2006年11月30日

松本市長  菅谷 昭  殿

2007年度 松本市政に対する政策・予算要求

  国の悪政から、市民を守る防波堤となり、
  いのちを大切にし、市民と行政の協働で、「住民が主人公」のまちづくりをめざして

 松本市への政策・予算要求を発表するにあたって)

  日頃より市民のくらし向上のため、様々な制約や困難の中、市政運営に献身されておられますことに、まず最初に心からの敬意を表します。
  市制100周年を目前にした市井はどうでしょうか。
  私たち、日本共産党が、ここ1ヶ月の間に行なった「市民なんでもアンケート」の結果は、「くらし向きは?」の問いに、「やや悪くなった」「悪くなった」の回答は、あわせると全体の76%におよびました。
  「変らない」という方も2割を占めていますが、実態は「ここ5年間ほど、悪くなって以来、変わらない。」という方が少なくありません。  
  さらに「その原因は?」の設問については、
1、 国保税・介護保険料の支出増
2、 年金の目減り
3、 税金の増額
4、 医療費の支出増  
  の4つが、群を抜いて上位に並びます。  
  5年間の「小泉構造改革」により、「格差と貧困」が拡大し、そうした政治の結果が、市民生活の状態悪化を招いていることの現われです。  
  定率減税の廃止、年金への課税により、松本市で高齢者を中心に新たに課税義務者が約1万人増え、増税額も、5億7100万円にも及ぶことが明らかになりました。  
  さらにその市民税の値上げによる波及で、国保税、介護保険料の負担が増えました。  
  「景気は回復傾向にある」という政府の見解とは大きくかけ離れ、税と社会保障料の負担が重くのしかかり、市民生活は日々の暮らしに汲々としているのが実態です。  
  同時に、介護保険、自立支援法、そして医療制度など社会保障分野でのあいつぐ制度改悪は、そうした実態に拍車をかけています。  
  とりわけ、ハンディを抱えながら、自立の道を模索しながら、毎日精一杯生き抜いてきた障害者にとっては、まさに自立支援法という法律によって、自立を阻害されるばかりか、人間としての尊厳まで失わされる事態です。
 人が自ら作った社会保障制度が、桎梏となる。
  まさにあってはならない事態が現実となっています。  

 そんな中、 「リストラされ、収入が減り、国保税も払えず、保険証を返還した。そうしたら市の職員の方の訪問を受け、『保険証は持っていてください。保険税はたまっていますが、収入が得られるようになってから、1ヶ月づつで結構です。』と保険証を届けてくれた。医師である市長が命を守る姿勢で医療に力を入れていることがわかりました。保険証は命の元です。」 という声がアンケートに寄せられました。
  3Kプランをはじめ、菅谷市政のこの間の取り組みが、市民生活を支える上で着実に前進している面として象徴的に確認できる事例ですが、国の悪政は、そうした松本市の独自の取り組みをも打ち消して余りあるものです。
 
  こうした政治は、市民いじめにとどまらず、「三位一体の改革」の名のもとに地方自治体への国庫補助負担金の縮小・廃止、地方交付税の削減など地方自治体へも及び、「税源移譲がある」とはいうものの、本市でも平成16年度・17年度の2年間を見ると2億円を超える減収など、市税収入の落ち込みに加えて、市財政を圧迫、地方自治体をも直撃しています。
  このような社会のゆがみは、社会的弱者や子どもたちにしわ寄せられ、「いじめ自殺問題」など、子どもをめぐる状況はますます深刻さを極めています。
  政府は、「規範強化」、「罰則重視」を強調するばかりで、こうしたいじめの温床には一切触れず、さらにいじめ問題の解決に逆行する教育基本法の改悪を、自公政権は、力で強引に進めようとしています。
  未来のためにも子どもと教育を守ることが必要です。
  地方自治法第1条2項は、  
  「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ 総合的に実施する役割を広く担うものとする。」  
  と地方自治体の役割を明確にしています。
  今こそ、地方自治体は、この立場で、できうる限り市民を守ること。一歩でも二歩でも、こうした国の悪政から市民を守る防波堤としての役割の発揮が求められます。
  市制100周年の年。「ありのままを松本市、来し方を振り返り、さらに100年先」をコンセプトに開かれる市制100周年記念事業は、今までの松本市政のこと、これからの松本市政、地方のあり方、地方自治体の役割についても市民ぐるみでともに考える機会にすることが必要です。

