決算議案に対する 討論と意見            
                                           2013年10月30日

  議案第19号について意見を申し上げます。
  市民の日々の暮らしぶりがどうだったか、そんな中で、いかなる市政が展開されたか。 決算審査にあたっては、こうした視点が肝要です。
  地方自治法第1条2項では、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものである」とありますが、その施策が、市民一人ひとりのくらし、福祉・健康を増進させることにつながったかをモノサシに、以下意見を述べたいと思います。
  このモノサシに照らせば、実に、深刻な市民の実態とさらに解決策が見えてきます。

  まず、H24年度市民生活の実態はどうだったのか。
  まず所得の実態から見ます。  
  この間、市民税課の職員の皆さんにご協力いただきました。
  ズバリ所得の変動をみるデータは、見いだせませんでしたが、給与所得で見ますと、10年前と比べ、平均で、一人当たり20万円前後の減少、23、24年度はわずかにの回復はあるものの、基本的には変わっていません。  
  歳入で主な割合を占める、個人市民税収は、増税、増収となりました。
   この点だけ見ても、市民生活は好転していない。いやひとりひとりで見るとむしろ可処分所得は減っているといえます。  
  それは、松本市が賦課し、徴収している国保税と介護保険料の負担が増えていることがそうした事態を招いています。  
  また、市民生活の厳しさを示すものとして、生活保護受給者の実態があります。
  10年前に比べ、増加傾向、約2倍、となり、特に20代から50代の「その他世帯」(高齢者、母子、傷病障害者世帯以外)が、H23年度と比べ2割以上増えています。ここが特徴であり、問題点です。   
  就学援助金受給者も増えたままです。  
  市内の事業所の倒産・廃業件数も引き続き増え続けています。  
  先日に行われ、ただいま決算特別委員長の報告があったわけですが、その決算審査の中では、全くと言っていいほどこれらの点は話題にならなかったようですが、実に残念なことです。
  市民生活の実態、状態悪化の状況は、決算書を精査すれば、明らかになります。  
  いわば、格差と貧困問題は、ますます深刻になっているというのが、H24年度の市民の生活実態でした。  

  では、それに対して、松本市が行ってきた施策はどうか。
  まず、市が賦課する市民負担の現状について。
  国保税、介護保険料などの社会保険料負担で見ると 国保は、一昨年(H22年度)値上げされたまま、H24年度は、一般会計からの繰り入れもなく、市民負担は高いままです。
  お金のことが心配で、日々の暮らしに追われ、病院にかかれない、治療を中断せざるを得ない。こうした実態が実際のところです。
  これでは、命と健康が守れないだけでなく、国保会計も大変になる、悪循環です。
  介護保険では、値上げにあたって、H24年度、9段階を12段階にし、いわゆる低所得者対策は行われたもの、全体としての市民負担の増には変わりなく、ここでも保険料は払えても、制度の改悪も手伝って、サービスを切り縮めなければならない、施設の不足の点も結局解消されなかった実態にあります。  
  では、こうした事態の打開のための、松本市としての特別な対策は何があったのか。  
  子どもの医療費の中学生までの全面無料化決定、予防接種の半額助成の決定など、引き続き医療分野で評価点として挙げられますが、根本的には市民負担は、軽減どころかさらに負担が重くなっている事態は全く解決されていません。  
  市民の日々の暮らし、支える、「直接的に負担を軽減する施策」は、一昨年もいみじくも、同じ答弁が帰ってきたのですが、H24年もありませでした。  
  施策の前進面は、いくつか確認が出来るものの、総合的に見た場合、事態は改善するどころか、市政により、より悪化する内容だったことをまず、しっかりと直視する必要があります。  
  保健・福祉の制度を守るために、逆に市民の生活が圧迫されるようなことがあれば、それは、予算執行と政治姿勢の問題です。  
  国保も介護も社会保障の観点からの見直しが必要です。

  次に、現在の経済情勢の中で、地方自治体に求められるもう一つの施策は、地域経済の立て直し、活性化問題です。 
  「基本構想2020」の中での「経済の健康」に通じるものです。  
  地域経済のためには、何と言っても内需の発展、拡大、そして域内循環がカギを握ります。 
  その内需の拡大と言えば、所得を増やすこと、消費を伸ばすことが一番ですが、実際には逆だったことは先ほど述べた通りです。  
  長期に続くデフレ不況な中、地方自治体としては、何が求められるか。  
  アベノミクスの「成長戦略」ではありません。
  海外で企業が一番もうけやすくする。そのための「成長戦略」では、結局ところ今までの繰り返しです。
  雇用の確保のために、企業を誘致する、新しく起業意欲のある企業への支援策を充実する。これがいわば、これまでの施策だったわけですが、H24年度もこうした施策の踏襲でした。  
  しかし、はたして、これで地域の経済の活性化につながるでしょうか。  
  企業呼び込み型施策としての新工業団地、企業誘致施策は、私たちが懸念した通り、事態は決して計画通りに進んでいないのが実態です。  
  H24年度に確かに2社の進出があり、操業を開始しましたが、いずれも市内からの移転であり、H25年度には、続く2社の可能性があるとの報告でしたが、1社は、まだ進出予定ありとのことですが、もう一社は、難しくなったとのことです。  
  決算特別委員会では、この新工業団地の状況とそれと一体の「ヘルスバレー構想」に関する質疑は決算委員の誰一人として触れていませんでしたが、H25年度は、特別体制をとったこの企業立地事業。将来どれだけの成果が期待できるのか。実に懸念材料です。  
  外部から呼び込みまた、新しい産業に期待する、これを全く否定するものではありませんが、すでにそれはいわば時代遅れの施策です。  
  その一方で、これまでの既存の企業が倒産したり、廃業を余儀なくされる。こうした現実を放置しての地域経済の立て直しはありえません。
  思い切った、政策の転換が求められます。  
  その点では、住宅リフォーム助成制度は、すでに発表されているように、その経済効果は、16.6倍、 以前実施された、「地域振興松本プレミアム商品券事業」の経済波及効果が、8.45倍に比べると、2倍以上の効果がありました。
 松本地震との関係での修理も含めて、この事業は誰が見ても有効な地域経済活性化策です。  
  9月議会で、南山議員がこの事業を「商店版」に広げる提案しましたが、こうした施策こそ求められます。  
  経済・産業の健康を目指すうえで、「新規」には期待し支援するが、「既存」事業者は今まで通りでは、その「処方箋」に間違いがあるのではないでしょうか。
  地域内循環こそ重要な施策です。
  そうした点では、農林業への施策の充実にも求められます。

  最後に、松本城南・西外堀復元と内環状北線の拡幅工事について述べます。
  当初一人でも反対者がいればやらないと言ったこの一体工事は、事実上反対者がいても実行するということに変わってまいりました。まず、こうしたやり方。
  もう一つは、確かに松本城を中心としたまちづくりは市民の願いでもあるし、重要な施策です。しかし、今のこの市民生活の実態との関係で、今すぐ行わなければならない事業なのか、財政的には大丈夫なのか。
  これら2点については、これまでも(反対の理由として)申し上げてきたことです。

  以上、H24年度の決算の認定に当たり、賛成できない立場から発言を申し上げました。
  この際重ねて、命と健康、暮らし守るという原点に立ち返っての施策の展開、充実を求め意見といたします。  

                                                    以上