2007年11月30日
松本市長 菅谷 昭 殿
2008年度 松本市政に対する政策・予算要求
松本市への政策・予算要求を発表するにあたって
― 新たな次の4年間の松本市政のあり方をふまえて ー
日頃より市民のくらし福祉向上のため、数多くの制約や困難の中、市政運営に献身されておられますことに、まず最初に心からの敬意を表します。
市制100周年の年と「結」の年が重なる中、「新たな百年への第一歩 市民とともに 次代につなぐまちづくり」に向け、予算編成作業が行われています。
「誰もが安心して生きることができ、安心して老い、安心して病を得、安心して最期を任せられるまちづくり」
「ひとりひとりの『いのちの質』を高める、総合的な施策の展開」で、「誰もが、生きる喜びに満ちた、充実した生活が持続できる」 そんな新しい松本市づくりが始まって、早4年が経過しようとしています。
「あんしん」と「いのちの質」をキーワードに発足したこの「総合的な施策」は、健康づくり、危機管理、子育て支援の3Kプランの推進、基本構想2010・第8次基本計画に位置づけられ、これまでにない「市民が主人公」の市政、市民の願いが叶い、くらし福祉優先の政治が前進してきました。
しかし、そうした松本市政の前進が図られる一方で、自民公明政権による住民と自治体いじめの悪政の影響は、4年前以上にさらに深刻になっています。
市民の所得収入の落ち込みと偏り、市民税・国民健康保険税や介護保険料を収められない実態、生活保護、就学援助受給者の大幅増など各種指標が示すように格差社会の進行、貧困の拡大は、高齢者や子どもたちなど社会的弱者に集中するのみならず、全ての階層の人たちをも襲う、これまでにない事態を生んでいます。
一生懸命働いても生活が成り立たないワーキングプアが増大し、そんな中、明日への生きる喜び、希望を失い、自らの存在そのものを自ら絶つという深刻な事態がこの松本市でも進行しています。
こうした自ら命を絶つ行為を、「自己責任」論だけで解消することはできません。
経済不況によるものだけでなく、国の制度的悪政の結果生まれてきている、これら格差と貧困問題は、地方自治体の課題として避けて通れないものとして浮上してきています。
政府は、この上さらに、後期高齢者医療制度、生活保護の切り下げ、消費税の増税など更なる負担増を押し付けようとしています。
生存権と平和は、政治の原点です。
「人間らしい暮らしと明日への希望」が持てる社会づくりは、政治の責任です。
「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ 総合的に実施する役割を広く担うものとする。」
地方自治法第1条2項は、このように地方自治体の役割を明確にしていますが、格差解消、貧困問題の解決は、いまや地方政治においても喫緊の課題となっています。
市民生活の最低限の暮らしを支える施策があってこそ、初めてこれまでの4年間の実績が生きてきます。
参議院選挙後、自民公明政治にノーの審判が下り、政府与党からの後期高齢者医療制度の「凍結」方針、インド洋からの自衛隊の撤退、児童扶養手当削減の「凍結」の動きに見られるように、国民世論、住民の声が政治を動かす今までにないあたらしい時代が始まっています。
国の政治を変えることとともに、今こそ地方政治の出番です。
「三位一体の改革」の名で、地方自治体攻撃・地方財政破壊が進められている中で、市民との協働の力で、さらなるあたらしい松本市づくりの先頭に立つ姿勢が求められます。
私たち、日本共産党・しがの風は、そうした時代の変化を捉え、多くの市民の皆さんと力を合わせて、何よりも市民を守るをキーワードに、「市民が主人公」「市民の願いが叶う」市政の更なる前進を図る立場で、全力を尽くすものです。
以下に掲げる、政策・予算要求を来年度の予算編成に盛り込まれることを切に要望します。
日本共産党・しがの風
会派代表 池田国昭
倉橋芳和
両角友成
南山国彦
犬飼明美
澤田佐久子
―地方自治体の今日的役割にふさわしいまちづくりのための9つの施策―
1、 生存権は政治の原点 、憲法を生かし平和を守る市政
3年連続の負担増で市民生活は大変です。
市民税・所得税の負担増はもちろん、それ以上に国民健康保険税や介護保険料の負担増が深刻な事態になっています。
一般会計からの繰り入れで国保税・介護保険料を引き下げる。
低所得者、弱者対策への減免対策の充実をさらにはかる。
生活保護基準以下のくらしを強いられる高齢者・若者が増えています。実態調査を行い具体的な対策をとる。
日本を「戦争する国」にしないために、憲法9条の改定に反対する。 過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する「靖国史観」を許さない。 侵略戦争の歴史の真実に正面から向き合う平和行政をおこなう。
戦争の歴史や戦跡の保存を松本市として積極的におこなう。
2、 社会保障制度の改悪から、市民の健康・福祉を守るまちづくり
社会保障制度の相次ぐ改悪に対して、サービスを後退させない取り組みをおこなう。
介護保険については、松本市独自の施策をさらに充実させる。
要介護認定者が障害者控除を受けられるように、制度の周知をはかる。
