平成17年松本市議会12月定例会菅谷市長提案説明 (平成17年12月5日 午後1時)

  本日ここに、平成17年松本市議会12月定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様方にはおそろいでご出席をいただき、厚く御礼を申しあげます。
  さて、冒頭、現在、国が推し進めております国・地方財政の三位一体改革に関連して、このほど政府・与党間で合意した国庫補助金等の削減について、若干申しあげたいと存じます。
  国庫補助負担金改革につきましては、平成17年度及び平成18年度予算において、3兆円程度の廃止、縮減等の改革を行うこととされており、そのうち昨年積み残された6,000億円について、各省庁がそれぞれ検討案を提出いたしました。
  その中で、特に厚生労働省が提出した生活保護費の削減案につきましては、全国市長会など地方としては、生活保護費が削減された場合は、国への生活保護データの報告停止や、法定受託事務である生活保護事務の国への返上をも辞さないとの絶対反対の立場を貫いてきましたところ、去る11月29日に、生活保護費削減案を見送るということで、政府・与党の合意がなされましたので、地方六団体としても、これを了承することといたしました。
  また、このほか暫定削減扱いでありま.した義務教育費国庫負担金につきましても、約8,500億円を削減することとされ、今回の合意により、国から地方へ3兆円を税源移譲する改革の全体像が確定したわけでございますが、特に、生活保護費の削減が土壇場で回避されましたことは、国が地方の意見を尊重した結果であり、地方分権を進めるうえで、前進があったものと考えております。
  三位一体改革は、地方の権限と責任を大幅に拡大し、歳入・歳出両面で地方の自由度を高めることで、真に住民が必要な行政サービスを、住民に身近な地方が自らの責任で、自主的・効率的に選択できる幅を拡大するという、いわゆる住民のための改革であるという趣旨に照らしますと、この度の国庫補助負担金改革は、いまだ十分とはいえません。
  従いまして、今回の内容は、地方分権の今後の展望を拓くための第一段階と受け止めており、引き続き平成19年度以降も、さらなる改革を推し進めていくべきだと考えております。

 次に、私が市長に就任して以来、1年8カ月が経過し、来年度予算の編成時期を迎えており ますことから、私の公約に関連して、若干申しあげたいと存じます。
  私は、これまで「10のまちづくり」の項目を柱に据え、「新たなる松本のまちづくり」を公約として掲げてきております。しかし、松本市の現今の厳しい財政状況を考えるとき、これらの公約をいかに効率よく、そしていかに機能的に実現していくかを、医療者として、国の予測を大きく超え、急速に現実化しつつある超高齢・少子社会の現状を鑑みて、熟慮を重ねた結果、「健康づくり」、「危機管理」、「子育て支援」の各頭文字をとって「3Kプラン」と名付け、医療従事者である市長として、私の特色を明確にしていきたいと考えるに至りました。
  具体的には、現在、長野県が「平均寿命」では、全国トップクラスにありますが、本当の意味での「健康長寿」を考えたとき、これからの超高齢社会では、単に寿命の延伸を図るだけではなく、「健康寿命」を伸ばすことが極めて重要であり、改めて「健康づくり」の有効施策が大きな鍵を握ってまいります。 また、防災や治安にとどまらず、幼少児を含めた住民の生活全般の安心、安全を確塀するための「危機管理」とともに、20年、30年先を見据えたとき、この松本を引き継ぎ、担ってくれる子どもたちのための、戦略的な「子育て支援」の3つを、市政の最重点施策と してとらえ、これからは人間に対する投資を基本としつつ、「暮らしてみたい、暮らしていたい」まちづくりのための、10の柱を推進するため、部局横断的な取組みをしてまいりたいと考えております。
  そこで、現在進めております来年度の当初予算編成にあ亘りましては、この「3Kプラン」に関する予算につきまして、「まちかどトーク」や「ティータイムトーク」などで、市民からいただいたご意見、ご提言を参考として、職員の英知を結集し、鋭意取り組んでまいることとしております。
  また、市民の皆さんの目線で今回の予算編成を行うため、特に新規事業や大きな制度改正を伴う事業につきましては、その目的、効果並びに事業費などを広く公表し、お寄せいただいた意見等を、参考にさせていただきたいと考えております。

