12月議会 一般質問 1回目
景気悪化から市民生活を守るために、地方自治体に求められる施策について
経済を外需依存から内需主導に切り替えることに関連して以下質問いたします。
「100年に一度」といわれる経済危機。アメリカ発の金融危機に端を発しての今回の不況は、単なるバブルの崩壊ではありません。 3ヶ月前の9月議会では、これほどまでの深刻さは話題にもならず、もちろん議論もされませんでした。
しかし事態は深刻です。
これに対する対策は国の問題、世界のこととして片付けられないまさに松本市にとっても、年末を控え、喫緊の課題となりました。
大切なのは、この事態をただ深刻なものとして強調することにとどまってはいけないと言う点です。
どこに原因があったのか。今後こうした事態がどのように展開していくのか。科学的に見通し、地方自治体としても、限界はあれ、できうる限りのことをやらなければなりません。
日本のそして松本市の景気悪化をここまで深刻にさせている原因は、ずばり極端な「外需頼み」という日本の経済構造があります。
これまでのアメリカいいなりの自民党政治に加え、小泉内閣が強力に進めた「新自由主義」路線、「規制緩和」がそれを加速させました。
「新自由主義」とは、あまり聞き慣れない言葉ですが、簡単に言えば、「安上がりで効率的な労働者たちと自由な市場原理」そして「むき出しの利潤追求主義」。
しかし、この路線は、進めば進むほど事態は深刻になります。
資本家は、利潤追求のためならとそれをやめることができない。今回「資本主義の限界」とまでいわれることの所以です。
「外需頼み」とは、国内と国民の将来は省みず、「もうければよい。後は野となれ山となれ」にその一番の本質があります。
話は一般論ではありません。実に具体的です。
こうした流れは、前市長の時代から、「民間でできることは」とそのまま松本市の行政の中にも持ち込まれて来ました。 まさに、今回の金融危機は、松本市政にも、昨日の法人市民税の大幅な減収に見られるように、早速大きな影を落としています。
今こそ、住民の暮らし営業を守ることを任務とする地方自治体が、その本来の役割を発揮しなければなりません。
地方自治体として、この景気悪化から市民生活を守るための対策が、しかも今までのやり方からの軌道修正を含めて求められます。
今日は、こうした立場から、この間の懸案事項や、問題点にふれ、以下質問いたします。
まず最初に、市民を守る立場から、今求められる緊急経済対策との関係で、お聞きしたいと思います。
麻生首相が打ち出したのは、「2兆円の定額給付金と3年後の消費税の引き上げ」が、経済対策にならないことは、専門家の指摘によるまでもなく、世論の反応に明白です。
一瞬の負担軽減の後に、一生の増税が待っている。
この金融危機に対して、イギリスなどでは、消費税の引き下げが発表され、EU全体の方針にもなっていることと比べれば、あまりに対照的です。
一方、大企業や資本家、資産家への大幅減税、負担軽減はそのまま。 こんな事で景気が回復するはずがありません。
それは、いわば、今回の「外需頼み」をさらに進行、深刻化させるだけに他ならないからです。
内需を支えるのは、GDPの55%を占める個人消費です。
今こそ、この面での政治の根本的な転換が求められます。
それは地方自治体、松本市でも同様です。
財政が大変だから、会計が赤字だからと言って負担を求めるのではなく、大事なのはそこからの転換です。
直接市民の負担を軽減し、家計を暖め、国内での消費の拡大こそが今求められます。 それには、安定した雇用を守ること。安心して暮らせる社会保障と負担軽減。農林業の振興。中小企業の応援と地域経済の再生、地方自治体では、この点こそ、もっとも効果的で具体的な景気対策であり、松本市でもできる緊急経済対策です。
以下、こうした内容に沿っていくつか代表的なことをお聞きします。
順序は変わりますが、
最初に、「社会保障の充実と負担の軽減について」です。
社会保障の充実とともに、何よりもその負担の軽減が一番のポイントです。
とりわけ、現在のような金融危機、不況の時期、農業を初め、中小業者、高齢者の皆さんの声は、国保税が高くて払えない。介護保険料、後期高齢者医療保険量の負担が大変。
年金生活の中で、生活費が少なくなり本当に苦労しています。 この社会保障の保険料負担の軽減こそ今、最大の景気対策といえます。
そこで、お聞きします。
