「道路特定財源の堅持」意見書に対する反対討論

 道路特定財源の堅持に関する意見書について意見を述べます。
  「道路特定財源」は、真に地域のために必要な制度となるか。 この観点から申し上げます。

  言うまでもなく、必要な道路は、その建設に反対するものではありません。
  今回の意見書(案)の前文にある通り、 「最も身近で根幹的な社会基盤である道路を適正に維持・管理し、必要な道路を着実に整備促進していくことは社会の要請である。」その通りだと思います。
  問題は、先ほども申し上げたとおり、この道路特定財源の制度が、果たしてこの意見書の主旨にあるような、結果をもたらすかどうかということだと思います。
 ( 暫定税率を含んだ道路特定財源という制度で、「本当に地域が望む真に必要な道路」の建設が進むのか。この点が、一番のキーワードになります。)    

 この2月12日の衆院予算委員会で、この道路特定財源の堅持とセットである59兆円の総額先にありきの「道路中期計画」が、発表されたその中身について、実は、まず9342kmだったものが、14000kmに「高規格幹線道路」整備計画の復活したということに加えて、その上さらに地域高規格道路という名の高速道路を6950km作るということが明らかになりました。   
  14000にこの6950kmを合わせると、21000kmに及ぶ高速道路計画ということになります。  
  14000kmは、この日本から南極大陸までの距離に当たります。  
  それがさらに、21000ということになれば、西周りでいけば、地球の裏側の大西洋の真ん中くらいまで、東周りで、少し南に進路をとった場合には、ブラジルの大西洋側まで、及ぶ距離です。
 しかもこれだけの高速道路の建設をこれから10年間で行うこれが今度の道路特定財源とセットで出されてきているのが、「道路中期計画」の中身です。

 今回のこの道路特定財源の10年間の延長は、この「道路中期計画」と一体のものであり、 この制度を認めることは、この10年間の道路計画にGOサインを出すことになる。 そのことに等しい中身となっている、そこに一番の本質があります。
  そしてそれは、これから申し上げるこの問題にかかわるこの間の経過からも明らかです。

 道路特定財源は、国道と都道府県道の舗装率がわずかに5%しかなかった半世紀前に、「整備が急務だ」という理由で「臨時措置法」としてスタートした制度です。
  いまや舗装率が97%を超えた現在は、そう点からすれば、道路特定財源を続ける理由がありません。
  治山治水、河川、空港、港湾、公園など、さまざまな公共事業があります。
  しかし、政府が定める公共事業の長期整備計画のうち、あらかじめ総額を決めている計画は、この「道路整備計画」以外にありません。
  かつて1990年代には、アメリカの圧力で630兆円もの税金を公共事業に費やす「公共投資基本計画」がありましたが(それが膨大な財政赤字を生み、国民から「ムダな大型公共事業の推進策」と)多くの批判を受けた中身でした。
  そのため、2002年、小泉内閣が閣議決定した「構造改革と経済財政の中期展望」でのなかでも、この「公共投資基本計画」は廃止され、これに基づいて03年の社会資本整備重点計画法で、国土交通省関連の「長期計画」が一本化され、「総額方式」は原則として廃止されました。
  2006年の経済財政諮問会議は、すでに国民の80%の世帯が車を持っているとして、「『受益者』『納税者』は国民全体だ」と議論したうえで、小泉首相の後の安倍前首相が「道路特定財源として自動的に道路ができていくという仕組みは、それ自体は変えていかなければならない」とまで言った。記憶に新しいところです。
  こうゆうことまで言って一般財源化を決定しています。ご承知の通りです。
  そうした経過があって、 20年前に定めた「第四次全国総合開発計画」(四全総)には、14000kmの高速道路計画が明記されていましたが、バブルに浮かれた大型事業の大盤振る舞いであり、必要性と採算性が大問題になって繰り返しますが小泉内閣では「白紙に戻す」と表明せざるを得なかったものです。
  2002年に閣議決定した「改革と展望」は、こうした計画の必要性そのものを見直し、計画が必要な場合も「事業量」目標をやめるべきだと政府も確認をしてきた中身です。
  「中期道路計画」では、高速道路などの「高規格幹線道路」を全国に14000km張り巡らす計画がまた盛り込まれました。しかし、このうち9342kmを超える路線については、小泉元首相が「白紙」と言明したものが、この間の国会では、「なぜ、これを復活したのか」という質問に対し、現福田首相は明確に答えることができなかったものです。

