H22年度国保特別会計決算への意見
平成23年第4回臨時議会
日本共産党を代表して、議案第1号、2号、及び継続審査中の第12号について意見を申し上げます。
まず、H22年度決算についてです。
4日間の委員会の審査には直接参加できませんでしたが、その議論の中で明らかになったことを踏まえて意見を申し上げます。
最初にH22年度の市政運営についての評価点については、いくつも挙げることが出来ますが、時間の関係で今回はっこれを割愛致します。
国保会計についてです。
H21年度に続いて2年連続、この8年間に5回の引き上げ、高齢者にとっては、6年連続引き上げ、結果として、H22年度は、8億5728万円の黒字。次年度への繰越、返還金を差し引くと、実質の黒字は、約5億円 となったというのが、概括です。
その結果、長期不況、経済情勢の悪化の中、市民の国保税の負担はますます大きくなってしまった。このことが重要です。
一方、国保会計の加入世帯平均所得額は、年々下がっています。
1世帯あたりの世帯平均国保税額は、このように下がってしまうので、税の引き上げが繰り返し、何とかこの間、平均国保税額はほぼ同額を維持してきました。
しかし、そうすることによりその税額の世帯平均所得に占める「負担」割合は、当然のこと上がり続けてまいりました。
不況で所得が減る、また所得の少ない加入者が増えてくることと合わせて、まさに国保会計は、江戸時代の「凶作の年の年貢の引き上げ」という事態が 今日まで、繰り返されてきました。
一般会計からの繰入についてですが、H21年度、22年度、23年度の3年間を見通し、H21年度に値上げし、その時点で3年間、毎年2億5000万円づつ繰り入れを行うことで、3年間は値上げをしなくても大丈夫といわれていた国保会計、2年目がH22年度でした。
ところが、H21年度末を前に大幅な赤字が見込まれるということで、2年連続の値上げになったわけです。
その際、値上げ巾を抑えるということで、それまでの2億5000万円に、2億7000万円を加えて、22年度と23年度の2年間は、毎年5億2000万円の繰り入れが決まりました。
この繰入額そのものは、菅谷市長就任のH16年の値上げの際の5億0200万円に比べ、市制史上では最高の繰入額となりました。
しかし、この一般会計からの繰入についてみれば、既に20年以上も前から毎年欠かさずルール分を超えて繰り入れを行ってきた長野市と比べてみると、加入者一人当たりで見ると、長野市の場合は、11845円に比べると、松本市の22年度は、8281円 と低いものです。
政令市のデータで見ると、多いところと比べれば、(川崎市は、30480円 )松本市は、その1/4にしかなりません。
しかも、松本市は、H19、H20年の2年間は、繰り入れを中断してしまいました。
H16年の値上げのときに、いみじくも、「もっと早くから繰り入れをちゃんと行っておけば、こんなことはなかった」との関係者の発言があり、市政史上はじめて繰り入れが行われたことは記憶に新しいところですが、この繰り入れを継続して、今回の黒字となった22年度の5億円、
また、保険税引き上げで予定した増収分は、3億7000万ということなどなどを考えると、21年度の値上げはともかくとしても、少なくとも22年度の値上げはしなくてもすんだものです。
これがこの議案に対する反対の理由の一番大きな点です。
国保会計の制度は、その仕組みと基盤の脆弱性に一番の問題があります。
国が補助金をカットし続けてきている。この点は何度も指摘してきているので、詳細は割愛しますが、国がカットした補助金に反比例して、国保税の市民負担は、逆に大きくなってきています。
国の補助金が下がってくる、一方で、市民負担は上がってくる。この「X」のグラフが示されています。
2つ目に、加入構成員の所得が低いということです。
本来、応能、応益の制度で成り立っているこの国保会計は、景気が回復し、所得が上がれば、税率改定をすることなく、自然に増収になり、会計も安定化するはずです。
ところが、そうならない。 しかも、高齢者増に加え、非正規労働者など青年も加盟する、貧困と格差の拡大に伴って、ますます国保会計は大変な事態になっています。
