2004年11月松本広域連合定例議会 本会議一般質問と答弁 (消防力に関する部分のみ)
○8番(池田国昭)
松本広域圏の圏域住民の生命、安全、財産を守る危機管理という立場から菅谷連合長にお伺いをします。
先ほども連合長からの発言にございましたが、10月23日発生以来、現在まで続く新潟中越地震から学ぶ教訓は何か、これに関して危機管理のあり方に関連してお伺いしたいと思います。
今度の中越地震で亡くなられた方々、そして被害に遭われた方々にまず最初に心からご冥福とお見舞いを申し上げたいと思います。
また、この新潟中越地震へ広域連合の消防局から救出救援の活動に当たられた皆さんには私の方からも敬意を表したいと思います。本当にお疲れさまでした。
さて、この新潟中越地震の被害規模は、時間が経過する中で孤立した集落などの実情がわかるにつれ、その被害の規模の大きさが伝わってまいります。
阪神・淡路大震災の被害に比べても、確かに避難者の数等々数字的には小さいように見えますが、地域性、人口規模、人口密度、そして建物等の違いなどを考慮すれば、この被害はまさに文字通り甚大なものと言えます。余震もいまだにおさまらずに、本格的な冬を前に現地では本当に大変な状態のまま推移しております。
そんな中、明るいニュースとしては、先ほどもご紹介ございまレたが、27日、皆川優太ちやんの救出とそれとの関係での松本広域消防局救助隊の果たした役割です。特に今回の新潟での救助活動は全国の皆さんにも感動を与えました。お聞きするところによると広域消防局に「感動をありがとう」というメールがたくさん届いているとのこと、少しご紹介をいただければというふうに思います。
さて、1995年、今からほぼ10年前、1月17日の阪神・淡路大震災以来、松本広域連合としても救助隊や特別救助隊の設置、消防力の強化、通信網の整備等々に取り組んでまいりました。台風23号についても広域圏内での被害はかなりの規模に及んでおります。改めて広域消防局の役割は大きいものと考えます。
そこで連合長にお伺いします。新しく連合長に就任し、新連合長の目で広域圏内の危機管理体制を見た場合に、新潟中越地震の教訓も含めて、現在の消防体制に問題点や課題はないのでしょうか。
具体的には消防力の充足度はどのように現在なっているか、この到達点も含めてお答えをいただきたいと思います。
○広域連合長(菅谷 昭)
池田議員の質問にお答えいたします。
昨日、松本市に寄せられた義援金を持参し、新潟県の災害対策本部へお届けし、その後、中越地方の被災地、主に長岡市並びに小千谷市の被害状況等を見てまいりました。現地視察の中で本広域圏も糸魚川一静岡構造線上に位置しており、牛伏寺断層による直下型地震の心配がされているところであり、改めて震災対策の軍要性を認識したところでございます。
それでは、議員のご質問で、最初に消防力の充足度について申し上げます。
国が定める消防力の基準に対する充足率でございますが、消防ポンプ自動車、救急自動車、救助工作車、はしご車及び化学車等、車両はいずれも100%充足しております。
また、消防職員数は専任特別救助隊設置のための36人の増員を経て、充足率はおおむね95%となっておりますが、消防、救急、救助等の各分野において、全国の類似規模の消防本部と比較いたしましても上位の体制が整っているものと認識しております。
次に、消防体制の現状について申し上げます。
平成6年の松本サリン事件、平成7年の安曇村中ノ湯水蒸気爆発事故、阪神・淡路大震災等の経験や教訓を踏まえ、逐次災害対応に必要な要員確保、人材育成、施設、資機材の充実整備を図るとともに、関係市町村や防災医療関係機関との連携体制の強化を図り、地域一体となった体制の確立に努めております。
また、災害対策に万全を期すため、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ震災対策マニュアルを作成し、各種訓練において検証を重ねているところでございます。
次に、消防体制の課題についてでありますが、松本広域消防局は19市町村、総面積1,750平方キロメートルという広大なエリアに、都市化の進む中心市街地から、集落が点在する中山間地域までを12消防署、4出張所の16署所体制でカバーしておりますが、火災、救急など日常的な災害対処につきましては、広域消防発足12年目を迎える中で住民の皆様から一定の評価をいただいているところであります。
しかしながら、地震災害等大規模かつ非日常的な災害につきましては、1つの消防本部がすべてに対応することは困難、かつ十分な体制整備も不可能であり、相互応援により消防力を結集して対応するということが全国的な体制整備の考え方となっております。
松本広域圏は、このたび広域的に甚大な被害をこうむった新潟県中越地方と地理的、また地形的条件等共通する部分も多くあります。被害を最小限度にとどめるためには、何よりも住民の皆さんや関係市町村、関係機関等の密接な連携のもとに、今回の震災を教訓としてより具体的なシミュレーションの上に立った対応を考えていかなければならないと考えております。
○ 消防局長(中西康雄)
消防局に全国から15件の電子メール、手紙等が届いております。 その中から3件を紹介させていただきます。