 以上の経過から、道路特定財源のここへ来て総額先にありきの計画を定めなければならないのか。  
  ここのところをしっかりと見ることが必要であると思います。
  そしてその上で、以下本日出されている意見書について、申し上げます。

  当広域連合と関連する問題として、「中部縦貫自動車道」のことが確かにあります。
  この中部縦貫自動車道の、建設の是非についてはいろいろな意見があることは承知しております。
  この是非論は別として、仮にこの「中部縦貫自動車道」が建設されたとして、いまだにどうゆう形になるだとか、ほとんどがトンネルではないかとか、有料になるのか無料だという話もありますが、この「中部縦貫自動車道」が本当の意味で、地域の皆さんが真に望む必要な道路となるのだろうか。この点の懸念は拭えません。  
  それから、一旦白紙に戻された中で、実現の可能性の中で、国道158号の整備・(安全・)渋滞対策は、本当に皆さんと一緒に広域連合関係者も含めて望んでいたことですが、この生活道路として、また観光道路としてさらに渋滞対策が本当に進むのだろうか、このことをしっかりと考えていくことが必要です。  
  今回の道路特定財源の暫定税を含めた継続は、 今申し上げたように、主要な部分が、21000kmの高速道路に使われる。
  そうなった場合に、実際に私たちが望む158号の整備に、この地域の道路にどれだけのお金が回ってくるのか。そのことが非常に心配されるわけです。  
  必要のない高速道路が、作られれば、その分が無駄なところに投資されて、その分が地方に回らなくなることをしっかりと直視する必要があります。  
  この財源を一般財源化し、道路にもそして地域が望む他の施策に使うことが出来るようにすることのほうが地方、地域のためになる。このように確信するものです。
  (また、中期道路計画を見直し、無駄なものをなくせば、暫定分はなくても、必要な道路建設整備は出来ると考えます。)    

 繰り返しますが、一度は止めたはずの無駄がまた復活し、バブル期に計画されたものが、10年間で行われる。
  そのための装置が、今度の特定財源の暫定税率を含めたその中身ですが、私はそうゆう観点から見たときに、 本日提出されている意見書の記の1と2に関連して申し上げます。

  「暫定税率を含めた現行の道路特定財源制度は」今や無駄な道路建設を進める自動装置となっており、この制度の存在、延長そのものが、「道路を安全な状態に維持し管理する費用にも影響を及ぼす」可能性が強い。その懸念がある。こうゆう立場から「暫定税率を含めた現行の道路特定財源制度を堅持する」ことには、賛成できない。この装置があることによってかえって地域の道路整備が遅れるそうゆうことを懸念するものです。

 以上申し上げて、今度の意見書については、明確に反対の態度を表明して意見といたします。

                          注:(  )の部分は、原稿にありながら、読み飛ばした部分です。

 

 

 尚、議案として提出された意見書の内容は、次の通りです。

道路特定財源の堅持に関する意見書

 日本の経済は、長期にわたり景気低迷を続けています。また、少子高齢化と人 口減少社会が到来するなど、日本の社会は今、大きな転換期にあります。
  さらに、多くの中山間地域をかかえる長野県においては、山間地集落の疲弊や 荒廃を初め、市街地域においても医療や福祉環境の変化への対応など、様々な分 野で多くの課題に直面しています。
  これらの諸課題を解決し、国民の生き生きとした暮らしの実現、国際的にも競争力があり多様性のある地域経済社会の形成、安全・安心の確保、美しく良好な 環境の保全・創造など、地方ののびのびとした自立と活性化のための施策は、道路に支えられています。
  従って、最も身近で根幹的な社会基盤である道路を適正に維持・管理し、必要 な道路を着実に整備促進していくことは社会の要請であります。
  よって、国においては、地方の実情を十分賢察され、下記事項について特段の配慮がなされるよう強く要望します。

 1 緊急かつ計画的に道路を整備するための財源としての使命を担い、ユーザー に負担を求め、着実に道路整備を進めてきたその制度趣旨に則り、暫定税率を 含めた現行の道路特定財源制度は堅持し、道路整備を着実に進めること。
 2 現行の道路特定財源制度の崩壊は、道路を安全な状態に維持し管理する費用にも影響を及ぼすことから、暫定税率を含めた現行の道路特定財源制度を堅持 し、地方の生活や経済活動に支障が出ないよう配慮すること。

  よって、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出します。