介護保険料についてですが、先日会議も開かれたとのことですが、第4期の計画とりわけ保険料と段階設定については、どうなっているでしょうか。
段階を増やすことは政府でも言っていることですが、特に実際に低所得者の負担の軽減になっているでしょうか。お聞きします。
また、国保会計に関しては、後期高齢者医療制度が導入されてからの影響も含めて、その見通しは、どうなっているでしょうか。 これ以上の負担増を市民にかぶせることは考えづらく、国保税は引き下げこそあれ、まさか引き上げということはないかと思うのですが、その辺についてお聞きします。
これ以上の負担増は、耐えられないということでもあります。
次に、労働者の雇用と働く権利を守ることについてお聞きします。
ここへ来て毎日毎日、ハケンの首切り、期間工の雇い止め、正規職員の整理などリストラのニュースが出ない日はありません。
派遣労働者が、契約期間を残して首を切られ、寮まで取り上げられ、まさに年の瀬の寒空に放り出されるという事態です。 松本市内も例外ではありません。
マスコミ報道によれば、市内の大手の電器メーカーの工場で「260人」という大規模なリストラ計画が伝わってきています。
この秋に海外出張が終え、家を新築し、帰国して12月にはその新居入る事を計画していた40代の労働者が、かえって来るなり、山梨へ行くか辞めるかの選択を迫られているといいます。
また、ずっと長く会社のために働いてきたのに、定年を2年残して肩たたきに会う。 これも同じ職場の労働者の話です。
そのほかにも市内の大手の機械メーカーのリストラ計画も明確ではありませんが伝わってきています。
重大なのは、その実態がつかめていないことです。
先週の5日、ハローワークが事務局を勤める、「緊急・雇用対策推進協議会」の新聞報道がありました。
「4社で494人」と発表されたものの、先ほど紹介した「260人」は入っていない。
要は、ここへ来ても、その実態がつかめないということです。
県下の市の中で、労政課と言う労働・雇用問題の専門の課をもちながら、残念ながら、今回の事態の全容、別なこと言葉で言えば、その深刻さが把握できていません。
まず何よりも、今回の金融危機の影響による市内企業の雇用の事態を直ちに調査してつかみ、対策を講じることが急務ではないでしょうか。市としてどのような取り組みを行おうとしているかただ手をこまねいているのか。お聞きします。
次に、松本市には労働相談窓口がありますが、ほとんど知られていないのが実態です。こういう時こそ、役に立つようにPRと充実強化を図るべきと考えるがどうですか。
又、それと関連して、労働相談のみならず、前回提起した多重債務者の相談窓口とも合わせて、年末を前に、この寒空に放り出されかねない事態を伝わってきている中で、文字通り生活全般について相談できるような、総合相談窓ロの設置が必要と考えるが、見解を求めます。
そして、何よりも今回の雇用破壊に対する対策本部の設置が必要と思いますが、これについてもお聞きします。
次に、今年の2月議会でも取り上げましたが、本市の保育園に置ける嘱託と言う身分の保育士さんについてお聞きします。
自治体にあるこの嘱託と言う制度。いつから導入された今回はまだ調査が間に合わず、わかりませんが、保育園では、正規職員数を超えて雇われています。
嘱託と言う定義は、前回も紹介しましたが、「非常勤で1年の期間を任期とし、主に正規職員の補助的業務や施設管理業務等、反復的な業務やマニュアル化した業務にあたる職員です。」というものですが、保育園の現場では、この定義に反して、嘱託保育士がクラス担任となり、正規の保育士とまったく同じ仕事内容と責任をもちながら働いています。
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ところが、待遇は半分以下という状況です。
そしてさらに期限付きの雇い止め、通常は5年、長くても8年と言うことは前回紹介したとおりです。 そこでお聞きします。
嘱託職員の身分で、保育園のクラス担任を持っている保育士さんは、いるのかいないのか。何人になるのか。
又、こうした働かせ方は、先ほど紹介した嘱託の定義に反している働かせ方だと思いますが、どのように考えているのか。
次に、小業者の営業と暮らしを守ることについて
金融機関の貸し渋り、貸しはがしの実態並びに市内中小業者の資金繰りの状況などについてどう把握しているか。