  来年度は、菅谷市長一期目の最後の年。
  「市民が主人公」、市民の願いが叶う市政のこれまでの前進・成果を確かなものにし、さらに市民ぐるみ、協働の取り組みでさらに発展させなければなりません。
  地方自治体の原点は、住民の暮らしを支える、福祉を支えることにありますすが、今は国の悪政から市民を守ることに重点を置いた取り組みが求められます。
  そして、市民一人ひとりの毎日の暮らしが無事に行われてこそ初めて、計画され、取り組みが 始まっている安心のまちづくり、協働のまちづくりになります。
  厳しい財政の下で求められる行財政改革においては、やはりその目的を、住民を支える施策を低下させず、安心して豊かに暮らせるまちづくり、住民一人ひとりが大切にされるまちづくりのためにどうするかにその基本を置かなければなりません。  
  職員をはじめ、公務に携わる公務労働者の意識改革もさらに必要です。
  安易な職員削減、民間委託の「小さな政府」論は、結局「大きな市民負担」への道です。  
  儲け拡大、市場の開放のための役割分担でなく、市民、団体、行政の各々の力の発揮、そうした役割の分担でなければなりません。
  行政改革は、人件費削減に目的があるのではなく、財政逼迫のもとで、いかにして、すべての職員が、お互いの知恵と力を発揮し、市民との協働で、市民の願いを実現するかに、重点がおかれなればなりません。
  以上の点は、今の時期絶対に握って離さない行政としての基本として申し上げ、市政発展に向けた来年度の予算編成に強い期待を表明します。  

 私たち、日本共産党と市議会議員団は、何よりも市民を守るをキーワードに、「市民が主人公」「市民の願いが叶う」市政の前進を図る立場で、全力を尽くすものです。

 

                       日本共産党中信地区委員会     
委員長 北村正弘  
日本共産党松本市議会議員団    
                       団長 池田国昭  
                           倉橋芳和  
                            南山国彦  
                           犬飼明美  
                             澤田佐久子 
                   事務局        
                              三村美智代 


― 
地方自治体の役割にふさわしいまちづくりのための8つの施策 ―

 1、 大増税・負担増から、市民を守る市政

 昨年度の負担増に引き続き、来年度は、定率減税の完全廃止によるさらに新たな負担増が市民を襲います。
  負担の重い国保税、介護保険料については、市民税の負担増での増収分5億7100万円を財源に、一般会計からの繰り入れで、負担軽減を図る。
  2号被保険者の介護保険料は、値上げしない。
  低所得者、弱者対策への減免対策の充実を図る。  

 2、 社会保障制度の改悪から、市民の健康・福祉を守るまちづくり

 社会保障制度の相次ぐ改悪に対して、サービスを後退させない取り組みを行う。  
  介護保険、障害者自立支援法などに対する、松本市独自の施策をさらに充実させる。  
  介護ベッドなど「介護とりあげ」対策を行う。   
  「安心して生き、老いる」ことができるように、さらなる施策の充実を求めます。  
  これ以上保険料を上げないことを求めます。  
  受益者負担を原則とした障害者「自立」支援法については、実態調査に基づき、介護保険同様独自補助を充実するとともに、国に向かって法の抜本的見直しを強く求める。  
  国民健康保険証はまさに「命綱」です。引き続きお金が払えないことを理由とした保険証の取り上げ、資格証明書・短期保険証の発行はやめ、安心して医者にかかれる環境をつくる。  
  生活保護申請書を窓口に置くこと。
  後期高齢者医療保険制度発足に当たっては、運営審議会制度を設けて、被保険者の声が反映されるようにする。

 3、 命を大切にし、子どもと教育を守り、子育てを支援する市政

 安心し,ゆとりを持って子どもを生み育てるための「子育て支援」策を引き続き進める。   
  いじめの松本市の独自の調査基準に沿って、いじめの事態を掌握するとともに、国の「競争」をあおる教育政策の根本的転換とともに、教育現場での実践や教育学の成果を踏まえた取り組みが必要です。  
  憲法に背反し、いじめ問題解決に逆行する教育基本法の改悪に反対する。  
  来年4月に計画されている、子どもの学力にとっても人間形成にとっても有害で、競争をあおる「全国学力テスト」は、行なわない。
  子どもの基礎的学力を保障し、人間形成を助ける学校づくりをすすめる。
  中学校までの「30人学級」の早期実現。
  義務教育における父母負担の軽減。
  貧困と社会的格差の広がりから子どもをまもる取り組みを強める。  
  就学援助申請書から、民生委員の意見を求める欄をなくし、学校長の判断ですすめられるようにする。
  乳幼児医療費など、福祉医療の所得制限なしの窓口無料化の早期実現と年齢引き上げを求めます。  
  未満児保育、障害児保育など松本市のよき保育行政の歴史と伝統を守り、独自の配置基準に見合った人員配置と施設整備をすすめる。
  保育園での正規職員の増員。
 「安心して働け、子どもの成長を支える」子育て支援策にふさわしい位置付けを明確にし、「公設公営」の放課後児童健全育成事業は今までの松本市での実績、経験を後退させる事なく、関係者との協働で、より質の高い発展したものに作り上げていく。  
  5、6年生もその対象とする。

 4、 市民の生命・財産を守るまちづくり

 「福祉力」は「防災力」の位置づけで、地域自主防災組織の確立・充実を図る。
  地域でのつながりを生かした防災体制を確立する。  
  消防団員、消防署員の自身の安全確保対策を図るとともに、引き続き消防団と団員の待遇改善をすすめる。
  人的消防力の強化など、広域連合に、消防体制の強化を申し入れる。  
  まちづくりそのものを、開発優先から、防災を重視した住民参加型ですすめる。  
  開発や土地利用の変更にあたっては、災害にどのような影響があるかを事前にチェックする 「防災アセス」を導入する。  
  まつもと市民芸術館を「拠点」とする防災体制を見直し、免震構造を持つ新たな防災センターを設置を具体化する。  
  現在の防災関連施設は、音楽練習室など市民の利用に供する検討を始める。  
  防災拠点としての出張所の位置づけを高め、学校など公的施設との連絡・通信網の整備、拡充をする。