リーマンショックに加え、東日本大震災、そして円高などの新たな経済悪化の要因が今年度に入って加わってまいりましたが、このまま不況が長期化すれば、国保は、いずれまた値上げをしなければならないという悪循環に既に陥っているといっても過言でありません。
そして、悪循環との関係で言えば、国保制度を、「相互扶助制度」と考える限り、値上げの繰り返しは避けられないということです。
収入、所得が少ない人だけの間で支えあう、「相互扶助制度」としている限り、この事態は必至です。
値上げ、値上げの連続で、年間所得の「14%」(H22年度)にもならんとするこの負担。
問題は、「これ以上の負担増に市民は耐えられるか」ということにつきます。
この間、明確な答弁をもらえていないこのテーマに尽きます。
お金の切れ目が、命や健康の切れ目になってはなりません。改めて、国保制度は、社会保障制度としての位置づけを明確にしての運営が必要ですし、そのことを求めます。
さて、私たちは、この22年度の6月の補正予算の際に、値上げは収納率の低下を招き、そのことがまた値上げにつながるという点での悪循環を招くことを指摘してきた経過があります。
しかし、今度の決算の中では、収納率が、3年ぶりに、前年度比プラスに転じました。
収納率が上がること事態を、決して否定するものではありません。
関係者、及び職員の皆さんの苦労と努力の結果であることは、今回審査の中で示された不能欠損の処理内容の変化からも見受けられる点です。
そうしたご苦労がこうした結果を生んでいることは明らかですが、 しかし、そうした納税を促す経過の中に、新たに資金の借り入れをして、要は背に腹は代えられず、借金をして、その一部を国保税の納入に当てたり、また差し押さえが行われることで、結果的に事業活動が展開が困難になってきている方、新たな苦労を強いられたり、今まで、国保税では行われてこなかった不動産の担保取りということも見落としてはなりません。
払えるものを払わない場合にはそうした方策は有効ですが、「払いたくても払えない。」この事態の中では、そうした手法の多用は、慎重でなければならないと思います。
市民生活の窮迫ぶりは、短期保険証の発行の数にもあらわれています。
国保制度という仕組みがあることで、その制度に縛られという、国保制度が逆に桎梏となるようでは本末転倒といわなければなりません。
業者の皆さんの中には、国保税、公共料金を含めて何とか市に対するお金を払うために、文字通り体を泣かせて働き続けている方が増えています。
病院に行くことで、仕事にさしさわりが出るので、軽い病気では病院に行かない、健康診断を受けない人方も増えています。
また、検査して、要検査になっても病気がみつかってしまうから再検査には行かない、実に切ない現実があります。
ある団体の健康診断の受診率は、その会員の3分の1以下に下がってしまいました。
そのために高い国保税は何とか払えても、受診を控える、結果として、手遅れになり重篤になったり、最悪の場合は命までも失うなどの結果を生んでいることを決して忘れてはなりません。
国保会計の「安定」は、守れても、市民の健康が守れないなどの「逆立ち」は決してあってはなりません。
また、国保税の値上げによる受診抑制で、重くなっての治療の医療費がかさんだり、「高額療養費」が増えるという結果が今回の22年度決算の中にも明らかになりましたが、糖尿病患者さんの「治療の中断」の最大の要因は、経済的困難というある病院関係者の報告も発表されています。
以上、いくつか申し上げました。
要は、理にかなわないことは、決して良い結果を生まないということに尽きます。
重ねて、こうした不況で市民が大変なときだからこそ、地方自治体としての本来の仕事、 「福祉の増進を図る」というその地方自治の本旨に即した、命を守る市政に徹することが重要です。
ある意味、この国保行政を今後どうするかは、地方自治体としての、そして松本市政のいわば今後の試金石でもあります。
また、会計を守るために、相互扶助と称して、負担を増やすやり方から、抜本的改革切り替えをしてこそ、初めて健康寿命延伸都市・松本の創造につながるものと確信します。
以上が国保会計に関する意見です。
|