 次に、本市の抱える懸案事項等について、この際、若干申しあげたいと存じます。

 
まず始めに、信州まつもと空港の活性化について申しあげます。
  まつもと空港の活性化につきましては、先に行われました県議会議員との懇談会におきましても、重要課題として取り上げ、お願いをしておりますが、去る11月2日には、台湾からチャーター便が就航するなど、長野県といたしましても、活性化に向け、積極的な取組みをいただいております。
  松本市におきましても、この4月から誘客担当課長を配置し、観光誘客事業に積極的に取り組んできておりますが、去る11月19日から21日までにかけて、私自身まつもと空港から飛行機で福岡へ飛び、福岡市役所を始め、旅行関係者のところに伺い、観光誘客のためのトップセールスを実施し、それぞれ大変参考になるご意見やご助言などもいただいてまいりました。
  また、空港の運用時間の延長問題につきましても、地元の皆さんのご理解をいただくため、松本市としても、県ともども何度となく地元へ足を運び、お願いを申しあげているところでございますが、去る11月2日に、私と田中県知事とが懇談した際にも、私の方から知事に対し、今井地区の地域振興策の具体的な取組みを、さらに進めてほしい旨、強く要請をしております。

 次に、これも懸案となっております、南松本駅南側踏切りの安全対策について申しあげます。
  この問題につきましては、過日、松南地区で開催されましたまちかどトークにおきまして、地元の皆様から立体化事業の早期開始と踏切りの安全確保対策を図って欲しいとの強い要望がありましたことから、やはり、去る11月2日の田中県知事との懇談の際、私から知事に対し、立体化事業開始時期の明確化と、踏切りへの歩行帯の設置などによる、安全対策の早期検討を、強く要望いたしました。
  知事からは、至急検討する旨の約束をいた.だき、その後早速、県の事務レベルで検討をいただいた結果、松本建設事務所から、現踏切りの安全対策について、12月中にも、地元町会との調整に入りたいとの連絡がございました。
  この踏切りにつきましては、歩行者の皆さんにとうては、極めて危険な踏切りでありますので、一日も早く安全対策がなされますよう、今後とも積極的に取り組むとともに、立体化事業の開始時期につきましても、早期に明確にしていただきますよう、引き続き県に働きかけてまいりたいと考えております。

  次に、国道158号の復旧について申しあげます。
  この道路は、岐阜県と長野県とを結ぶ幹線道路であり、緊急輸送道路にも指定されるなど、産業並びに防災上の重要な路線となっておりますし、併せて住民の生活道路としても、枢要な役割を担っておりますことから、先の土砂崩落による全面通行止めの際には、国及び県におきまして迅速な対応をいただき、早期に仮復旧がなされました。
  しかしながら、これはあくまでも仮復旧であり、根本的な解決にはなっておりませんことから、引き続き早急な本復旧を、国や県に対し強く要請しておりましたところ、先ごろ、危険箇所を避け、バイパスルートによる抜本的な対策を講ずることが決定され、バイパスの橋梁工事のための関係経費が、県への補助金として国から追加決定されました。
  先ほども申しあげましたが、この道路は松本市の観光政策を含め、大変重要な路線でありますことから、一日も早く本復旧がなされるよう、今後とも継続して働きかけてまいる所存でございます。