制度資金の貸付金利見直しなど、現状と制度は充分か。銀行からの申し入れもあり、金利が引きあがられる動きもあるが、その話し合いは、金融危機の前段階のもので、先日の経済環境委員会でも、引き上げにならないように銀行への働きかけを求めたが、それはどうなったのかお聞きします。
借りても返せるあてがない中、現在の融資の返済期間の延長、月々の返済額の縮小が切実な声となっている。
又、先ほども触れたが、資金繰りも大変だが、何よりも直接の負担の軽減として、国保税の負担軽減を求める声が多く、実に現実的なものだ。切実なもの。
先ほども触れたが、あらためて、引き下げを求めたいが、重ねてお聞きします。
次に、市内の中小業者、とりわけ建設業者の仕事確保と適切な落札価格との関係で、今年から導入された最低制限価格制度が実施されての結果についてお聞きします。
松本でも建設業界の老舗と言われた業者が、いくつも倒産と言う結果になっています。 実に深刻な事態です。仄聞するに、まだ続くと指摘する方もおいでです。
「極端な低価格での受注は、工事の質の低下を招く恐れがあり、さらに過度な安値受注は、下請企業・労働者へのしわ寄せや安全管理の不徹底を招き、ひいては建設業の健全な発展を阻害することが懸念される」ということで導入された最低制限価格制度。
実施後半年ですが、実施状況はどうなっているか。おききします。
最後に、 経済構造の転換と企業誘致について についてお聞きします。
まず最初に、大前提として、改めてのいわば、根本的な質問ですが、松本地域の経済について外需依存型から内需主導型に転換することについて、現状とその必要性について市長の見解を伺いたい。
松本市内の経済構造について、また輸出依存度の視点から、調査・分析がなされた経過はあるか。仮に調査・分析が行われていない場合調査が必要と思うが、おききします。
そのためには、今こそこの間提起してきた全事業所訪問が必要と思いますが、これは、中小企業にも言えることです。融資、金策での実際など、こうゆう時こそ直接訪問しての調査が肝要です。 それについてお聞きします。
次に、新工業団地建設に関連して、新工業団地に進出を希望する企業について、今回の金融危機、経済不況の影響により、どういう実態になっているか。
工業ビジョン策定の際調査したときとは明らかに情勢が変化しています。 改めての大至急再調査が必要だと思いますが、見解をお聞きします。
以上のような調査を踏まえながら、新工業団地の建設についてですが、9月議会では、 わが国の経済情勢については、「設備投資・個人消費がおおむね横ばい、生産は緩やかに減少、企業収益も減少、先行きは当面弱い動きが続き、地域経済は大変厳しい。」 が、「積極的に取り組んでいる。」との答弁でしたが、サブプライムローンからの金融危機の影響が出始めたのは、その深刻さも含めてその後のことです。
こうした経済的な大きな変化と企業の動向を改めて調査してからの慎重な対応が必要と思われるが、今後の進め方について見解を伺いたい。
今回、この問題を、次の雇用の問題とセットで取り上げるのには、理由があります。これは誰もが気がつくことです。
企業を誘致して、雇用が増える、税収が増える。 確かにそうした面があります。
しかし、今回の金融危機の影響、その推移の中で、雇用が守られているのか。 そこをリアルに見る必要があります。
松本市の経済構造をどうするのか。 工業ビジョンでもテーマになっていたものですが、唯 単に、景気が上向いてきている中で、企業の獲得競争に負けないため、税収を上げるため、などの大前提は、今、もろくも崩れ去っているのではないでしょうか。
松本市の経済も、実に日本経済の脆弱性、その構造の縮図となっているのではないのか。
こうした調査が新ためて必要ではないですか。 そして、先日の私たちの申し入れに際しての、市長との懇談の中でも、あらためて、「工業誘致は、もう駄目だ」と言った、松谷明彦 政策研究大学院大学教授 の話を、市長はかなり気にしているように感じたのは私だけではないともいます。
それは、市長をして、今年の7月8日に行なわれた定例の記者会見の場で、「軌道修正という事ではないのですけれども、」と言わしめたところにも現れています。
こうしたことを踏まえての答弁を求めます。
以上で一回目の質問と致します。
08年12月9日
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