2005年11月30日

松本市長 菅谷 昭 殿

2006年度 松本市政に対する政策・予算要求

市民と行政の協働で、「住民が主人公」の松本のまちづくりめざして

松本市への政策・予算要求を発表するにあたって

  昨年の選挙公約時の「あんしん」「脱・モノ優先社会」「つながり」「あたらしい松本」の4つの政策視点から、新しい松本市のまちづくりのビジョンとして、求められる具体的な姿を「10のまちづくり」に体系立てて、さらにそれに加えて、今年10月、医療者として特色を明確にしていく立場から、特に力を入れる施策として「3K施策」が発表されました。
  この「10のまちづくり」の10本を「縦糸」に、「3つのK」の3本を「横糸」に、「協働の新しいまちづくり」が庁内外で議論され、現在、職員の知恵を絞っての来年度の予算編成が行われ ています。

  国政では、憲法を改定し、アメリカの起す戦争に公然と加担できる国、消費税の大増税と祉会保障・医療は自己責任とばかりに負担増と大幅なサービスの切り下げが当たり前の国に、国民の暮らしや権利よりも大企業の利益を優先する国にという財界のめざす日本づくりへ、暴走が始まっています。
  また、地方政治をめぐっては、財源の一部を地方に移すのとひきかえに、国の責任でおこなうべき福祉・教育のための国庫補助負担金を縮小・廃止し、地方交付税を削減する「三位一体の改革」 の名での地方財政への攻撃。
  2005年3月に政府・総務省が発表した、「地方行革推進のための指針」による職員の削減、業務の民間委託と民営化の押し付け。
  など、政府・財界のすすめる「構造改革」路線の下で、福祉と暮らしのための施策の一斉切り捨 てと、住民福祉の機関という地方自治体の存在意義そのものを否定する攻撃が加えられています。

 そんな中で来年度は、菅谷市政3年目、今期の折り返し点、力を発揮する本格的な年を迎えます。
  このわずか2年間の間にも公約に基づく数々の実績を重ね、さらに来年度に向けては、「10のまちづくり」、「3つのK」を掲げ、基本構想・基本計画の策定の過程他、いくつかの研究会・審議会などでの市民との協働にとどまらず、増え続けてきた松本市の借金を確実に減らす編成方針を確立 し、松本市政史上初めて予算編成過程を市民に公表し、意見を求めるなど意欲的に市民の福祉向上のため、「市民が主人公」の新しい松本市建設の新たな段階に踏み出している点に改めて敬意を表し ます。

  さらに新しい「松本方式」の民意の反映、市民の意向確認の方法として、全国的にも注目されている四賀直結道路意向確認のプロセスは、これからの市民と行政の本格的な協働のあり方を築き上げる意味で、合併後の新松本市民にとっても貴重な実践となるもので、大いに期待できるものです。

  さて、以上のような、着実な前進のあゆみが確認できる中、地方政治の出発点でもある市井に 目を転ずれば、10月1日からの介護保険での自己負担の導入は、全国にさきがけて行われた松本市独自の低所得者対策をもってしても、ショートスティ利用の低下、さらには施設を退去しなければならない事態は深刻です。
  国保税が払えずに、短期保険証で、受診せざるを得ない市民が増え、さらに保険証を持てずに、「病人にはなれても患者になれない」市民が少なくない実態です。
  その上、定率減税の廃止や今後の消費税の増税などに加えて、社会保障は、医療、年金、介護、 障害者支援で、連続的な改悪が強行され、来年度には、ふたたび医療の大改悪がねらわれていま す。
  社会保障とは、ほんらい人間らしい暮らしの支えになるべきものです。
 それが、その制度があるがゆえに、逆に人間の尊厳を踏みにじり、人権が貶められている状況です。

  地方自治法第1条2項は、
  「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ 総合的に実施する役割を広く担うものとする。」
  と地方自治体の役割を明確にしています。
 このように地方自治体の原点は、住民の暮らしを支える、福祉を支えることにあります。  
  そして、市民一人ひとりの毎日の暮らしが無事に行われてこそ初めて、計画され、取り組みが 始まっている安心のまちづくり、協働のまちづくりになります。