 
次に、私の公約の中でも力を入れていきたいと考えております、観光戦略に関して申しあげます。
  観光都市松本として、観光問題に本格的に取り組むため、昨年11月、観光戦略本部を設置し、1年余が経過いたしました。
  この間、松本市の今後の観光戦略プランの策定に向けて、庁内を始め市民の皆さんのご意見をお伺いしながら取り組んでまいりましたところ、このほど、一定の考えがまとまりましたので、今会期中に、議会に中間報告を申しあげる予定でございます。
  この中間報告では、「生き生きとした誇りのもてるまちづくり」を観光戦略のビジョンとして「市民の時代」をはじめ、「環境の時代」、「少子高齢時代」、「IT時代」、「成熟低成長時代」、「分権、合併時代」という6本の柱を基軸とした、長期的、総合的な方向性とともに、時代に即応した実践可能な戦略プランを提示しております。
  今回策定しました「観光戦略プラン」は、中間報告の段階ではありますが、議会を始め多くの皆様からご意見をいただきながら、市制施行100周年の歴史を礎に「新松本ブランド」を創造し、発信してまいりたいと考えております。
  また、このほか観光施策の充実のため、去る11月24日には、産学官協働による「観光ホスピタリティカレッジ」を開設いたしました。
  さらには、市民の皆さんが自らの手によって、「公式観光ホームページ」を立ち上げるなどの個別事業を進めており、これからもより魅力あふれる観光行政に取り組んでまいる覚悟でございます。
  また、観光行政に関連いたしまして、去る11月17 日に、姉妹都市であります高山市を訪問し、土野高山市長と懇談をいたしました。 松本市と高山市は、それぞれの合併に伴い、全国でも珍しい、県境47キロメートルをはさんで隣接する姉妹都市となったわけでございまして、今回の合併を機に、上高地並びに乗鞍岳一体の広域観光や道路問題などの共通の課題について、意見交換を図りたいとの思いから、私のほうから土野市長を訪問したものでございます。
  短時間ではありましたが、ざっくばらんに腹を割って話ができ、基本的な部分ではお互いの意見が一致いたしましたので、今後は事務レベルでの打合せを行いながら、両市の交流をますます深めてまいりたいと考えております。
  また、その際、両市が持つそれぞれのノウハウをお互いに吸収し合うため、職員の人事交流を行ったらどうかということで、意見が一致しましたので、来年度からの職員の相互派遣に向けて、早速、具体的な検討に入っております。
  また、11月22日には、旧開智学校と姉妹館提携をしております愛媛県の西予市の開明学校を視察するため、西予市を訪問してまいりました。 その際、三好西予市長から、西予市では、毎年大勢の中学生が、修学旅行で松本市を訪問しているのに対し、松本市からはあまりお出でいただけないので、是非とも多くの市民の皆さんにお出でいただきたいとのお願いをされました。
  これを受け、私からは、文化面での交流に加えて、今後は観光面でも積極的に交流を図りたい旨、申しあげてまいりました。

 次に、大名町の旧みずほ銀行松本大名町支店の後利用に関連して、若干申しあげます。
  旧みずほ銀行松本大名町支店の後利用につきましては、開発者側から、当初16年12月、地元に対し、高層マンション構想が示されておりましたが、改めて今年の10月14日に、地元に対し、1階に店舗施設のある、12階建て賃貸マンション建設計画が説明されました。
  また、その一方で、この後利用につきましゼは、現在有志の皆さんが、保存財源を広く市民に求めるなど、新たな保存運動が展開されております。
  私といたしましては、再三議会にもご説明申しあげてきましたとおり、市が保存や取得をすることは難しいという判断を変えておりませんが、引き続き市民による保存運動の動向を、見守ってまいりたいと考えております。
  なお、高層のマンション建設が、中心市街地の賑わいの創出に寄与するとのご意見もございますが、私といたしましては、この地区への12階建て高層建築物の建設は、都市景観などの観点から、いかがなものかと考えておりますので、事業者と地元の皆さんが十分に話し合い、慎重に進めていただきたいと切に願っております。

 次に、千葉県市川市の姉歯建築設計事務所による、構造計算書偽造問題について申しあげます。
  去る11月17 日に、国土交通省が東京都をはじめ、3都県のマンションなど21棟で、構造計算書が偽造されていると発表した今回の問題は、その後全国に波及し、大きな社会問題となっております。
  松本市におきましても、長野県からの情報提供を受け、市が特定行政庁として、平成13年5月に建築確認を行った市内のホテルについて、問題の建築設計事務所が関与しているという事実が判明いたしました。
  提出された構造計算書を始め、関係書類を調査するとともに、長野県建築設計事務所協会に再計算を依頼した結果、該当建物の安全性について問題があるなかで、耐震性確保のための補強工法についても、提案をいただきましたので、今後建物の耐震性を確保するため、建築主からの報告を受け、適切な処理が行われるよう指導してまいりたいと考えております。
  今回の問題は、去る11月29日に、衆議院での国土交通委員会が、関係者を招致し、参考人質疑を行うなど、建築確認制度そのものへの信頼を根底から揺さぶる大きな問題でございまして、国も現在の建築確認業務のあり方について見直しを始めると伺っております。
  松本市といたしましては、国の指導に基づき、適正な建築確認業務を行ってきているわけでございますが、今回の問題を真摯に受け止め、早速、庁内に関係課で検討委員会を設置し、審査方法等について検討するとともに、今後、国や県の指導を受けながら、一層適切な建築確認事務を行うよう努めてまいりますので、ご理解を賜りたいと存じます。