同居家族のいる場合の訪問介護サービスの生活援助の提供については、これまでどうり「必要な」サービスの提供が受けられるように、特にケアマネジャーが自信と誇りを持って仕事ができるように行政としてサポートする。
「安心して生き、老いる」ことができるように、必要なサービスを受けられるよう施策の充実をはかる。
受益者負担を原則とした障害者「自立」支援法については、実態調査に基づき、介護保険同様独自補助を充実するとともに、報酬支払い方式を日割り制から月額制にもどすなど、国に向かって法の抜本的見直しを強く求める。
利用料軽減策の実施、自治体からの仕事をふやすなど仕事を確保し、松本市独自の施策をさらに充実させる。
国民健康保険証はまさに「命綱」です。引き続きお金が払えないことを理由とした保険証の取り上げ、資格証明書・短期保険証の発行はやめ、安心して医者にかかれる環境をつくる。未交付のなかに発行すべき対象者がいないか調べる。郵送の方法もふくめて全世帯に発行する。
来年度、国保税の引き上げはしない。
生活保護申請時、車の保有、預貯金などの取扱は生活保護法の精神に則り、かつ実施要領にそって保護が受けられるよう誠実な対応をすること。
申請書は窓口に置き、申請意思のある人には無条件で申請書を渡す。
相談者の人権・プライバシーをまもる相談スペースの確保。
後期高齢者医療制度の中止を求める。広域連合に「補助金」などを投入して保険料の軽減や減免制度の拡充をはかる。
福祉医療制度を受けている高齢者については、後期高齢者制度が発足しても不利益が生じないようにする。
高齢者・低所得者や子育て世代・若者が市営住宅並家賃で暮らせるよう、民間住宅入居の際の家賃補助制度を新設する。
火災の場合のみならず、緊急避難的に入居できる「福祉住宅」を確保する。
3、 命を大切にし、子どもと教育を守り、子育てを支援する市政
「教育は、子どもたちと父母・国民に、直接に責任をおっておこなわれるべきものである。」
この教育の条理を、教育政策の基本にすえる。
本年4月に実施され、来年も予定されている全国学力テストについては、学校現場の声もよく聞き教育委員会は完全公開で議論をおこない、実施しないことも含め慎重に対応する。
安心し,ゆとりを持って子どもを生み育てるための「子育て支援」策を引き続き進める。
いじめの松本市の独自の調査基準に沿って、いじめの事態を掌握するとともに、国の「競争」をあおる教育政策の根本的転換とともに、教育現場での実践や教育学の成果を踏まえた取り組みをすすめる。
子どもの基礎的学力を保障し、人間形成を助ける学校づくりをすすめる。
中学校までの「30人学級」の早期実現。
義務教育における父母負担の軽減。
児童扶養手当の充実を国に求める。軽度発達障害児教育に関する教職員の研修の機会を増やす。
灯油の値上がりによって、子どもたちが寒さを我慢することがないよう予算付けをおこなう。
貧困と社会的格差の広がりから子どもをまもる取り組みを強める。
乳幼児医療費など、福祉医療の所得制限なしの窓口無料化の早期実現と対象年齢を中学校卒業まで引き上げる。
公費負担による妊婦検診の回数をふやす。深刻な産科医師不足対策を強める。
未満時保育、障害児保育など松本市のよき保育行政の歴史と伝統を守り、独自の配置基準に見合った人員配置と施設整備をすすめる。
保育園での正規職員を増員し、当面嘱託職員の採用期間の延長をはかる。
放課後児童クラブ事業は「安心して働け、子どもの成長を支える」子育て支援策にふさわしい位置付けを明確にし、「公設公営」の今までの松本市での実績、経験を後退させる事なく、関係者との協働で、より質の高い発展したものに作り上げていく。
放課後子どもプランの推進にあたっては、放課後児童クラブ事業と放課後子ども教室の違いと役割を明確にして各々の充実をはかる。
私学助成をさらに拡充する。
4、 市民の生命・財産を守るまちづくり
「福祉力」は「防災力」の位置づけで、地域でのつながりを生かした地域自主防災組織の確立・充実をはかる。
消防団員、消防署員の自身の安全確保対策を図るとともに、引き続き消防団と団員の待遇改善をすすめるとともに、団員のさらなる確保につとめる。
人的消防力の強化など、広域連合に、消防体制の強化を申し入れる。
開発や土地利用の変更にあたっては、災害にどのような影響があるかを事前にチェックする 「防災アセス」を導入する。
免震構造を持つ新たな防災センターの設置を速める。
まつもと市民芸術館内の防災関連施設は、音楽練習室など市民の利用に供する検討を始める。
防災拠点としての出張所の位置づけを高め、学校など公的施設との連絡・通信網の整備、拡充をする。
5、 安心してくらせ、文化を生かしたまちづくり
生活者の目線に立った安心できる「まちづくり」をめざし、市民との協働をすすめる。 松本城のお堀復元・道路拡幅事業はいま必要かも含め、意向確認調査を行い、市民の納得と合意ですすめる。
環境問題も考慮したあらたな公共交通体系の検討を急ぎ、パーク・アンド・ライドの推進などをさらにすすめる。 まちづくりそのものを、開発優先から、防災を重視した住民参加型、子どもの意見も取り入れてすすめる。