「強い余震がたびたびあるにもかかわらず、命を投げ打っての救助活動に感激しました。 二次災害に遭われないか心配していましたが、仕事とはいえ、ご自分の危険を省みず、救助に励まれる姿に大きな勇気をいただきました」、大阪府堺市の男性です。
「貴消防隊員の昼夜を分かたぬ決死の活動に深い敬意と感謝を申し上げます。テレビ画面を通じての救助活動は被災者や多くの国民の胸を打ったものと思います」、神奈川県横浜市の男性からです。
それから、もう1点ですが、「救助隊員の勇気のある行動に感動しました。とても寒そうで、危険のある場所でのお仕事、体に気をつけて頑張ってください」、松本市の小学4年生の女子の方からですい以上です。
2回目
○8番(池田国昭)
それでは、2度目の質問、要望が主になりますが、発言をしたいと思います。
まず最初に、ちょうど10年前、松本広域連合というか、この圏域の消防力がどうであったかという質問をした経過があります。今、消防力の充足度が人員を除いてすべて100%という答弁がございましたが、私は果たしてこれを100%だからいいというふうに見ていいのかという点をちょっと問題提起をしたいと思うんです。
実は10年前に聞いた時点での松本広域連合の中のポンプ車の台数、それから、はしご車の台数、化学車の台数、救助工作車の台数、救急車の台数、なお、救急車は当時から100%という数字にはなっておりましたけれども、救急車を除くものは、例えばポンプ車は充足度が88%でした。同様にはしご車は60%、化学車は66.7%、救助工作車は80%、こういう数字だったわけです。
それが100%になったということになれば、普通に考えれば、はしご車、化学車等々の車両が増車されて、ふやされてその結果100%に到達したというふうに見れるのが普通なんですが、それがそうではなくて、10年たった現在もこの台数は変わっていないんです。
では、なぜ例えばポンプ車を含めて100%に到達していなかったものが100%になったか。
これは実は消防力の算出の仕方の、いわば分母の部分の見直しが行われて、分子は変わらないにもかかわらず、分母が少なくなった結果として100%になった。この点はぜひ考えていかなければならない問題だなというふうに思います。
いわば現状に合わせて充足率を出す分母を下げた結果として100%になった。台数は先ほども申し上げたとおり、繰り返しますが、 台数はふえていない中での100%ということになった場合に、やはりこの点は当時は最小限の数として定められていたものが、充足率という考え方を法律で変えて、これをいわば基準にしていくというか、そういう形で緩められた。その結果の100%という面もあるんだという点も忘れてはならないというふうに思います。
もちろんそれ以降のいろいろな車両の性能のアップ等々、それから地域性の変化等々あるわけですけれども、いずれにしても私は100%であるということだけをもってこの点での問題点がないかのように見るのはやはり、そういうふうに結論づけてしまうのはまだ早いじゃないか。この点を広域連合長にはぜひそういう点からも検討を加えていただきたいということを強く要望しておきます。
それから、車両との関係で今申し上げたことですが、人的配置の問題では先ほども答弁があったとおり、現状はまだ100%になっていない。
この点は少ない、いわば基準が下げられた中でもいまだに100%になっていないという点ですから、この点は早急に改善をしていく必要がある。
このことは先ほど申し上げたものとはまた別の意味ですぐ対応が求められているというふうに思います。
今、15件のメールが寄せられて、本当に私もあの救出のシーンをたまたまテレビをつけていたらそのシーンがありました。
優太ちゃんが救出された後もあと2人の命がどうなるのかなということでずっと見ておりましたけれども、残念ながら残りの2人の人は帰らない人になってしまいましたけれども、その中で私は一番感動を与えたのは、いわば裸同然で出てきた優太ちゃんにみずからのジャケットをかけてくれた。最初のときはわからなかったんですが、それが松本広域連合の関係者だった。その点でも非常に全国に私は大きな感動を与えているというふうに思います。私自身も本当にその点では、あ、こういうのが原点だなと、行政にかかわる仕事をする上では本当に原点だなというふうに感じたところですが。
問題は、現場にいて大変な状況の中での活動の中でも、仮に人的体制の不十分さがあって、及び先ほど申し上げた消防力の不足等があって、助けられるものも助けられなくなるような状況、こういう状況が事前の体制的な不備の中で起こってくるとすれば、命がけで使命を持って、責任を感じて日夜奮闘している消防関係者の皆さんにとっては非常に無念な事態を生んでしまうのではないか、これが阪神・淡路大震災のいわば一番大きな教訓の一つでした。
結局のところ、消防車が足りない、そして消防車が仮にあったとしても、動かす人員がいなかった。同時多発的なあの阪神・淡路大震災のときには今回と違って火災がたくさん起きたわけですが、そういう中の教訓の上に立ってこの充足率の問題が出てきました。
それが先ほど申し上げたような形で100%になっているわけですけれども、こういう経過も踏まえて、私はぜひ新連合長には、広域連合下の救急危機管理体制、改めてそういう目で見直していただいて、十分な体制をとっていただくことを強く要望したいと思います。
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