  昨年松本市は、国保会計の悪化の中で、やむをえない税の引き上げに際して、一般会計からの補填で負担軽減策が取られました。
  国保税、介護保険料、公共料金の負担を少しでも低く抑えること、公共料金が安いという事は、それこそが住民が安心して暮らせるまちづくりの第一歩です。

  「財政が苦しくても公共料金の値上げをしない。」(矢祭町々長)は、今日的な意味での再確認すべき地方自治体の原点であります。

  厳しい財政の下で求められる行財政改革においては、やはりその目的を、住民を支える施策を低下させず、安心して豊かに暮らせるまちづくり、住民一人ひとりが大切にされるまちづくりのためにどうするかにその基本を置かなければなりません。
  職員をはじめ、公務に携わる公務労働者の意識改革も必要です。
  安易な職員削減、民間委託の「小さな政府」論は、結局「大きな市民負担」への道です。
  儲け拡大、市場の開放のための役割分担でなく、市民、団体、行政の各々の力の発揮、そうした役割の分担でなければなりません。

  憲法九条を守る事をはじめ、憲法を暮らしに生かす、今この点は特に重要な視点です。
  地震・災害対策にとどまらず、市民の財産を守ることも重要な課題としての位置づけが必要です。
  来年度は、合併後の本格的な地域づくりがスタートする年でもあります。

  こういう年だからこそ、国の悪政から市民の暮らしを守る防波堤としての地方自治、スクラムと しての市民と行政の協働の取り組みが求められます。
  この点は、今の時期絶対に握って離さない行政としての基本中の基本として重ねて申し上げ、市政発展へのまい進と来年度の予算編成に強い期待を表明します。

  私たち、日本共産党と市議会議員団も、以下掲げる7つの柱を中心に、引き続き菅谷市政を支える立場で、全力を尽くすものです。

                              日本共産党中信地区委員会
                                         委員長 北村正弘

                              日本共産党松本市議会議員団
                                         団長 池田国昭
                                             倉橋芳和
                                              南山国彦
                                             犬飼明美                                                                   澤田佐久子

 

まちづくりの7つの柱

  1、 憲法をまちづくりにすえる

 日本を「戦争する国」にしないために、憲法9条の改定に反対する。
 過去の侵略戦争と植民地支配を正当化する動きを許さず、首相の靖国神社参拝の中止を求め る。
 基本的人権の保障を「公益及び公の秩序に反しない」範囲に限定し、人権の制約根拠から「福 祉」の観点が切り落とされる、憲法改定に反対する。
  常に「住民が主人公」を貫き、「住民の福祉の増進を図ること」(地方自治法)を基本とした地 方自治を確立する。

  2、 一人ひとりの市民のくらし・安心を支えるまちづくり

 今年10月からの介護保険法改定による自己負担増につづき、来年4月には保険料の値上げが懸念されます。
 利用料負担に対する低所得者対策が行なわれましたが、今回の対策でも、その負担 が収入を上まわっている現状です。
  「安心して生き、老いる」ことができるように、さらなる施策の充実を求めます。
  来年4月からの第3期介護保険事業計画のスタートにあたって、利用料負担増に加えて保険料の値上げは、ますますサービス抑制につながります。
 これ以上保険料を上げないことを求めます。
  障害者「自立」支援法は、「サービスを多く必要とする重度障害者ほど重い負担を強いるもので、障害者の社会参加と自立の支援に逆行」し、容認できません。
  市として、まず今回の介護保険制度改定で実施した「市独自の低所得者対策」を障害者にも同様に適用することを求めます。
  また、国に対しては、法の抜本的見直しを求めます。
 
市民にとって国民健康保険証はまさに「命綱」です。
 お金が払えないことを理由とした保険証の取り上げ、資格証明書・短期保険証の発行はやめ、安心して医者にかかれる環境をつくる。