6、 農・林業を本格的に再生する市政
「食料主権」の確立をする。
家族農業を支え、食糧自給率を引き上げるための施策、農産物の価格保障、農家の所得保障対策の抜本的強化などを国に働きかけるとともに、遊休農地に対する実効ある対策など、市独自の対策を強化する。
さらに、大規模農家のみならず、家族農業を支え、新規就農者育成支援と後継者支援施策を拡充する。
安心・安全な食糧確保の観点からも地元農産物の給食材への供給など地産地消をすすめ、松本市の農業を守り、発展させる。
地域資源の活用と市民の健康を守る地産地消、食育の推進、食の安全、環境保全を基本にした仮称「松本市食と農のまちづくり条例」を制定する。
有害鳥獣対策は県とも連携し広域的な対策をすすめる。
適切な森林整備と国産材の供給体制を確立し、地元産の木材を使った公共施設や住宅の建設などの林業・木材産業の再建をはかる。
木質バイオマスや森林セラピーの推進など山村地域での新たな事業を促進する。
林業労働者の確保と林業技術の継承を重視し、持続的な経営管理にとりくむ。
間伐作業など森林整備のため必要な林道(作業道)の開設・改修をおこなう。
県が来年4月から導入しようとしている「森林づくり県民税(森林税)」は、「増税先にありき」であり、反対です。
市として十分な県民的議論を尽くすよう県に求める。
7、 産業政策を確立し、雇用と労働条件を守る
「中小企業振興条例」を制定し、すべての市内の中小企業の実態調査を市の責任で行い、中小
零細企業、小売店の融資・人材・技術・市場の各分野にわたって直接支援できる体制を整備する。
ものづくり技術の継承、産・官・学連携のものづくり・技術開発は地場産業との連携を図り、新製品の販路・流通までの支援をおこなう。
豊かな観光資源を生かし、地域の特性を生かし、活性化につなげる。
市内の雇用労働実態の実態調査を行い、「安定した雇用」と「人間らしく働ける労働条件」の確立をはかる。
ワーキングプアや失業者のために、公共・公営住宅の建設や借り上げ、家賃補助制度、生活資金貸与制度などの生活支援を強める。
また、子どもの教育費や住宅ローンなどの緊急助成・つなぎ融資制度を創設する。
ニートとよばれる若者に対して、より人間らしく成長し働けるよう、相談、教育、社会体験や職業体験、就労などの支援を「継続」して行なう。
臨時職員・非正規職員の賃上げ、労働条件の改善をはかる。
8、 地球環境を保全し、循環型環境都市をめざして
ごみ「焼却中心主義」から、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進に努め、プラスチック類の再資源化など限られた資源の有効活用をさらにすすめる。
「ごみ有料化」はしない。 買い物袋持参運動を進める。
廃棄物の不適正処理や保管、不法投棄とそれによる環境汚染に歯止めをかけ、違法行為の「やり得」 を許さないために、違反者への「厳格な指導と監督」を県にもとめる。
地元同意を不要とする方向の「県廃棄物条例」にたいして、廃棄物の発生抑制と県民参加につなが る条例となるよう県に求める。
「脱焼却・脱埋立て」の具体化をめざし、市としても条例制定など市の独自施策の道を確立する。
温室効果ガス削減など地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、「松本市地球温暖化防止条例」を制定する。
BDF(バイオディーゼル燃料)化のさらなる拡大や太陽光発電、バイオマス、雨水利用、小規模 地域水力発電所など自然エネルギーの開発を促進し、ペレット燃料の生産やペレットストーブの公共施設への設置などについては市としての財政的支援を強化し、具体化をさらにすすめる。
9、 「市民が主人公」「納得と合意」で市民と行政が協働してつくるまちづくり
まつもと市民芸術館の運営に関しては、審議会の提言で一致して示された点についてはその具体化をはかる。
運営方針の見直しについては、市の財政状況と市民生活の実態を考慮しながら、自主事業の縮小、芸術監督制度の見直しなどを何よりも全市民のくらしを守る観点をすえることを原則に進める。
市民が、芸術文化を享受でき、明日へ生きる希望がわいてくるような、文化芸術行政が求められます。
旧4村の合併地域については、新市建設計画に沿い、全市的視野からのまちづくりを進める。
地域協議会・地域審議会での十分な協議を重ね、その地域が取り残されることがないように、またこれまでよりサービス低下がおきない配慮を持って進める。
予算編成過程の公開・意見集約は、市民と行政との協働の画期的な成果として今後も実施し、パブリックコメント等の活用で、市民みんなでまちづくりを進める観点からの予算編成を行う。
引き続き市の財政状況をはじめとした行政情報の公開を積極的に進め、「参画」「納得」「協働」の市政運営で、「市民が主人公」のまちづくりをおこなう。
波田町との合併問題や大型公共事業などは、十分な住民意向確認をへて結論を出す。
保健・医療・福祉、社会教育、文化・芸術、環境保全などの分野でのNPO活動を支援し、協働をすすめる。
以上
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