 5、雇用と労働条件を守り、安心・安全な食糧確保、ものづくり、 生き生きまちづくり、地域づくりを支える市政

 農業を基幹的な生産部門にふさわしく、また、商業・工業の振興策は各々の独自施策を強める方向での体制の見直し・強化を図る。  
  家族農業を支え、食糧自給率を引き上げるための施策、農産物の価格保障、農家の所得保障対策の抜本的強化を国に働きかけるとともに、遊休農地に対する実効ある対策などの市独自の対策を強化する。  
  さらに、大規模農家のみならず、家族農業を支え、新規就農者育成支援と後継者支援施策を拡充する。  
  安心・安全な食糧確保の観点からも地産地消をすすめ、松本市の農業を守り、発展させる。  
  ものづくり技術の継承、産・官・学連携のものづくり・技術開発は地場産業との連携を図り、新製品の販路・流通までの支援を行う。  
  「中小企業振興条例」を制定し、中小零細企業、小売店の融資・人材・技術・市場の各分野にわたって直接支援できる体制を整備する。  
  豊かな観光資源を生かし、地域の特性を生かし、活性化につなげる。
  市内の雇用労働実態の実態調査を行い、「安定した雇用」と「人間らしく働ける労働条件」の確立を図る。  
  ニートとよばれる若者に対して、より人間らしく成長し働けるるよう、相談、教育、社会体験や職業体験、就労などの支援を「継続」して行なう。

  6、持続可能な循環型「環境都市松本」づくり

  ごみ「焼却中心主義」から、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進に努め、プラスチック類の再資源化など限られた資源の有効活用をさらにすすめる。
  「ごみ有料化」はしない。
  買い物袋持参運動を進める。
  「脱焼却・脱埋立て」の具体化をめざす「県廃棄物条例」の早期制定にむけ、合意の努力をし、市としても条例制定など市の独自施策の道を確立する。
  市街化調整区域内において「資材置き場」にいつのまにか違法建築物が建ったり、産廃ごみなどの不法投棄の場になるなど周辺住民の生活環境に深刻な影響を与えていることから、現状にあった「建築物」の判断基準および環境保全の観点での土地利用の見直しをする。
  住民合意を義務づける条例などを検討する。
  温室効果ガス削減など地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、「松本市地球温暖化防止条例」を制定する。  
  BDF(バイオディーゼル燃料)化のさらなる拡大や太陽光発電、バイオマス、雨水利用、小規模地域水力発電所など自然エネルギーの開発を促進し、ペレット燃料の生産やペレットストーブの公共施設への設置など、具体化をすすめる。  
  森林保全対策を行なう。

 7、 憲法を生かし、平和を守る市政

 日本を「戦争する国」にしないために、憲法9条の改定に反対する。  
  災害救助における住民避難計画などとは根本的に性質の異なる「国民保護計画」は制定しない。
  保護協議会での議論経過など徹底した情報公開を行なう事。
  過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する「靖国史観」を許さず、首相にたいし靖国神社参拝を行なわない事を求める。
  侵略戦争の歴史の真実に正面から向き合う平和行政を行なう。

 8、「市民が主人公」「納得と合意」で市民と行政が協働してつくるまちづくり  

 まつもと市民芸術館の運営に関しては、審議会の提言で一致して示された点についてはその具体化を図る。  
  施設利用料の見直しについては、既存の利用団体、市民手づくりの団体等に関しては、負担増にならないことを原則として、進める。  
  運営方針の見直しについては、市の財政状況と市民生活の実態を考慮しながら、時として、自主事業の縮小、芸術監督制度の見直しなどを何よりも全市民のくらしを守る観点をすえることを原則に進める。
  市民が、芸術文化を享受でき、明日へ生きる希望がわいてくるような、文化芸術行政が求められます。  
  旧4村の合併地域については、新市建設計画に沿い、全市的視野からのまちづくりを進めるとともに、その地域が取り残されることがないように、またこれまでよりサービス低下がおきない配慮を持って進める。  
  予算編成過程の公開・意見集約は、市民と行政との協働の画期的な成果として今後も実施し、パブリックコメント等の活用で、市民みんなでまちづくりを進める観点からの予算編成を行う。
  引き続き市の財政状況をはじめとした行政情報の公開を積極的に進め、「参画」「納得」「協働」の市政運営で、「市民が主人公」のまちづくりを行う。  
  四賀直結道路意向確認調査の経験を生かし、公共事業に限定せず、合併問題などでも、新たな「松本型」住民意向確認の方法を探究する。  
  保健・医療・福祉、社会教育、文化・芸術、環境保全などの分野でのNPO活動を支援し、協働をすすめる。

以上