  3、 未来の松本市を支えるまちづくり  

 お金の心配なく、「安心し,ゆとりを持って子どもを生み育てるための支援」が不可欠です。  
  乳幼児医療費など、福祉医療の所得制限なしの窓口無料化の早期実現を求めます。
  未満児保育、障害児保育など松本市のよき保育行政の歴史と伝統を守り、独自の配置基準に見合った人員配置と施設整備をすすめる。
  教育基本法の改悪に反対し、子どもの基礎的学力を保障し、人間形成を助ける学校づくりをすすめる。
  義務教育における父母負担の軽減。
  本市での学童保育の歴史と実績を尊重し、放課後安心して預けられる保育施設の位置づけを明確にし、放課後児童健全育成事業と全児童対策事業の役割を区別してすすめる。
  若い世代が自立し、より人間らしく成長できるため「安定した雇用」と「人間らしく働ける 労働条件」を確立する。
  ニートとよばれる若者に対して、相談、教育、社会体験や職業体験、就労などの支援を「継続」して行なう。

   4、 市民の生命・財産を守るまちづくり

 「福祉力」は「防災力」の位置づけで、地域自主防災組織の確立・充実など、地域でのつながりを生かした防災体制を確立する。
  消防団と団員の待遇改善をすすめる。
  まちづくりそのものを、開発優先から、防災を重視した住民参加型ですすめる。
  開発や土地利用の変更にあたっては、災害にどのような影響があるかを事前にチェックする 「防災アセス」を導入する。
  まつもと市民芸術館を「拠点」とする防災体制を見直し、免震構造を持つ新たな防災センターを設置する。
  防災拠点としての出張所の位置づけを高め、学校など公的施設との連絡・通信網の整備、拡充をする。

   5、 安心・安全な食料確保、ものづくり、生き生きまちづくりを支える

 農業を基幹的な生産部門にふさわしく、また、商業・工業の振興策は各々の独自施策を強める方向での体制の見直し・強化を図る。
  自給率を引き上げるための施策、遊休農地に対する実効ある対策、農産物の価格保障、農家の所得保障対策の抜本的強化を国に働きかけるとともに、市独自の対策を強化する。  
  新規就農者育成支援と後継者支援施策を拡充する。
  安心・安全な食料確保の観点からも地産地消をすすめ、松本市の農業を守り、発展させる。
  商店街の歴史、文化継承事業に光をあて、観光施策とも合わせて活き活きまちづくりをすすめる。
  ものづくり技術の継承、産・官・学連携のものづくり・技術開発は地場産業との連携を図り、新製品の販路・流通までの支援を行う。
  「中小企業振興条例」を制定し、中小零細企業、小売店の融資・人材・技術・市場の各分野にわたって直接支援できる体制を整備する。

  6、 持続可能な循環型「環境都市松本」づくり

 ごみ「焼却中心主義」からの脱却を図り、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進、プラスチック類の再資源化など限られた資源の有効活用をさらにすすめる。
  「ごみ有料化」はしない。
  「脱焼却・脱埋立て」の具体化をめざす「県廃棄物条例」の早期制定にむけ、合意の努力をし、市としても条例制定などで市の独自施策の道を確立する。
  温室効果ガス削減など地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、「松本市地球温暖化防止条例」を制定する。  
  BDF(バイオディーゼル燃料)化のさらなる拡大や太陽光発電、バイオマス(ペレットストー ブ)、雨水利用、小規模地域水力発電所など自然エネルギーの開発を促進し、公共施設への設置をはじめ、具体化をすすめる。

  7、 市民と行政が協働してつくるまち  

 予算編成過程の公開・意見集約は、市民と行政との協働の画期的な第一歩です。
  引き続き市の財政状況をはじめとした行政情報の公開を積極的に進め、「参画」「納得」「協働」の市政運営で、「市民が主人公」のまちづくりを行う。
  四賀直結道路意向確認調査の経験を生かし、「松本型」住民意向確認の方法を探究する。
  保健・医療・福祉、社会教育、文化・芸術、環境保全などの分野でのNPO活動を支援し、協働をすすめる。
  常設型の住民投票条例を制定する。