  次に、松本・四賀直結道路の市民意向確認状況について申しあげます。
  意向調査の方法につきましては第三者機関である松本・四賀直結道路市民意向確認研究会から提案いただきました、意向確認プロ1セスに従い、まず、10月17 日に四賀地区において住民意見交換会を開催し、市民の皆さんのご意見を伺った後、11月 4 日から14 日までの間、四賀地区の16歳以上の住民を対象に、アンケート調査を実施いたしました。
  現在、その結果を研究会で検討いただいておりますが、アンケート結果の概要として、回収率は概ね8割、また、回答いただいた四賀地区の皆さんの、約8割が直結道路の建設を望んでいるという報告を受けております。
  なお、今回のアンケートで、直結道路の建設を望む理由として、実に42%の方が合併条件であると回答されておりますが、私は、市長就任後、これまで議会そ始め、合併協議会並びに令併前や合併後の「市長と語ろう会」などにおきまして、再三、松本・四賀直結道路の建設は、合併や条件ではないことを申しあげ、中島前村長にも確認をしてまいりましたにもかかわらず、このような住民意識が多くを占めたことは、四賀地区の皆様に情報が正しく伝わっていないのではないかと、大変残念に思っております。
  更に、今回のアンケートの実施に当たりましては、誠に残念ながら、公正さをけがす如き発行者不明のチラシが四賀地区住民に配付され、アンケートそのものに影響を与えるよ うな事態が発生いたしましたので、私から厳重に抗議を行いました。
  一方、こうした事態にありましても、引き続き中立的な立場の「市民意向確認研究会」の委員の皆様方から提案された、意向確認プロセスに則り、今回の四賀地区のアンケート結果を参考に、12月下旬から翌1月中旬にかけて、全市域で新たなアンケート調査を実施いたします。
  来年の2月には研究会主催による市民討論会が開催され、3月中には意向確認結果の分析、評価の報告を、研究会からいただきますので、そのうえで議会ともご相談しながら判断をさせていただくこととしております故、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。

  それでは、ただいま上程されました議案につきまして、ご説明を申しあげます。
  本日ご提案申しあげました議案は、条例20件、道路2件、その他9件のほか、急を要し専決処分をいたしました条例 2件の計33件でございます。
  まず始めに、条例についてでございますが、高さが15メートル以上の中高層建築物を建築する際、建築主等と近隣住民等との良好な関係を保持するために必要な事項を定めるとともに、当事者間で紛争が生じた場合の手続き等を定めた条例制定のほか、市民芸術館の主催者用駐車場の一部を一般の利用に供するための条例改正、合併4地区の老人デイサービスセンターなどの施設の管理方法を、指定管理者制度に移行するための条例改正などを、提出いたしております。
  その他の議案といたしましては、市道関係2件、県内の市町村合併に伴う長野県市町村自治振興組合を組織する市町対数の増減、平田土地区画整理事業に伴う町及び字の区域の変更、大村地区のほ場整備事業に伴う字の廃止のほか、市街地駐車場を始めとした、公の施設の指定管理者の指定6件を、提出しております。
  次に、報告案件2件につきましては、急を要し、議会を招集する暇がなかったため、国家公務員の給与改定に準じ、特別職及び職員の給与等の改正を行った関係2条例を、地方自治法第179条の規定により去る11月25日付けで専決処分をしたものでございます。 そのほか、議案以外のものといたしましては、本市が資本金の2分の1以上を出資しております法人の事業計画等3件のほか、市長の専決処分事項の指定にかかわる報告1件をそれぞれ報告いたして奉ります。
  また、今会期中には、教育委員会委員の任命及び固定資産評価審査委員会委員の選任について、追加提案をさせていただく予定でございます。 以上、本日提案いたしました議案等についてご説明を申しあげましたので、よろしく ご審議を賜りますようお願い申しあげます。
                                                 (以上)