 認定審査会による二次判定方法の変更
  の3点で、先ほど述べたようにすべてにわたるものとなっています。

 @ まず、認定調査項目と調査内容の変更についてですが、 調査項目を、現在の82項目から14項目を削除し、精神・行動障害や社会生活への適応を問う6項目の追加しました。 削除される14項目の中には、「火の不始末」「暴言・暴行」「飲水」など認知症の状態像を判断する項目や命に関わる項目が含まれています。 また、削除項目のうち10項目は「主治医意見書での代替が可能」としていますが、主治医意見書の様式の変更は殆どなく、認定に重要な情報が伝わらないおそれがあります。 また、認定調査員による「判断」ではなく、2〜4項目の選択肢からの「選択」を徹底することが、「認定調査員テキスト」(マニュアル)に示されています。全部でP165厚いものです。(紹介する) それを見ると、「自立(介助なし)」を選ぶよう誘導する内容がいくつか見られるのが特徴です。 これを見た認定調査員からは、「これでは軽度に判定される人が増える」「本人の状況が一次判定結果や二次判定にきちんと反映されるのか不安」との声が出されています。  

 これは、今後、各地方自治体で改めて問題になろうかと思いますが、

 A2つ目の 一次判定ロジック(コンピュータプログラム)については、 「樹形図」「要介護1相当の振り分け」「運動機能の低下していない認知症高齢者」などの判定ロジックについて大きな変更が行われました。 「運動機能の低下していない認知症高齢者」については、今までは、当広域連合にかかわる二次判定(介護認定審査会)において、一次判定で出された要介護状態区分を1つまたは2つ重度に変更する方式がとられてきましたが、今回の見直しでは、二次判定による判断ではなく、認知症高齢者についてコンピュータで算出される「基準時間」を積み足すという、一次判定ロジックにくみこむ方式になりました。 また、「要介護1相当」の要支援2または要介護1への振り分けについても、二次判定(介護認定審査会)で行われていたものが、一次判定に組み込まれました。 いずれも、いわば機械的に、できるだけコンピュータ内で処理をする方式に改めるという内容です。

 B そして3つ目に、当広域連合に関係する認定審査会による二次判定方法の変更については、 今までは、検討資料などで示される「状態像」にもとづき、二次判定で必要な変更が行われる内容でしたが、新たな方式では、「状態像」ではなく、コンピュータが算出する「基準時間」で推計される「介護の手間」を判定材料の基本におくことが強調されています。
  そして、認定審査会が一次判定結果を変更することが認められる理由については、統計的推計になじまない部分について、「特記事項」または「主治医意見書」に記載されている事柄を根拠に変更を認めることができるというものです。 さらに、重度・軽度変更の指標となる資料、「中間評価項目得点表」のレーダーチャート、「日常生活自立度の組み合わせ」による介護度の分布資料など、全国的に蓄積されたデータに基づく「統計資料」が「介護認定審査会資料」から削除されなど、二次判定において一次判定の結果の妥当性を判断する材料が大幅に削られています。
  介護認定審査会において、一次判定結果の妥当性について検討する材料が著しく制限され、状態像と乖離のある場合に、適切な判断・救済が出来ない可能性があることです。 介護認定審査会は、「介護認定審査会資料」をもとに適切な判定結果を導き出すよう検討を行いますが、新たな方式では、その検討材料となる資料の中から状態像を判断しうる項目が大幅に削除されるため、一次判定(コンピュータ判定)によって算出・推計される「介護の手間=要介護認定基準時間」のみだけの機械的な判断を強制されることになりかねません。

 このように、いくつかの問題点にふれましたが、こうした、見直しは何をもたらすか。

 第1に、これまで以上に懸念されていた乖離が拡大し、「軽度判定化」がすすむということです。
  実際、厚労省が今年1月に新たに公表した資料(昨秋実施した第二次モデル事業の結果)によれば、新たな方式の二次判定によって全体の2割(20.1%)が「軽度に判定」される結果が報告されています。 要介護1では18.7%が「軽度に判定」されており、全員予防給付に移されることになります。要支援1では3.8%が「軽度に判定」されることで、「非該当」となり介護保険サービスの対象から外されることになります。 最も重度である要介護5では、18.7%が「軽度に判定」されるという結果が出ています。
  厚労省は、「新たな方式に移行しても、統計上差異は生じない」と説明していましたが、今回の認定制度の見直しが、利用者の介護や生活に多大な影響、そして事業者にも大きな影響を及ぼすことは明らかです。

 今回の「要介護認定制度の見直し」の本質は、ずばり、介護給付費の抑制にあると言って過言でありません。

 今回の見直しは、これまでの問題を解決するどころか、現状の制度矛盾をいっそう広げることになりかねません。

 そこで、お聞きします。  
  いくつか指摘しましたが、今回の見直しに関しての、見解と今後の対応についてお聞きします。  
  また、すでに、実施の凍結を求める団体の動きも有りますが、当広域連合としては、そうした対応も含めて、どうするのかお聞きします。